Blackmagic Designによると、日本で唯一の国立映画専門機関である国立映画アーカイブで古いフィルム作品のデジタル化にCintel Scannerを活用しているという。現在、同機関で保存する貴重なフィルムからCintel Scannerを使ってスキャンした一部の作品を専用ウェブサイトで公開している。

独立行政法人国立美術館 国立映画アーカイブは、映画文化の振興を図る拠点として、映画および映画関連資料の収集、保存、復元とこれらに関する学術的な調査研究に携わっている。また館内での映画上映や、展示室や図書室での資料の公開も行っている。

同機関は、映画作品の上映や映画関連資料の保存、展示がメインの本館(東京、京橋)と神奈川県相模原市にあるフィルムの収蔵や検査がメインの分館に分かれており、Cintel Scannerが設置された相模原分館では現在、約8万5000本のフィルムが収蔵されている。同機関の主任研究員である三浦和己氏は、次のように述べている。

三浦氏:この数はフィルムの検査が終わっているもので、検査待ちのフィルムも多く、また1本のフィルムは複数の巻で構成されているため巻数としてはさらに膨大な量になります。

フィルムアーカイブとしては、保存媒体はフィルムが一番適していると考えており、デジタルスキャンは活用を主目的に行っています。デジタルスキャンは外注と内製を並行して実施し、内製ではこのCintel Scannerを使用して、主に配信向けにプリントフィルムからスキャンしています。

同機関では、デジタル技術に関するスタッフ育成と、フィルム作品の配信により増えてきたスキャンの需要に対応するため、Cintel Scannerの導入に至った。現在、月に10本程度をCintel Scannerを使ってスキャンしているという。

三浦氏:今まではスキャナーを導入するとなると、高速のネットワークやストレージ等、システム全体に投資が必要でした。その点Cintel Scannerは本体価格もリーズナブルで、接続もケーブル一本で、まるでPCの外付け機器のような感覚で使えます。

また導入に関しては、保守費についても懸念がありました。一般的には、スキャナー導入後も毎年保守費がかかるため将来に渡る継続的なコストへのプレッシャーがありましたが、Cintel Scannerはソフトウェア等のアップデートも自分たちで対応可能で、不具合があった場合に、修理費等が発生するのみという点でも導入を後押ししてくれました。

現在、同機関ではデジタル化した所蔵フィルムを配信するWEBサイトを運営しており、日本の初期アニメーションを集めた「日本アニメーション映画クラシックス」、明治期に撮影された日本映画を配信する「映像でみる明治の日本」、そして1923年の関東大震災関連の映像を公開する「関東大震災映像デジタルアーカイブ」の3つがある。

関東大震災映像デジタルアーカイブに関しては、地震発生から100年にあたる2023年9月1日に向けて、所蔵する関東大震災関連の全ての映画を公開するべく配信作品を増強している。スキャン後は国立映画アーカイブの京橋本館でDaVinci Resolve StudioおよびDaVinci Resolve Micro Panelを使用して編集やグレーディングなどの処理を行い、出来上がった作品はサイトに逐次公開している。

三浦氏:フィルムとその技術を継承するため、フィルムアーカイブはフィルム産業と共に歩みを進める必要があります。Cintel Scannerによって、フィルムスキャンがより身近になることで日本でも、もっとフィルムを使う人たちが増えて、産業も盛り上がっていって欲しいですね。