NBCユニバーサルスポーツグループの部門として米国各地域のスポーツ放送を担当しているコムキャスト・スポーツネット(CSN)の放送施設では、共通な設備とワークフローが備わってきている。CSNネットワークは8か所の運用拠点を持っており、最近、スタジオ設備を新しく揃えたCSNベイエリア地域を米Abekas社からのユーザー事例から紹介する。Abekasでは中継車やライブプロダクションで使われるプロダクションサーバーを展開しており、CSNネットワークではスタンダードサーバーとして導入されている。
CSNベイエリアでは、MLBサンフランシスコ・ジャイアンツ、NBAゴールデンステート・ウォリアーズ試合中継をカバーし、ニュージャージー州にあるNBCユニバーサル技術センターヘッドセンターを介して米国のケーブル加入者へ試合中継を届けている。本施設には、ジャーナリストやメディアタレントおよび報道運用スタッフが揃う報道フロアに加え、2室のプロダクションスタジオがあり、付随したコントロールルームと機材の集中管理を行っている。
スポーツ中継では、試合スタジアムから6チャンネル分のカメラフィードが光ネットワークで送られてくる。このビデオ信号はAvid iNEWSシステムで受け、各フィードの一覧付けと、報道プロダクション向けに検索ができるようメタデータを生成する。この作業には若干時間がかかるため、Abekasの8チャンネル仕様のMiraインスタントリプレイモデル・サーバを2台のコントロールパネルを使って2名のオペレーターでオペレーション分担し、リアルタイムでハイライト用のプレイリストを直接コントロールルームへ転送している。
この2名によるオペレーション分業でハイライト、プレイリストを作れば、急に起こりうるゲーム展開も見逃さずに、すぐにスタジアムの大型スクリーンやスタジオ放送でリプレイすることができる。特にスタジオAでは、3か所のロケーションの中継を担当しているため、特にシーズン中に起こる同時間帯での中継放送では重要なポイントだという。
スタジオAコントロールルームでは、4チャンネル仕様のMiraプロダクションモデル・サーバが設置され、VDCP経由でソニー社製MVSスイッチャーへキーとフィルを転送している。スイッチャーには、ビデオクリップサーバTriaからも事前に用意したグラフィックス素材などを出力している。Miraサーバからのプログラム出力もスイッチャーへ送り、AUXバスからはオンセットのタッチスクリーン式のディスプレイへビデオを送出する。このワークフローにより、インスタントリプレイをスタジオ生放送やフィールド分析の1つとして組み込むことができる。
スタジオAオンセットでは、アンカーデスクの前や背後に設置されたオンセットディスプレイへの映像をMiraプロダクションモデル・サーバから送出している。Miraサーバは、マルチチャンネルを束ねてHD以上の解像度の映像信号を出力できる機能を持っており、自動でビデオの各セグメントを再生チャンネルに読み込み、同期して出力できる。スタジオAでは、高価なディスプレイウォール用のイメージプロセッサを使わずにMiraサーバで5760×1080解像度のグラフィックスを大型ディスプレイに再現している。
Abekasは、この4K対応でもあるMiraサーバをはじめ、3チャンネルクリップサーバTriaや、中継放送用プロファニティ遅延システムAirCleanerを、2016年4月16日から21日(米国時間)の期間中に米国ラスベガスで開催されるNAB2016に出展する(サウスホール/SL5713)。ブースでは各アプリケーションやオペレーションに沿ったシステム構成でハンズオン体験ができるようになっている。
(山下香欧)