遂に登場したレンズ交換式XDCAM EXカムコーダー

ここ数年で業務用小型ハンディカメラの飛躍的な性能向上には目を見張る物がある。パナソニックP2システムやSONYのHDVフォーマット。

そして今回紹介する完全テープレスであるSONY XDCAM EXフォーマット。一昔前の放送用カメラを確実に凌駕していると言っても過言ではない。勿論それらは記録メディア(フォーマット)だけの話ではなくハード面つまりはカメラ本体の性能も驚くほど性能が上がっている。

しかしSONYというメーカーは何時も我々ユーザーの心境を揺さぶる方法を沢山用意している。それは良い悪い両方の面を持っているのだが良い方向に裏切られる場合は、ユーザーサイドでこんな感じの製品が在ると良いな、こういうデザインで使い勝手の良さそうな物が欲しい、等と思っているといきなりアナウンス無く発表してしまうことがあり、今回のレビューである”PMW-EX3“はもちろんその良い方で裏切られた典型かも知れない。

PMW-EX3オーバーヴュー PMW-EX1からの進化とは?

まずは筐体から見てみよう。まず目に付くのはSONYらしくないL字型のボディである。CanonXLシリーズと類似するデザインと言っても過言ではないはず。しかもこの筐体に関してはXLシリーズのどれもが使い勝手が良いとは思えない。特にENGで使うならカメラの前後バランスというのはカメラマンの疲労軽減も含めて最も大事な部分であるはず。しかしこのL字型であると少なくともショルダー担ぎで使った場合に重心が全部前に来ているためにその重量を全て腕で支えるために無駄な労力を使うことになる。

ただ三脚に備え付けて使うのなら前記した部分は全くデメリットには成らない。PMW-EX1の時は完全なハンディカメラと言うことも踏まえて、ボディよりレンズが大きい位なのでボディバランス自体が良くなかったが、PMW-EX3はさすがにボディ後部が大きくなった為に一般的な業務用カメラと同じく大体撮像板の位置位に重心が来るようになっており、このために三脚に載せて振り回したときにバランス的な違和感は勿論、VFから見える映像的なバランスも落ち着いて見える。

次にPMW-EX1からPMW-EX3に進化?して一番大きく変わったところであるレンズ廻りを見てみよう。レンズ自体は多分PMW-EX1と共通パーツで作られていると思われるが、このレンズの一番の特徴は他の業務機と同じくレンズが交換出来ると言うことだ。勿論PMW-EX3本体のマウントは特殊形状なのだがそれを一般的な1/2inchレンズマウントを付けられるようなコンバーターが標準で付いてくる。この”標準おまけ”はとても助かる。通常この手のコンバーターだけで約10万円程度はしてしまうからだ。これによって1/2inchレンズは殆どの放送・業務用途のレンズがダイレクトに付いてしまうので、制作系で使う場合にレンズの自由度が上がりつまり表現の自由度が上がると言っても良いだろう。

しかし何もレンズを交換しなければ成らないことはない。標準で付いているFUJINON製の光学14倍レンズも悪くない。このレンズは勿論、AFこそ付いているがズームは通常のメカニカル動作が出来る物で指の繊細な動きに確実に付いてくる。これが電子制御の物ではどうにもこうにも微妙な動きには瞬時について行けない。フォーカスはAFが付いているところから考えると、良くありがちなバックフォーカス系の駆動の様に感じるが、レンズを前後に切り替えるだけでAFとMFが切り替わるところから想像するとありがちのシステムではなさそうだがMFで操作感はかなりリアルに克つ細かく追従してくれているのだが、まだ新品でアタリ?が付いていないのか若干動きが渋かった。と言っても慣れの部分でフォローできる位だとは感じられたのだが少々気になるところでもある。

アイリスリングについても特に言うことはなく大きめの銅鏡とのマッチングも良くズームと同じく微妙な指の動きに追従してくれる。動き自体は若干の粘りけが足らず、軽めの印象が在るが十分に及第点に当たるだろう。

またこのレンズは使いやすさだけではなく一番重視したいのはこのレンズのワイド端の広さである。ズーム倍率こそ光学式14倍と言う今時のカメラでは低いとも言える倍率なのだが広角の画角は35mm換算で31.4mmと言う広さを実現している。スチールレンズを知っている人なら狭く感じるだろうが、この手のカメラにしてはこの広さは今までのどの標準レンズよりも広い。しかもオプションの0.8倍ワイコンを使用すれば25.1mm(35mm換算)と言うショートズーム並の画角を得ることが出来る。

