ジンバルカメラといえば、歩きながらでも滑らかな映像が撮れるコンパクトな動画カメラというイメージが強い。旅行Vlogや自撮り、日常の記録など、気軽に持ち出せる映像機材として人気を集めてきた。

そんなジャンルに、Insta360が初参入した。Leica共同開発のレンズや着脱式モニターを搭載するLunaシリーズの上位モデルInsta360 Luna Ultraは、望遠カメラを備えたデュアルレンズ構成が最大の特徴だ。

実際に使ってみて感じたのは、「ジンバルカメラの使い方そのものを広げようとしている製品」だということ。特に印象的だったのが、「望遠」という新しい選択肢だった。

最大の魅力は「望遠」。ジンバルカメラの守備範囲を広げる存在

Insta360 Luna Ultraを使っていて最も印象的だったのは、やはり望遠カメラだ。現在のジンバルカメラ市場では広角中心の製品が主流であり、望遠レンズを本格的に搭載したモデルは珍しい。

標準の20mmのレンズに加えて、60mmの望遠レンズを搭載している。静止画や動画の撮影では、最大で12倍(240mm相当)までのズームに対応している。

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向かって左が20mmF1.8、右が60mmF2.0のレンズ。いずれも焦点距離はフルサイズ換算。広角は1型、望遠は1/1.3型イメージセンサーを採用

これまでジンバルカメラは、広角を活かしたVlog、自撮り、風景撮影、家族との記録といった近距離寄りの用途が中心だった。もちろんそれ自体は便利だが、「遠くのものを撮りたい」と思った瞬間に限界も感じやすい。

Luna Ultraはここが違う。広角で周囲の空気感を残しつつ、必要な場面では望遠で被写体へ寄れる。この切り替えがとても自然で、撮れる映像の幅が大きく広がった。

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広角20mmで撮影。中央部分にカモが二羽写っているが広角では距離がありすぎて分かりづらい
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望遠レンズに切り替えて撮影。最大で12倍までズームできて遠くの被写体も難なくカバーできるようになっている
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実際に家族で水族館へ行った際にLuna Ultraを持ち出してみた。離れた席からオルカショーやイルカショーを撮影する場面では、望遠がかなり役立った。スマートフォンや一般的な広角中心のジンバルカメラだと「ちょっと遠いな」と感じるシーンでも、被写体をしっかり引き寄せられる。

一方で、ショーの前後には家族との時間も撮影したい。そんな時は広角に戻して、周囲の雰囲気や子どもの表情を自然に残せる。「遠くのショー」と「すぐ近くの家族」を1台で行き来できる感覚は、想像以上に便利だった。運動会や発表会、旅行先のステージイベントなどでも相性が良さそうだ。

さらに、ジンバルによる手ブレ補正が効くため、片手でラフに撮っても映像が安定しやすい。子どもと手をつなぎながらでも撮影しやすい点は、家族用途との相性の良さを感じた。

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手持ち自撮り撮影。広角20mmのレンズだと撮影者はもちろん、その場の風景や同行者数名もフレームに収める余裕があって便利だ
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スマホの広角カメラでは背景が散らかりやすい場面でも、望遠を使うことで被写体を整理しやすく、立体感も出しやすい。ミラーレスカメラで中望遠レンズを使っている時に近い感覚で、「被写体を切り取る楽しさ」がある。

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望遠レンズでアジサイを撮影。ボケ感もあって立体的な描写になる
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マクロ的な感覚で花や小物を撮るのも楽しく、日常の撮影でも活躍シーンは多そうだ。アジサイを撮影してみると、花のディティールやそこについた水滴まで精細に記録してくれた。

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望遠レンズでアジサイをマクロっぽく撮影。遠くのものを撮るだけでなく被写体に近づいて写す表現力も魅力的だ
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起動時のLeicaロゴが気分を上げる。高級感あるデザインと使いやすい操作系

