普段、自分は仕事でソニーの「α1」と「FX3」をメイン機として運用している。動画制作の現場においてFX3は、もはや欠かせないデファクトスタンダードだ。複数人のカメラマンが集まる現場でも、FX3で揃えれば色の整合性を取りやすく、運用面での安心感が高い。この実用性こそが、現場でFX3を選び続けている大きな理由である。

一方で、α1は8K撮影やタイムラプス用途で活用しているが、長時間の連続撮影では熱停止への不安が常に命題としてつきまとう。先日発表された「α1 II」も試用したが、現状の体制から買い替える決定打にはいたらなかった。そんな折、「現状維持で十分」と考えていた自分の前に、新型機「α7R VI」という有力な選択肢が現れた。

「変わらない信頼」と「劇的なAF進化」

まずは外観からチェックする。会場で実機を手にした瞬間、思わず「変わっていないな」と感じた。α7R Vと並べてもデザインやボタンレイアウトはほぼ共通しており、指が覚えている感覚のまま即座に扱える。この「変わらなさ」こそが、撮影現場を知り尽くしたソニーの狙いなのだろう。手に取った瞬間から、迷いなく自分の道具として機能する信頼感がある。

左がα7R V、右がα7R VI。外観はほぼ変わらないと言っていいだろう

続いてファインダーを覗き込んでみると、その視界の明瞭さに驚かされた。第一印象からして、これまでの機種とは明らかに違う。ドット数こそα1と同じ944万ドットだが、実際に体験する視認性は数値以上のものがある。

パネルの性能や光学系の見直しによって、像がよりくっきりと、クリアに浮かび上がって見えるのだ。ファインダー越しに被写体を追う感覚が一段階引き上げられており、実戦での使い勝手に大きく寄与することは間違いない。

そして、今回もっともインパクトを受けたのが、瞳認識性能の劇的な進化である。今回の新型機の進化は、この追従性能に集約されていると言っても過言ではない。

実際に動画を回してみたが、瞳や顔の追従性能は極めて高い。撮影中に背後を人が横切るような場面でも、ピントが外れずに粘り強く被写体を追い続ける。普段使っているα1でもピントを外すようなシビアな状況下でも、この新型機の処理は非常にスムーズだ。フルオート設定に任せきりでも、意図した被写体を捉え続ける強さがある。

動画性能はついに実用域へ

本機への期待が最も高まるのは、やはり動画性能だ。事前情報によれば、8K30P動画を最大120分間連続で記録可能としている。ソニーのミラーレス機で長年課題となっていたオーバーヒート問題を、ファンレス構造のこのクラスでどこまで克服したのかは、プロの現場において極めて重要な関心事である。

著名YouTuberへのインタビューなど、2時間以上カメラを回し続ける現場では、「熱で止まらない」という信頼性が何より優先される。実際に4K120Pを連続記録してみても、熱を持ちやすいカードスロット周辺は比較的落ち着いていた。高画素データを高速処理しながら、効率的に熱を逃がしていることがうかがえる。

4K120Pで連続撮影を行った後の記録メディアは、手に持つと非常に高温になっていることが多い。しかし、α7R VIにおいては、メディアの温度が明らかに通常よりも低かった

また、4K120P撮影における画角の変化についても特筆すべき点がある。本機には「4K動画画角優先」という設定項目が用意された。

ただし、「4K動画画角優先」をオンにした場合は、広い画角を維持する代わりに、暗所での画質がわずかに低下する場合があるというトレードオフも存在する。暗所でのノイズ耐性を優先して「切」で撮るか、多少の画質変化を許容してダイナミックな広角映像を優先するか。撮影者の意図を反映できるこの設計は、現場の状況に応じた瞬時の判断を可能としている。高フレームレート撮影を多用するユーザーにとって、この機能の搭載は大きな意味を持つだろう。

「4K動画画角優先」設定の「入」と「切」による違いについて。ソニーは、この設定変更に伴う画角変化の具体的な数値については公表していない。そのため、背景の映り込み方を注意深く見比べ、実際の変化の度合いを確認してほしい

