Blackmagic Designの発表によると、現在Netflixで配信されている長編ドキュメンタリー「Kiss the Ground(原題)」のコンフォームおよびグレーディングにDaVinci Resolve Studioが使用されているという。
ウディ・ハレルソンがナレーションを務める「Kiss the Ground」は、“再生農業”と呼ばれる新しい取り組みに光を当てている。再生農業は、気候のバランスを調整し、膨大な水の供給を補充し、世界中に食料を供給できる可能性を持っている。ジョシュ・ティッケル氏とレベッカ・ティッケル氏は、環境に関するトピックに精通しており、これまでに環境に関する14本の作品を作成し、気候変動の活動にも長年携わってきた。
ジョシュ氏:20年ほどこの仕事をしていますが、正直なところ地球の気候の議論で壁にぶち当たっているように感じていました。この問題に関する多くのデータが存在することは明白でしたが、問題を解決するために実行可能なデータは非常に限られていました。
彼らの共通の友人が、次は土壌に関する作品を作るように2人を説得したという。
土がどれくらいの炭素を蓄えられるかというデータを見た際に心を決め、この映画を作成する7年間の旅を始めました。
この作品を作成する上での一番の課題は、数年に渡って数多くのインタビューや世界中の映像を撮影すること、そして様々なサードパーティのフッテージやアニメーション、VFXを統合することであった。
非常にシネマライクな作品になるよう尽力しました。予算が限られていたため、厳しかったですね。ポスプロとカラーグレーディングが勝負になることは分かっていました。すべてのフッテージで一貫性を保つことができたのは、DaVinci Resolve Studioのおかげですね。
長年に渡って多くのバージョンの映像を撮影してきたため、制作チームは編集パッケージで既存のカラーツールを使用して、現在のルックを維持したという。作品の最終的な編集過程では、DaVinci Resolve Studioで大規模なリコンファームが行われた。
多くの意味において、一時的なカラーは、“それなりの”ドキュメンタリーには十分ですが、“すばらしい”ドキュメンタリーには不十分です。 私たちは7年かけて同作のルックをゆっくりと調整してきたので、オリジナルのマスターフッテージに戻ることは厳しかったですね。突然、すべてをゼロから始める必要がありました。しかし、DaVinci Resolve Studioのおかげで作品のルックを詳細にコントロールできました。
一般的に、ストーリー性のあるプロジェクトは特定の時間枠に収まるが「Kiss the Ground」は何年も続いた。ジョシュ氏とレベッカ氏は、長い付き合いのあるDigital Neural Axis(DNA)所属のカラーワークフロースペシャリスト、ダリウス・フィッシャー氏をプロジェクトに迎え、この複雑な作業に協力してもらうことにした。
フィッシャー氏:長年に渡って、多くの異なるバージョンを作りましたが、その時点で、最終的なラフカットに近づけたいと思っていました。これまでに多くの小規模なオンラインセッションを開催し、ショットをDaVinci Resolve Studioに取り込んでカラーを調整していたので、最終的な編集のフィニッシングとグレーディングを始めた時には、すでに良い感じになっていました。
フィッシャー氏のチームは制作過程を通してクリップをDaVinci Resolve Studioに読み込んで速度変更やフレームレート調整を行ったが、最終的な編集において真の締め切りに直面することになった。そしてNetflix用の納品要件を満たす必要もあった。同チームはカラリストであるフィル・ベックナー氏にコンフォームを委ね、FotoKemで同作のフィニッシングが行われた。最終的なルックの目標は、偽りに感じるような方法でイメージを増補することなく、常にリアルさを追求することであった。
ベックナー氏:同作のすべてのショットで最善を引き出すことが目標でしたが、同時に素材の自然な雰囲気と表現をそのまま残すようにしました。例えば、作品の中で、ある農場の方が自分の農場と近所の農場を比較している場面では、視聴者がリアルな現実を知るために、草の色や土の色を正確に表現することが非常に大事です。これらの場面で“ルック”を大幅に変えてしまうと、作品の究極のメッセージが損なわれてしまうことになりかねません。
DaVinci Resolveでコンフォームを行って編集を完了したが、パワフルな編集ツールにより、最終的なカラーグレーディングの段階においてもクリップを即座に変更できたことで非常に助けられたとフィッシャー氏は言う。
フィッシャー氏:実を言うと、映像を完全に固定していなかったんです。そのため、ライセンスの問題などでフッテージのソースを置き換える際に、DaVinci Resolve Studioでかなりの量の編集を行いました。
クリップが次々と変更し、最終的なアニメーションおよびVFXショットも届き続けていたため、作品の完成はそれとの競争であった。フィッシャー氏とベックナー氏は、慌ただしい作業の中、最後に適切なルックを得るためにDaVinci Resolveのパワフルなツールが非常に役立つことを実感した。フィッシャー氏は、エディットページのSuper Scaleツールが役立ったと語る。このツールは低解像度の様々なクリップに幅広く使用された。
Super Scaleツールには本当に助けられましたね。アップスケール、シャープニング、ノイズ除去で優れた成果を得られました。
ベックナー氏はカラースペース変換OFXプラグイン、そしてグレイン調整ツールを使用した。両氏は、Netflix用にフルUltra HDで納品する必要があったため、複数のフレームレートおよびファイルフォーマットを扱えるDaVinci Resolveが非常に役立った。ジョシュ氏とレベッカ氏にとっての目標は、作品を通してイメージの一貫性を保つことであった。これはNetflixの仕様による推奨であり、2人にとってのこだわりでもあった。
Netflixは、何千種類ものスクリーンに一貫したルックを提供できています。これは素晴らしいことです。この意味において、Netflixはデジタル界における映像のルックの基準を設定したと言えるでしょう。DaVinci Resolve Studioが最も真価を発揮するのは、Netflix用に映像がIMFで取り込まれて、世界に配信された時のルックに限りなく近いイメージを確認できることだと思います。
フィッシャー氏と制作チームは、編集とカラーグレーディングの作業でどちらも平等にDaVinci Resolve Studioにアクセス可能なことを評価している。このおかげで.drpファイルを送信するだけで、同時に作業することが可能となった。
フィッシャー氏:もちろんフィルとFotoKemのチームは同作のルックのレベルをより高めてくれました。今Netflixで見てみると、私たちが目指したルックと全く同じです。小規模なスタジオにとって、このようなドキュメンタリーを4Kで大手のスタジオに納品することはとても難しいことでしたが、なんとかやり遂げました。DaVinci Resolve Studioがなければ、到底無理だったと思います。