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Luna Ultraを起動すると、まずLeicaロゴが表示される。機能面とは直接関係ない部分だが、これが意外と気分を上げてくれる。

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単なるガジェットというより、「上質な撮影機材を使っている感覚」があり、特別感や高級感がある

操作系もよく整理されている印象だ。ジョイスティック、録画・電源ボタンに加え、様々な機能へのショートカットとしてつかえるカスタムボタンを2つ搭載。さらに、ジンバルカメラとしては珍しくズームレバーが用意されている。

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モニター下部に「カスタムボタン」がふたつ。様々な機能を割り当てることが可能で、これはモニターが縦位置でも使用できる。操作部にズーム用のレバーが搭載されているのも特徴だ

このズームレバーがかなり快適だった。指先で操作すると滑らかに画角が変化し、動画撮影中でも自然なズーム表現ができる。デュアルレンズを切り替えながらズームしているにもかかわらず、切り替えの違和感が少なく快適に使えた。

またこの操作部は分離式になっていて、リモートコントローラーとしても機能する。カメラから離れて撮影する場合でも映像を確認しながら、録画やズームの操作ができて非常に便利だ。

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モニター含む操作部が着脱できる。スマホアプリに頼ることなく、リモコンとしてカメラを操作できるのは画期的な機能だ
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背面のマイク部には標準でウインドガードを搭載。風切り音のノイズを防いでくれる

記録メディアは、microSDカードに対応。さらに内蔵ストレージが47GBあるので、万が一カードを忘れてしまっても撮影可能だ。

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カメラ側面にmicroSDカードのスロットを備える

トラッキング精度は高く、着脱モニターも実用的

Luna Ultraはトラッキング精度も高かった。例えば、特定の人物の動きに合わせて、自動でジンバルが動いて撮影してくれるので動く被写体でも快適に撮影できる。トラッキング対象が一時的に物陰で隠れても、被写体を再度見つけて追いかけてくれるので実用性が高い。

特に便利だったのが、望遠でも被写体追従が機能する点だ。離れた被写体に対しても追従してくれるため、子どもや動物、イベント撮影との相性は良いと感じた。

もうひとつユニークなのが、先述したモニター部分を分離してリモコンとして使える点。離れた場所にカメラを設置し、手元で構図確認や操作ができるため、「撮ったつもりが被写体が切れていた」といった失敗を減らしやすい。家族写真や一人での撮影にも便利で、簡易三脚と組み合わせるとかなり実用的だった。

細かな使い勝手も良い。アクセサリー設計に工夫あり

保護カバーはレンズ部とカメラ前面をしっかり覆うタイプで安心感がある。

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また、このカバーに広角レンズやブラックミストフィルターを収納できる点も便利だった。アクセサリー類が増えがちな撮影機材では、こうした細かな工夫は地味にありがたい。

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広角レンズをつけるとフルサイズ換算16mm相当の画角で撮影できるようになる
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保護カバーには広角やブラックミストなどの外付けアクセサリーを収納できる

標準付属の1/4インチ(約6.35mm)ねじハンドルには簡易三脚も内蔵されており、別途三脚を持ち歩かなくても「ちょっと立たせたい」ができる。

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付属のハンドルをとりつけると簡易的なミニ三脚として使用できる

クリエイターキットに付属するバッテリーハンドルはバッテリーを延長できるようになっていて、こちらも同様に簡易三脚を内蔵している。

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左が「1/4インチねじハンドル」右が「バッテリーハンドル」。いずれも三脚ねじ穴と、簡易ミニ三脚を備えている

クリエイターキットに付属するMic Proも使い勝手も良く接続がスムーズ。内部収録にも対応しており音質も良好だった。

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クリエイターキットに付属するアクセサリー。ワイヤレスマイク「Mic Pro」も含まれる。またカメラとアクセサリー類を収納するキャリーバッグも同梱
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標準セットの内容。保護カバーやミニハンドルが標準で付属する