刷新された電源システムと放熱設計

運用の要となるバッテリーシステムも刷新された。新型縦位置グリップ「VG-C6」には新開発バッテリーを2基収納でき、従来より容量も向上している。最新の画像処理エンジンによる電力効率改善と相まって、長尺収録でもスタミナ不足を感じる場面は少ないだろう。

高容量SAシリーズバッテリーを2個まで装着可能な縦位置グリップ「VG-C6」

リチャージャブルバッテリーパック「NP-SA100」の物理サイズ変更に伴い旧バッテリーとの互換性は失われたものの、冬季など過酷な環境下での安定性を考えれば納得できる変更だ。電力制御の進化によって、高負荷時でも安定動作を維持している点には、プロ機材として大きな安心感がある。

リチャージャブルバッテリーパック「NP-SA100」

外観こそキープコンセプトだが、中身の作り込みは相当に深い。特に、バリアングルとチルトの利点を融合した「バリチル」機構の搭載は待望の進化である。あらゆるアングルから自在に構図を追い込めるうえ、モニター表示も極めて鮮明だ。

個人的に重視している「光軸をセンターに保ったままの操作感」も損なわれておらず、その佇まいには道具としての完成度の高さが宿っている。

α7R Vで定評の高い4軸マルチアングル液晶モニターを継承

高画素連写と新レンズのインパクト

連写性能についても、本機の真価を味わうため電子シャッターへ切り替えて試した。有効約6680万画素という高画素に加え、ロスレス圧縮RAW設定にもかかわらず、バッファは非常に余裕がある。ブラックアウトのない視界の中で、高精細データが次々と書き込まれていく感覚は圧巻だ。

ただし、この解像度で連写を続ければメディア消費量は膨大となる。実運用では1TBクラスの大容量カードが必須となるだろう。

最後に、同時にテストした「FE 100-400mm F4.5 GM OSS II」についても触れておきたい。動画ユーザーにとって、ズーム時のF値変動は大きな問題となる。本レンズはズーム全域で明るさ変化を抑えた設計思想が印象的で、動画制作との親和性を強く感じさせた。

さらに驚かされたのが、ドロップインフィルター機構の採用である。これまで超望遠単焦点レンズ中心だった機構が、100-400mmクラスのズームレンズにも導入された意義は大きい。レンズ後部へ40.5mmのNDフィルターやサーキュラーPLを装着できる利便性は極めて高く、大型フロントフィルター運用の煩雑さから解放される。

通しレンズでありながら重量は1,840gに抑えられており、手持ち運用も十分現実的だ。機動力と描写性能、さらに高度なフィルターシステムを兼ね備えたこの仕様は、多くのクリエイターにとって魅力的に映るはずだ。

「フラッグシップ級AF×長時間記録」 α7R VIが証明したプロ仕様の真価

α7R VIを使ってみて強く感じたのは、フラッグシップ機であるα1シリーズの性能が、そのままこの1台に詰め込まれているということだ。これまでα1での動画撮影は熱停止への不安が常にあり、結局はFX3へ頼らざるを得ない場面が多かった。しかし、この最新機が本当にオーバーヒート問題をクリアしているのだとしたら、動画機としての使い勝手はこれまでの基準を塗り替える。

上位機種に引けを取らないフォーカス性能を維持しながら、長時間回し続けられる安定性があるのは非常に大きい。8Kで120分間止まらないという性能が現実であれば、もはや撮影に制限はないと言える。正直、自分のα1を売ってこちらへ乗り換えてもいいと本気で思えるほどの仕上がりだ。

実機に触れ、ソニーがこのモデルに持たせた役割を実感した。α7R VIは従来のスタンダード機の域に留まらず、プロの現場でもメイン機として運用できる性能を備えている。今後の映像制作におけるひとつの指標になりそうだ。


羽仁正樹(Saha Entertainment)|プロフィール
東京を拠点にグローバルに活躍する映像クリエーター、写真家。自身が撮影し制作を手がけた映像・写真の作品は、TV番組や映画、世界各国で開催される展示会、ディスプレイ、TVCMやポスターなどの広告に多用された実績を持つ。