アドビは、クリエイティビティカンファレンス「Adobe MAX」にて、作業効率を高める革新的な新しいAI機能からパフォーマンスとスピードの重要な強化を実現した「Lightroom」新機能を発表した。
ここで紹介する最新の機能と機能強化は本日から利用可能。Adobe Lightroomモバイル版は、スマートフォンのアプリストア(Apple App Store、Google Play Store、Samsung Galaxy Store)から無料で入手できる。Adobe Lightroom Web版には lightroom.adobe.com からアクセスでき、ダウンロードは不要。Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、および、Adobe Photoshopは、Adobe Creative Cloudデスクトップアプリからダウンロード可能。
AIで作業時間を短縮するパワフルな新機能
今年のAdobe MAXでは、クイックアクションと生成削除の強化が発表された。どちらの機能も、時間のかかる編集ステップを省略し、よりクリエイティブな編集プロセスに集中できるようになる。
■クイックアクションでどこからでも精密な編集が可能に
早期アクセス版として提供:Adobe Lightroomモバイル版(iPhone & Android)、Adobe Lightroom Web版
Adobe Lightroomモバイル版およびWeb版のクイックアクションはまず、写真の被写体の形状に基づいてマスクを自動的に作成し、精密な編集をスピードアップしてくれる。 そして次に、コンテキストに応じた編集を提案し、関連ツールを表示するのでワークフローを迅速に開始できる。これは外出先での編集や、メインのコンピュータから離れた場所で正確な編集を行う必要がある場合に最適としている。
例えば人物写真を素早く編集したい場合、クイックアクションは被写体、背景、歯、目、肌などのレタッチ対象を検出し、選択した各要素の個別のマスクを自動的に作成してくれる。それらのマスク領域にそのまま画像調整を適用することも、マスクパネルで形状をさらに微調整することも可能。また、画像に最適化がワンタップで完了するプリセットの提案もしてくれる。
クイックアクションは、Adobe MAXでの発表に合わせてモバイル版およびWeb版アプリの早期アクセス版機能として提供を開始し、その後Lightroomエコシステム全体にわたって順次正式リリースを行う予定。
■生成AI削除の選択機能の強化
対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Lightroomモバイル版(iOS/Android)、Adobe Lightroom Web版、Adobe Camera Raw
2024年5月に「生成AI削除」を早期アクセス版としてリリースして以来、不要なものを除去して画像に仕上げられるようになった。
生成AI削除は、今回のAdobe MAXリリースによってAdobe Lightroomエコシステム全体にわたって正式リリースされる。また、オブジェクトの選択機能も強化され、より使いやすくなった。「オブジェクトの検出」オプションをオンにすると、削除したい邪魔なオブジェクトを囲むだけで選択され、オブジェクトを正確になぞる必要がなくなる。
ワークフローの高速化
■Adobe Lightroom Classicの現像モジュールのパフォーマンス向上
対応環境:Adobe Lightroom Classic
Adobe Lightroom Classicにおいては、現像モジュールのパフォーマンスの向上に注力してきた結果、画像ナビゲーションの速度が2倍に向上し、フィルムストリップがより機敏で応答性の高いレスポンスを実現。今年のAdobe MAXリリースでは、メモリとキャッシュをさらに強化し、Windowsでの画像ナビゲーションの操作性を改善して、よりスムーズなパフォーマンスを実現した。
■ニコンのカメラでのテザー撮影サポートの強化
対応環境:Adobe Lightroom Classic
ニコンのカメラでのテザー撮影が、WindowsとMacの両方でより高速かつ信頼性の高いものに改善された。最新のアーキテクチャの改善により、カメラの検出時間が約1秒に短縮している。一部の新しいニコンカメラでは読み込みが最大3倍速に改善され、古いニコンカメラでも2倍の速度を維持している。これには、Adobe Lightroomが既に提供しているソニー(5月にサポート追加)やキヤノンなど他のカメラメーカーのテザー撮影サポートで培った技術が活かされている。
■HDRサポートの拡張
対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic
昨年のAdobe MAXでは、モバイルでのキャプチャから編集、書き出しまで、エンドツーエンドのハイダイナミックレンジ(HDR)ワークフローである「HDR最適化」をリリースした。これにより、より現実世界に近づいた素晴らしいHDR写真を作成できるように改善された。今回の最新リリースでは、すべてのAdobe LightroomにおいてHDRコンテンツを追加のビューで表示できるようになる。
また、書き出し時にISO HDRゲインマップの埋め込みが可能になり、SDRとHDRの2つの別々のファイルを作成する必要がなくなった。HDRゲインマップにより、ディスプレイの能力に応じて、SDRかHDRのレンディションを自動的に表示できるようになり、デバイス間で一貫した表示体験が保証される。HDRゲインマップは、Apple Photos、Google Chrome、Instagramなど、多くのアプリでサポートされるようになる。
さらに今回のリリースでは、Google Pixel 9シリーズのデバイスを使用しているユーザーがHDRで写真を閲覧および編集できるように改善された。さらに、Appleシリコン搭載のMacデスクトップコンピューター、または、Adobe Lightroom iOS版を使用している場合は、静止画に加えて動画もHDRで編集できるように改善された。
その他のアップデート
