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SONY HVR-V1Jを実際に使ってみた。

12月8日に、ソニー(株)から業務用小型HDVカメラHVR-V1J(以下V1J)が発売になった。早速、テストしてみたので、その第一印象をレポートしてみたい。


ちなみに小生は、普段、テレビCM、映画館用の劇場CM、テレビ番組などを制作している。HDVをメインにした低価格な作品作りを得意としており、年間で60タイトル以上のCM、毎週のレギュラー番組を地方局に提供している。

小型だが、高級感があるボディー

一年前に発売になったZ1Jに比べて、かなりの小型化が実現されたのが、今回のV1Jである。確かに、一回り小さくなっている。パナソニックのDVX100Aと比べても小振りだ。重さはあまり変わらないが、ロケの荷物が小さくなるのはありがたい。

ただ、業務用カメラの場合、ある程度の大きさや威厳がないと現場で恥ずかしい。そういう意味ではどうか? 若干小さいものの、ボディーは質感がよく、さらにマイクはガンタイプを外付けする仕様なので、なんとなくプロっぽくていい。

小生の現場では、カメラには必ずマットボックスを装着するのだが、V1JはDVX100A用のクロジール製マットボックスがとりあえず付く。ただし、V1Jのフィルターネジの経が62mmと小さいために、ステップアップリングなどを使う必要があった。本体を小さくしたいのは分かるが、フィルター経などはこれまで事実上の主流となっている72mmにしてほしかった。

機能は満足、感度と画角は…

さて、実際にロケに持っていった場合についてレポートしよう。まず使い勝手といった機能だが、Z1Jの良いところを踏襲しつつ、さらに使いやすく仕上がっているといえる。最初に気付くのは、コネクター類の蓋がしっかりして、撮影現場でのトラブルが未然に防げるだろう。

V1Jには内蔵マイクがなくなり、すべて外付けマイクでロケを行うことになった。ただ、ガンマイクは標準付属となっているので問題はない。もちろん、別途にステレオマイクを使わない限りステレオ録音はできない。ただし、マイクがレンズ上に出っ張らないのでマットボックスの装着などの邪魔にならないのは評価できる。

マイク端子は3端子キャノンが2ch装備、ファンタム電源のオンオフや端子の収録チャンネルの指定がスイッチ式になった。目で見て音声設定が分かるので、現場でありがたかった。

一方、ズームもフォーカスも電子式なので、慣れが必要だ。機械式ズームに慣れているので、ちょっと戸惑った。

さて、撮影していて一番気になったのは、まず画角だ。PD-150などと同じく、望遠に寄った安っぽいズームなのだ。HDVモード時で35mm判カメラに換算して37.4mmしかなく、SDモードではさらに望遠になる。ワイコン必須ということだ。純正ワイコンは専用のフードが付属。レンズバリアが付いたフードで、使いやすい。なお、ワイコンを付けた場合は、かなり甘い画像になってしまう。一方、ズームは20倍なので望遠は強いということがいえる。

もう1つ気になるのは、感度がかなり低いことだ。個人宅で取材をしたのだが、500Wタングステンをトレペ1枚でデ・フューズし、天井にバウンス。これを2灯使った(被写体まで2m弱:曇りで窓際)。この状態で3dBまでアップしないとダメだった。感覚的に言えば1絞り少ない。

その3dBの感度アップだが、画質的には0dB時とそれほど変わらないので問題はない。最近の感度の高いカメラに慣れてしまっていたので、ちょっとビックリしてしまった。総合的にいえば、室内撮影は苦手なカメラだといえる。一方、感度が上がるにつれて画質は荒れるのだが、直感的には高感度フイルムの粒子っぽいので個人的には嫌な感じはしないが、テレビ局などではどう判断されるかが不安だ。

一方、ヒストグラムが搭載されて輝度分布が分かるようになった。デジタルカメラで使われているもので、波形モニターとは概念が違うのだが、露出を判断するにはヒストグラムは使いやすい。白飛びや黒の0%以下の潜りも分かる。