音声に関しては特記するような新機能は付いていないが、SONYらしくちゃんとまともに使えるように左右独立型の2chで各々+48ファンタム給電とウィンドカット、ラインとマイクの音声レベルの切り替えが出来通常の業務機を使い慣れている人なら全く問題がない。強いて弱点を上げるなら、業務用途と銘打っているカメラに対してガンマイクが標準で付属しないのはことだ。標準的なECM-673等を確実に後付けするのだからこれ位は、標準セットとして貰いたい。因みに12V出力は無いので一般的な業務用ワイヤレス(A/B帯)はそのままでは使用することが出来ないために、UWP-C1等のバッテリー内蔵型のワイヤレスを使うしかない。

PMW-EX1との決定的な違いとPMW-EX3の特徴

スコープ型LCDカバー

外観で目立つのはスコープ型のLCDカバーだ。最近のカムコーダーはVFと言うよりLCDそのものをVF代わりとして使用しているが、やはりそれらはピンの掴みとかエッジの乗りとかが見難く、元々モノクロCRTのVFに慣れているカメラマンならどうにもこうにも違和感があるのだが、PMW-EX3のこのスタイルは単純な構造ながらもの凄く見やすい。何というか通常のVFの用に視野が広く見えるとでもいえば良いのだろうか?この部分だけでもOP扱いで販売出来れば他のカムコーダーでも有効に使えるだろう。


VBRがダイアル可変

XDCAMシリーズで特化出来る機能の内の一つにVBR(HS)があるが、PMW-EX1だとそのフレームレートを変更するのにメニューから階層を追って設定しなければならなかったのだが、PMW-EX3になってこの部分の使いやすさが格段と上がり本体横にダイアルを装備しこれを廻す事により?60(24P及び30P)までの調整が出来るようになった。しかし、PMW-EX3で装備出来ているなら開発時期を考えればPMW-EX1にも搭載できたはずだと思うのだが。


CCUが使用可能

PMW-EX3ではHDCAMでも使用されているコンパクトなCCU(RM-B150/RM-B750)をダイレクトに繋げて使用する事が出来る。CCU自体は例えばENGでは余り使用する事が無いだろうがスタジオや制作等で使用する際にはとても重宝な物。これによってBVRの時のようにメニュー階層で設定するのではなく外部CCUダイアルによってWBからBB等々直感的に触る事が出来る。操作方法自体も従来の物と何ら代わりはないのでCCUを使い慣れている人なら何ら問題なく運用できるはずだ。


総評

PMW-EX3を一言で言うならばSONYの新たなソリューションの提唱と考えて良いだろう。同時にこの先の展開にも期待が出来ると感じられる。

沢山の長所がある中でどうしても使い難い短所を上げるとなるとやはりENGで使用する形態には残念ながら向いているとは言い難い。多人数でチームを組めるようなロケならまだ良いが少人数でこなさなければ成らない現場ではワイヤレスをダイレクト運用出来ないのは厳しい。しかしこのデメリットもその内にサードパーティーでこれらの事例をフォローするような物も出てくれば話は変わってくる。

大きさ的にも価格的にも上位機種より劣っているようにも思われるが使い込めばこのカメラの凄さが解るはず。特に色のトーンを作り出すには元々がフラットのRGBである為にγやニーポイントも踏まえてしっかりと勉強するに値するカメラだと感じている。しかし変な知識でこれらを弄ってもその項目毎にリセットが出来る所を見ると、メーカーとしてもまだまだこのカメラの使いどころに迷っているのかも知れない。つまりはユーザーの数だけ画が作れるという事だろう。

筆者プロフィール

岡 英史(おか ひでふみ)VIDEONETWORK主宰

東宝ミュージカルや芝居等の舞台撮影を主とし、最近では初心に戻り積極的にENGをこなす。また面白いと思う撮影にはなんでも参加、NLE専用にチューニングした自作PCで編集までを自身で行い、小物なら専用パーツまでワンオフで制作してしまう異色ビデオカメラマン。過去にスキーの強化選手に選考され、その後バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた異色の経歴を持つ。

このコーナーは、今業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にPRONEWSからお願いをして実機レポートをしていただくコーナーです。

「ここは予想以上に素晴らしかった!」「ここは期待した程ではなかった・・・」等々、メーカーカタログには記載されない、実際に使ってみてどう感じたのか、リアルな声が聞けるかもしれません。

同じ機材でも、レポーターさんの使用目的等によって着目点やその感じ方が違うことも非常に有益な情報になることでしょう。

これからも順次掲載予定ですのでどうぞご期待ください。

WRITER PROFILE

UserReport

UserReport

業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。