カメラのファイルベース移行が本格化し、ノンリニア編集環境もファイルベース化に対応した2008年。今年は、フルデジタル制作環境に向けて、新たな一歩を踏み出す年となりそうだ。カメラの映像収録から、映像編集、番組送出・コンテンツ配信、アーカイブまでをファイルベースで一貫するフルデジタル制作への移行。そのトータル環境の実現までには、ファイルの信頼性向上や検索性向上、データバックアップと再利用など、まだまだ乗り越えなければならない課題は多い。
確かに、ノンリニア編集システム単体で見れば、映像ファイルでの制作は一般化している。しかし、編集以外のワークフロー部分となると、目に見えないデータを扱う上で、まだまだテープメディアの安心感や信頼が大きな壁となって立ちはだかる。フラッシュメディア記録が主流になりつつあるカメラ収録であっても、テープが回っていることの安心感や、バックアップメディアとして残せるテープの取り回しの良さを挙げるカメラマンが多いことも事実。テープの一部に不具合があっても、前後の映像は生きているテープメディアへの信頼は絶大なものがある。テープへの依存を抜きにしても、フルデジタル制作ワークフローへの移行をスムースに行うためには、これまで収録、編集、送出、配信、アーカイブといった部分で縦割りされていたワークフローを、横断的に連携できるようにする必要がある。
今月の特集は、2日間に分けて掲載する。前半は、メタデータとメディアマネジメントについて取り上げる。フルデジタル制作移行においては、増え続けるメディアの管理・検索を効率的に行うためのメタ情報の取り扱いや、メディアの運用を管理するためのメディアマネジメントは不可欠なものとなるはずだ。メタ情報の視点としては、アドビ システムズが12月19日に発売した新しい映像制作ソフトウェアPremiere Pro CS4に搭載されたスピーチ検索に焦点を当てた。音声情報をメタ情報として扱う新しい取り組みを紹介する。メディアマネジメントについては、朋栄のメディア管理ソリューションMediaConciergeに焦点を当てる。フルデジタル制作ワークフローに向け、ノンリニア編集だけでなく、既存のリニア編集も組み込もうとする取り組みについて紹介する。いずれも、機能紹介では分かりにくい部分についてはインタビューを行った。
特集後半は、フルデジタル制作の可能性と新しい映像配信メディアについて紹介する。フルデジタル制作の可能性については、2008年夏の北京五輪で行った米NBCのファイルベースワークフローの実際を紹介する。オムネオン・ビデオネットワークスのソリューションを活用し、プロキシ映像を使用して大規模な遠隔地編集をした初のケース。放送、Web、携帯の3つのメディアに対し同時に配信した事例としても注目だ。
放送、Webなどマルチユースという意味では、日本では携帯・モバイル放送として定着したワンセグへの対応も欠かせない。データ放送関連ソリューションを扱うメディアキャストについても取材を行った。エリア限定ワンセグ放送の実証実験を通じて、新たな可能性を見出していることが見えてきた。