CES2013では、ソニーを始めメジャーなテレビメーカーが挙って家庭用の大型4K HDTVをデビューさせたが、それらテレビディスプレイを普及させるにあたり、コンテンツクリエーションと配給側の進行を促す必要がある。

先週、米カリフォルニアで開催された、ハリウッドポスト・アライアンスが主催する「2013 HPA Tech Retreat」では、ソニーをはじめ様々な放送機器メーカーやポストプロダクションやVFX、コンテンツ製作事業社が集まり、4Kについても、カメラワークフローからライブプロダクション、配信までトピックを広げて技術討論が繰り広げられた。その中でソニーピクチャーズテレビジョンは、同社が携わるドラマやコメディ番組の現場では4K対応のカメラで収録を始めていることを述べている。

同社が製作している番組シリーズで既に4Kで収録しているのは、CBSドラマ「Made in Jersey(放送は2エピソード目で打ち切られた)」やFXドラマ「Justified」で、後者はRED Epicでも収録している。CBSは法廷ドラマのMade in Jerseyを失敗作として放送を打ち切ってしまったが、4Kという超高解像度でアーカイブが残せる面では意義があったという。

SDからHDへの移行のときと同じく、先行して次世代フォーマットでアーカイブしておくほうが、リマスタリングよりも費用を抑えられるからである。NewsCheckMediaによると、CBSでは2000年当時にHDで1エピソードを収録するのに190万円程度だったが、今、SDをHDに1エピソードをリマスタリングするのには、最大で10倍の費用が発生するという。

「Justified」はブルックリンにあるSteiner StudiosにてF65で収録され、4K(Raw Liteコーデック)をテクニカラーにあるFrameLogic デイリーシステムに取込み、そのあとテクニカラーのネットワークでハリウッドにある別施設に転送し、AvidコンポーザーとDaVinci Resolveで通常のHDポストプロダクションの作業が施される。4Kデータはマスターとしてアーカイブされている。

ソニーピクチャーズ傘下のポストプロダクションColorworksスタジオでは最近、4Kテレビのポストプロダクション部門を設立しており、番組エピソードの制作ワークフローは4KもHDも並行して、同じ番組製作スケジュールでこなせているという。

NBC放送のコメディ番組「Save Me」、ShowTime放送の「Masters of Sex」や、NBCが放送予定のマイケル・J・フォックスが出演する、新しいファミリーコメディ番組のパイロットはF65で収録され、Colorworksにて4Kポストプロダクションを行っている。後者の番組タイトルは発表されていないが、フォックスの名前を世に知らしめた30年前のファミリーコメディ番組の復活と言われ、米国では話題になっている。パーキンソン病を持つ3人の子供の父親と家族、キャリアを囲む、いわゆるフォックスの実生活に基づいたストーリーで、NBCでは22エピソード分の発注を完了しており今秋にプレミア放送される予定。

4Kでのポストプロダクションの全体の費用については試行段階である。4Kベースでの編集費用はHDと同等レベルではあるが、4Kデータとして専用にLTOテープドライブをストレージとして確保するため、データストレージ部分の費用負担はクライアント側にも影響される。

ソニーピクチャーズでは、4Kライブラリのラインアップを拡げることも進めており、現在は「Breaking Bad」のリマスタリングを行っている最中だ。しかし、4Kへのリマスタリングのコストは、作業が重複することで単純に倍の計算となることもあり、リマスタリングする作品を慎重に選ばなければならないという。

(山下香欧)