Blackmagic Designの発表によると、ライブパフォーマンスの全8話のSFドラマ「Orbital Redux」のストリーミングに、多数のBlackmagic Designのテクノロジーを使用したという。カメラ、スイッチャー、ルーターが含まれ、各エピソードはHyperDeck Studioに収録された。

「Orbital Redux」は、Butcher Bird Studiosの脚本家兼監督のスティーブン・カルコウト(Steven Calcote)氏が発案した作品。全8話の物語は、ライブで演技および放送が行われ、極めて貴重な資源であるヘリウム3を月から地球に輸送する役割を担っている2名の操縦士の姿を描いている。

カルコウト氏とButcher Birdのパートナーは、通常のSF番組とは異なる作品を目指していた。この物語に、世のSF番組にはない要素を加えるには何をしたら良いか、と自身に問いかけた時に、その答えはライブでの演技だという結論に至ったという。カルコウト氏と共同プロデューサーのグリフィン・デイビス(Griffin Davis)氏は、このような番組を制作する上で直面する技術的なチャレンジを解決するために、Blackmagic Designに意見を求めた。

デイビス氏:Blackmagicの機器は、制作において最も重要な役割を果たしました。同社の機器がなければ、本作は作れませんでした。

複数のBlackmagic URSA Mini、URSA Mini Pro、Micro Studio Camera、ATEMスイッチャーを使用しました。スイッチングを行うコントロール室に、このように多数のテクノロジーが接続されている状況では、全ての機器が問題なく相互に通信できていることを確実にする必要があります。過去1年にわたって、毎週生放送しているButcher Bird PresentsでBlackmagic製品を使用してきたので、Blackmagic Design製品のみで「Orbital Redux」を制作することに迷いはありませんでした。

同作の制作には、合計10台のURSA Mini Pro、URSA Mini 4.6K、Micro Studio Cameraが使用され、これら全てがISO収録のためにHyperDeckに接続された。その後、ATEM 2 M/E Production Studio 4Kでライブスイッチングが行われ、全カメラのコントロールにはATEM 1 M/E Advanced Panelが使用された。

さらに、Blackmagic ATEM Television Studio Pro 4Kが、セットの俳優用の内部モニターフィードと、キャプチャー用のライブカメラのスイッチングに使用された。デイビス氏は続ける。

デイビス氏:コントロール室は、内部ビデオと外部ビデオに分けて管理しました。ここで言う「内部」とは、宇宙船内のビデオのことで、アダム・フェア(Adam Fair)が担当し、「外部」とは視聴者に向けて放映されるビデオことで、私が担当しました。アダムは、数百のグラフィックスをロードした2台のHyperDeck Studio Miniも担当しました。これにより、セット上のモニターで表示するオーバーレイをカスタマイズできました。

撮影監督のスティーブン・モレノ(Steven Moreno)氏は、カメラの配置が最も難しかったと語る。セットは、異なる角度から撮影できるように工夫を凝らして設計された。セットのパネル、モニター、壁は静かに回転するように組み立てられたため、カメラマンがセットにカメラを突き出すようにして特定のアングルから撮影を行い、別のカメラに切り替わる前に静かに視界から抜け出すという手法が取られた。モレノ氏は語る。

モレノ氏:カメラの配置は、組み立て始めたばかりの宇宙船ツィオルコフスキーを使用して、各エピソードのリハーサルをしている時点から何度も話し合いを重ねて決めました。舞台上を動き回るにつれ、どこから撮影を行うべきか、またカメラ用のドアや窓がどこに必要かが分かってきました。その情報を元に、パネルを隠す方法や、セットに全く見えないように開閉できる方法を編み出すという課題が、宇宙船の設営担当や美術部に託されました。

モレノ氏は、同作の撮影にはURSA Mini Proが最適だったと感じたと語る。

モレノ氏:4Kでの撮影が可能なだけでなく、ATEMスイッチャーとも非常にうまく統合でき、軽量で、ハンドヘルドでの撮影に適した設計であり、オプションの優れた電子ビューファインダー、素晴らしいフォーカスアシストツール、複数のSDI出力が搭載されているため、ATEMスイッチャーと、カメラアシスタントがフォーカスをチェックするためのモニターに信号を同時に送信できます。

また、同氏はMicro Studio Cameraのサイズと柔軟性も気に入ったと話す。「非常に小型で、どこでも設置でき、ATEMから設定をコントロールできます。宇宙船内の様々な場所に2〜3台マウントしました。場所は、各エピソードの動きに合わせて変えました。様々な問題を解決してくれ、カメラマンが入れない場所に設置できます。

ライブプロダクションであったことから、スタッフは常に動けるように構えている必要があったが、信頼できるテクノロジーを用いていることでリスクは軽減されたと語る。モレノ氏は続ける。「エピソード104の幕開け部分が特に忘れられない瞬間ですね。DMXディマーに誤って何かがぶつかってしまい、小型セットの主光線のDMXアドレスが変わってしまったんです。生放送中に。照明が点灯していないことに気づいた瞬間、ビデオエンジニアがATEMの露出を上げ、俳優のショットのレベルを主光線とほぼ同じになるようにしたんです。これには本当に救われました。大惨事を免れました。

このような課題に多数見舞われてもカルコウト氏とスタッフは、その意欲を削がれることなく、また既成概念の枠を超えるための情熱がかき消されることもなかった。

カルコウト氏:最終話のエピソード108を11月15日に視聴者の方々と共有するのを非常に楽しみにしています。これは、無重力のスタントをライブで行なう最初の番組だからです。実際、主役の俳優たちが宇宙船外の宇宙空間を心もとなく浮遊する姿をいかにリアルに作成できるかにより、この最終話のすべてが左右されるんです。

毎週リスクの高い撮影を行なっていたにも関わらず、カルコウト氏は確かなことが一つあると語る。

カルコウト氏:ライブでスイッチングおよび撮影を行う、このような作品で最も難しい点は、全く異なるシステムをシームレスに統合することです。これを行う上で信頼できる唯一の方法は、カメラ、スイッチャー、ビデオ変換に100%、Blackmagic Designの製品を使うことでした。これは、本作を成功に導くために最も重要な技術的な決定でした。

「Orbital Redux」は、ProjectAlpha.comで視聴可能。