さて、画質調整だが、V1JにはZ1Jと同じようなピクチャープロファイルがあり、画質の設定を保存し、簡単に切り替えて使うことができる。プロファイルの切り替えは専用ボタンを押し、メニューを呼び出す。このあたりはZ1Jと同じだ。

だがピクチャープロファイルの調整項目は簡素だ。彩度、ホワイトバランスの微調整、シャープネスなどはあるが、カメラマンが自分のオリジナルで追い込みたくなるような黒レベルやRGBレベルは変更できない。ニーレベルについては、オート、Hi、Mid、Loと切り替えられるようになったのは評価できる。

気になったのは手ぶれ補正。妙な動きをするので、これは注意をしたい。パンをしているときに、電柱のような縦の線が画面を横切ると、それを停止させるように補正が働き、一瞬、画面が静止してしまう。もちろん、カメラはパンし続けているので、突然コマ落ちしたように画面がガクンと動く。これは全く使えない映像だし、これまでのカメラには見られない現象。もちろん、手ぶれ補正をオフにしてもいいのだが、運動会などで手持ち撮影する場合には困るだろう。

画質はZ1Jと同等?

気になる画質だが、まだ使い始めた初日なので印象だけをお伝えしたい。ちなみに、こういったカメラは使い込まないと本当の良さが引き出せないので、そのあたりをご勘案していただきながら、読んでいただきたい。

ご存じのように撮像素子がCMOSである。CCDとは違った発色をするはずだが、さすがにソニーの味付けらしく、これまでのソニーのカメラと変わらない印象だ。ソニーっぽい画質だといえる。

今のところ、シャープネスや彩度などを追い込んでいないので、なんともいえないが、小型カメラっぽい描写という気がする。一般用カメラのような派手な描写ではなく、どちらかというと地味な味付けになっているといえる。ただ、シネマトーンガンマやマトリクス、ブラックプレスなどの大雑把な画質調整で、なんとなく、それらしい画質になる。まぁ、テレビ放送では敬遠される機能だともいえるので、もう少しプロ好みの設定があればいいと思った。

1/4型撮像素子なので被写体深度が他の業務用カメラより深いはずだが、HDということでピントはシビアで、液晶モニターでは本当にピントが合っているのか分かりにくい。拡大表示でピント確認が必須だ。

総論「まぁ、いいか」

さて、弊社ではZ1J、DVX100A、GY-HD100を使っているのだが、V1Jを追加購入するかどうか検討を始めた。正直なところ、機能ではZ1Jで十分だし、映画っぽい画質を求めるなら、個人的にはDVX100Aが好きだ。実は、画質的にはビクターのGY-HD100がかなりいい。2/3型のENGっぽい。

そういったライバルを蹴落とす魅力があるのだろうか?
 V1Jの魅力の1つはスミアがないこと。これはかなり助かる。ただ、スミアが気になるのは夜なので、V1Jの場合には、低照度の現場で感度が足りないのがデメリットになってしまう。一勝一敗といった感じだ。

一方、スローモーションはかなり気に入っている。明るければ十分な効果がある。HC3のスローよりもかなりきれいだ。これはCMなどで使いたくなる。

さらにプログレッシブモードもいい。劇場用CMは最終的にフイルムにするので、プログレッシブはありがたい。ただ、HDVで24P(60iベース)編集ができるかどうかが別問題として存在するので、このあたりはじっくり検討していかなければならない。

そして、結論としては、うん、とりあえず、買うか? え? 資金? ない!

このコーナーは、今業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にシステムファイブからお願いをして実機レポートをしていただくコーナーです。

「ここは予想以上に素晴らしかった!」「ここは期待した程ではなかった・・・」等々、メーカーカタログには記載されない、実際に使ってみてどう感じたのか、リアルな声が聞けるかもしれません。

同じ機材でも、レポーターさんの使用目的等によって着目点やその感じ方が違うことも非常に有益な情報になることでしょう。

これからも順次掲載予定ですのでどうぞご期待ください。

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