ソニーは、XDCAMカムコーダー「PXW-Z200」、NXCAMカムコーダー「HXR-NX800」を2024年9月13日に発売する。希望小売価格は以下の通り。
- PXW-Z200:税込64万9,000円
- HXR-NX800:税込50万6,000円
ソニーのハンディカムコーダーは、2018年の「PXW-Z280」「PXW-Z190」発売以来となる6年ぶりの新製品だ。その間、「使い慣れたNX5Rを新しく買い替えたい」「ソニーの最新技術を搭載したハンディカムで撮影をしたい」という声が多数聞かれていた。新製品はそんな声を反映した、ソニーの最新技術の仕様を実現してきている。
価格はZ190以上、Z280未満となるが、既存のかつてラインナップしていた特定機種の後継モデルではない。画質やオートフォーカスにソニーの最新技術をすべて詰め込んだ、まったく新しい最新モデルとしている。
2モデルの共通スペックのスペックから紹介しよう。
有効約1400万画素、1インチCMOSセンサー、レンズは20倍ズームレンズ、24mm-480mm F2.8〜F4.5を搭載する。オートフォーカスはBIONZ XRやAIプロセッシングユニットによる被写体認識AFを搭載し、最新のαファミリーのオートフォーカス性能を実現する。
シームレスに明るさの調整が可能な内蔵NDフィルターを搭載し、リニア可変(1/4ND-1/128ND)に対応する。4K120P収録のハイフレームレートに対応。プロトコルはRTMP、RTMPS、SRTのダイレクトストリーミングに対応し、カメラから直接ライブ配信ができる。
新製品2機種はほぼ共通の外観と仕様を展開しつつ、Z200を上位モデルとして位置づけている。Z200は、SDI出力端子とタイムコード端子搭載、MXFファイルへの対応を特徴とする。Z200の59.94iの収録フォーマットを含むMXFファイルの対応は、2025年6月以降を予定している。
ソニーは新製品と同時に、NXCAMブランドの再定義を発表した。ソニーの業務用カメラは、コンテンツの利用目的やクオリティに合わせて「XDCAM」や「NXCAM」などのラインナップに分かれている。その中でもこれまでのNXCAMは、MPEG-4 AVC/H.264の圧縮技術を採用したAVCHDフォーマットをベースに業務用の機能・操作性を組み合わせたラインナップを特徴としていた。「NXCAMブランド=AVCHDフォーマットが使える」という認識が一般的だった。
今回の発表を機会にNXCAMブランドの定義をリニューアルし、AVCHDフォーマットは非対応となる。NXCAMは、コンシューマーフォーマットを採用した業務用ハンディカムコーダーのラインナップへと定義を変更するとしている。
実機から見たPXW-Z200の特徴
Z200とNX800の外観はぱっと見まったく一緒。違いは、Z200はSDI端子を搭載する。外見の違いはこれぐらいだ。
Z200は本体のみで約1960gは、NX5Jの本体のみで約2.2kgと数値上はあまり変わらない。しかし、NX5Jはレンズ側にやや比重があり、ハンドル中央を持つと前かがみになる傾向があった。Z200はバッテリーをつけた状態で、重量バランス的に最適に持つことが可能。近い重量でもZ200は軽い印象だ。
収納時の小型化も特徴としている。NX5Jは液晶画面をハンドル先端に搭載していたが、Z200は側面に変更。収納時のスリム化を実現している。NX5Jはファインダーを上げることは可能だが、下げることはできなかった。Z200はファインダーを下に折り曲げて、収納時の小型化が可能だ。
液晶モニターのLCDフードは、折りたたみ対応式を標準で付属する。取り外しもしやすく、使わない場合は液晶モニター背面に収納も可能だ。
マイクを使わない場合は、マイクホルダーを外すことが可能だ。過去モデルにはマイクホルダーのぐらつきに悩まされることがあったが、そんな問題を解消している。ネジはなくしにくい仕様になっている。外すことで「縦」「横」「高さ」すべて小型化することも可能。コンパクトに持ち運べるのも特徴だ。
レンズは2連リングを採用。業務用ビデオカメラは三連リングを支持する意見が多数で、ソニーにも3連リングモデルを多数ラインナップしていた。Z200は2連のリングで、発売時のタイミングでは「フォーカス」「ズーム」がリングに割り当てられている。アイリスは、本体左側面のIRISダイヤルでコントロール可能。
発売時のリングはフォーカスとズームが割り当てられているが、今後のアップデートでリングのアサインを変更できる予定だ。例えば、フォーカスはオートにまかせて、ズーム、アイリスを、リングに割り当てることも可能になる予定だ。
さらにFX6同様、バリアブルの可変NDフィルターを内蔵する。オートNDをオンに設定すれば、極端に明るいところから暗いところにシーンが変わってもスムーズにロケを進めることが可能になる。
手ブレ補正も強力だ。手ぶれ補正のスタンダードは光学の手ぶれ補正のみで、画角自体の変更はない。手ぶれ補正をアクティブすると、少しクロップされるがしっかり手ブレ補正が効く。
手ブレ補正は、逆補正に働く動きもかなり軽減されている。今まで手ブレ補正を効かせると、「パンした際の動きに違和感を覚える」と言われることがあったが、ズーム時のパンをしたときの動は滑らかになるように改善されている。
カードスロットは、SDXCメモリーカードとCFexpress Type Aメモリーカード対応のマルチスロットを採用。AスロットとBスロットに録画ボタンをアサインすることができる。例えばハンドル録画ボタンはAスロット、グリップの録画ボタンはBスロットのように設定することも可能だ。
オーディオはキャノンコネクターを2つ搭載。さらに3.5mmジャックや内蔵マイクを搭載する。4CH収録が可能で、液晶画面でどのソースを選ぶのかアサインが可能。本体のパネルを使った設定よりも、かなり簡単にできるようになっている。
AUTOとMANUALの切り替えスイッチAUTOに設定することで、フルオートでの撮影が可能。カメラの操作に慣れていないディレクターやAD、一般企業のスタッフが操作する場合に最適な機能で、録画ボタンを押すだけで撮影が可能になる。
電源投入後の起動の速度も高速化されている。電源を入れてから、フォーカスを合わせながら約2秒後に立ち上げが可能。イベント収録や報道現場で、即RECを回したいときは、フォーカス自体をカメラが合わせてくれながら起動できる。これまではロゴが入ったり起動するまで少し時間がかかったりしていた点を改善してきた。
オートフォーカスは、基本的にすぐに顔の瞳に合う。顔に合うと同時時に、人間の胴体、頭部の位置をより高精度に認識する。例えば後ろ向きや横から座る人を撮ってもそのまま姿勢で人物の頭部を認識し続ける。人間であることをAIで認識しており、記録を開始すれば画角に集中することが可能だ。
顔認識の中から、マルチセレクターでフォーカスの選択が可能。タッチで選ぶこともできる。また、少しおまけ的な機能になるが、カメラが被写体認識してクロップするオートフレーミング機能はユニークだ。ハンディカムコーダはイベントの一番後ろに置いて全体を記録する使い方が多いが、4K全体の画の中で人物にフォーカスを合わせながらHDでクロップをして切り出してくれる。他社のHDMIスイッチャーとつなげて、1ソースとして素材として使うといったことも可能だ。
本記事と同時に、猿田守一氏によるレポート「満を持してソニー「PXW-Z200」が新登場!驚きのハンドヘルドカメラをレビュー」を公開中だ。こちらもぜひご覧いただきたい。