360°回転できない?気になった課題・注意点

一方で、気になる部分もあった。

まず、モニターを分離していない状態で使っていると「接点が汚れている可能性があります」といったエラーが時折表示されることがあった。エラー表示が出ている間は撮影ができず不便に感じた。試用機特有の可能性もあるが、少し気になった部分だ。

また、ジンバルの回転に制限があり、360°回転できない点も惜しい。360°近い可動域があるものの、可動域に限界があるので注意したい。Insta360といえば、360°カメラや、スマホ用ジンバル製品でも360°回転できることを売りにしてきた。自由なカメラワークを期待したくなる製品なだけに、「ここまで来たなら回転制限を完全になくしてほしかった」と感じた。

さらに、細かい部分ではあるが、カスタムボタンを押してジンバルロックをしてジンバルを動かないように固定した際に、その状態を示す表示がモニターに表れないことが気になった。

オプションのアクセサリーで補助LEDライト、ネックマウント、POVヘッドトラッカーも用意されているが、クリエイターキットには含まれていない点は注意したい。

まとめ:望遠がジンバルカメラの可能性を広げる

Insta360 Luna Ultraを使って感じたのは、「望遠」によってジンバルカメラの守備範囲が大きく広がったことだ。

これまでのようなVlogや旅行、家族撮影に加え、離れたステージ、動物、イベントなど、少し遠くの被写体も自然に撮れる。特に「遠くのショーを撮る」「家族も撮る」といった使い分けを1台で完結できるのは大きな魅力だった。

これまでジンバルカメラと言えば、あくまで「小型のサブカメラ」として運用する人も多くいたが、望遠に対応したことで「1台でマルチな撮影シーンに対応できるメインカメラ」に進化している。Insta360初のジンバルカメラにもかかわらず、既存のジンバルカメラの課題を改善しており、新しい可能性を感じさせてくれるカメラだった。

下のInsta360 Luna Ultraのレビュー動画では、望遠レンズの使い勝手や、トラッキング性能のテスト、Vlog撮影に用いた感想についてまとめている。実際にこのカメラでどのような映像が撮れるのか参考にしていただきたい。

製品名 Insta360 Luna Ultra
センサー 1インチ8Kセンサー(メインカメラ)+1/1.3インチ望遠センサー
レンズ Leica Summicronレンズ
焦点距離(35mm判換算) 20mm(広角)、60mm(望遠)
ズーム 最大12倍(240mm相当)、ロスレス最大6倍(120mm相当)
絞り 広角 F1.8、望遠 F2.0
動画記録 最大8K30p、4K120pスローモーション対応
低照度撮影 PureVideoモード対応(最大4K60p)
Log撮影 10-bit I-Log対応
手ブレ補正 3軸機械式ジンバル+電子式手ブレ補正
トラッキング AIトラッキング(人物・ペット・グループ対応)望遠トラッキング対応
ディスプレイ 着脱式2インチOLEDタッチスクリーン(リモート操作対応)
静止画 最大37MP UltraPhoto、最大200MPパノラマ写真
音声 ステレオ録音、Insta360 Mic Pro対応、Bluetooth接続対応
内蔵ストレージ 47GB
バッテリー 1550mAh(最大約4時間駆動)
急速充電 PD急速充電対応(約23分で80%充電)
重量 約232g
付属品(標準) 保護カバー、1/4インチスレッドハンドル、ウインドガード(プリインストール)リストストラップ など
主なアクセサリー ブラックミストフィルター、カメラライト、NDフィルター、広角レンズ、バッテリーハンドル、ネックレスマウント、POVヘッドトラッカー など

尾田章|プロフィール
カメラのある日常の楽しさを発信する"くらしフォトグラファー"。カメラ機材の使い方、写真の撮り方などをYouTube、運営ブログ「KOBE FINDER」にて"Aki"として初心者にもわかりやすく解説。