ノイズ除去の追加ファイル形式サポート:(対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Camera Raw)「ノイズ除去」が対応するRAWファイル形式について、これまでのベイヤー形式とX-Trans形式に、HDR形式とパノラマ形式のDNGファイル、Apple ProRAW DNG、Samsung Galaxy Expert RAW DNG、Google Pixel Raw、およびCanon、Nikon、Sony、Leica用のリニアRAWファイル形式を追加し、サポート対象を拡張した。
プレビュー管理コントロール:(対応環境:Adobe Lightroom Classic)以前は、カタログ設定内でプレビューストレージを管理するには、古いプレビューをどのくらいの頻度で破棄するかをAdobe Lightroom Classic上の設定で調整するしかなかった。Adobe MAXリリースでは、ユーザーはプレビューキャッシュの制限を設定して、Adobe Lightroom Classicがプレビューの保存に使用できるディスク容量を制御できるように改善された。
カタログのアップグレードワークフローの改善:(対応環境:Adobe Lightroom Classic)カタログのアップグレード時に名前の変更が不要になった。Adobe Lightroom Classicでは、アーカイブ用に以前のバージョンのカタログをバックアップできるように改善された。現在のカタログの名前は、「ファイル/カタログの名前を変更」で変更可能。
Adobe Lightroom Android版のパフォーマンスの改善:(対応環境:Adobe Lightroomモバイル版)Adobe Lightroom Android版にも重要なアップデートが追加され、写真のレンダリング、編集、書き出しにかかる時間が大幅に短縮された。グリッドビューでの RAW画像の読み込み時間が88% 短縮され、わずか 2.5 秒になった。選択した被写体のマスク生成も40%高速化され、レンズぼかしで編集した JPEG の書き出しにかかる時間は3倍高速化した。
新しいワークフロー
Adobe Lightroom、Adobe Photoshop、Adobe Camera Raw など、アドビのエコシステム全体で利用できる、さらに多くの写真向けの魅力的な新機能が追加された。
■Adobe Lightroomでのより高度なワークフローのサポート(対応環境:Adobe Lightroom)
- スマートアルバム:検索結果をスマートアルバムとして Adobe Lightroomに保存し、すばやくアクセスして簡単に整理できる。
- サードパーティ製アプリケーションとの連携:Adobe Lightroomから任意のサードパーティ製アプリケーションに写真を送信して追加編集し、作業が完了したら自動的にAdobe Lightroomに戻すことができる。
- カメラとAdobe Lightroomの連携:Frame.io を使用して撮影から編集までをシームレスに行い、C2C 対応カメラからAdobe Lightroomにワイヤレスで画像を送信できる。
- プリセットの強化:選択した複数の写真にプリセットを一括適用したり、よく使うプリセットをお気に入りに追加して簡単にアクセスしたり、プリセットリストでサムネイルプレビューを表示したり、その他にもさまざまな機能が追加された。
- アクセシビリティ:Adobe Lightroomでスクリーンリーダーを使用したり、キーボードでアプリケーションを操作したりできる。
■Adobe Camera RawのAI搭載新機能
- 生成拡張(テクニカルプレビュー):生成拡張は、背景に自然にフィットするコンテンツを新規生成し、既存の画像のエッジとシームレスにブレンドできる。
- Adobe Adaptive(ベータ版):Adobe Adaptive(ベータ版)プロファイルは、空と人物を内部的に調整することで、画像固有のレンダリングを作成する。風景、建築物、高コントラストのシーンなど、ハイダイナミックレンジの高い画像に最適としている。
- その他のACR機能強化(テクニカルプレビュー):スーパー解像度、Rawディテール、ノイズ除去の各機能では、個別のDNGファイルは作成されなくなる他、ノイズ除去の設定を素早く再調整できるようになり、より効率的な編集が可能になった。
■Adobe Photoshopの新しいAI搭載の写真機能
- 気をそらす要素の除去:電線や背景に写り込んだ人物など、写真の不要な要素をワンクリックで自動的に検出し、除去する。
- 生成拡張:生成コンテンツで写真を枠外へとシームレスに拡張し、画像を拡張する。
- 生成塗りつぶし:簡単なテキストプロンプトを使用して、選択範囲内で画像を追加、削除、または変更します。 蝶、山々、広大な景色といった要素の追加など、クリエイティブなワークフローで使用できる。
信頼と透明性に対する継続的な取り組み
Adobe Lightroomチームは、AI時代における信頼性と透明性を高める機能の構築に専念している。コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)の一環として、Adobe Lightroomから書き出したファイルにコンテンツクレデンシャルを追加できるオプションをリリースした。これにより、作品の来歴証明と信頼性の維持が実現する。
■Adobe Lightroomのコンテンツクレデンシャル対応
対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Lightroomモバイル版(iOS/Android)、Adobe Lightroom Web版、Adobe Camera Raw(早期アクセス版)
Adobe Lightroomエコシステム全体で、新しいコンテンツクレデンシャル機能が早期アクセス版として提供される。これにより、Adobe LightroomからJPEGファイルを書き出す際に、デジタル署名を通じて名前、SNSのハンドル名、編集履歴を添付するオプションが提供される。
コンテンツクレデンシャルの添付を選択すると、入力した情報が画像ファイルに関連付けられ、それらは contentcredentials.org/verify または新しいAdobe Content Authenticity(ACA)アプリに写真をアップロードして確認することができる。写真にコンテンツクレデンシャルが含まれていることを示す「 CR」アイコンが表示され、画像をタップすると作品の帰属先、使用状況、作成プロセス(作者がそれを含めることを選択した場合)などの概要が表示される。