次世代制作ワークフローへの課題であるメタデータへの取り組みについて、Premiere Pro CS4に新たに搭載されたスピーチ検索機能部分に焦点を当てて、記事を書いてもらった。製品機能としても面白いスピーチ検索だが、収録から編集、送出・出力、アーカイブまで、音声情報のメタデータ活用を広げることができれば、ファイルベースワークフローの取り扱いがさらに向上するものとなる。アドビ システムズ株式会社マーケティング本部ビデオソリューションズ部でビデオ製品を担当する古田正剛氏に聞いた。

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Adobe SystemsのXMPサイト

Adobe SystemsのXMPサイト

──今後のノンリニア編集でポイントとなるのはメタデータだと感じています。現在は編集ワークフローでの活用が進んでいますが、このデータはアーカイブの検索など、ファイルベース・ワークフロー全体で活用できそうです。こうした部分に対するアドビ システムズの考え方は?
古田正剛氏(以下、古田)「アドビが採用しているメタデータ記述方法にXMP(Adobe eXtensible Metadata Platform)があります。XMLで記述されたメタデータフォーマットで、アセットマネジメントシステムでXMPファイルをサポートしてもらうことで、増え続けるメディアの管理に役立ててもらおうとしています。After Effets CS4では、Premiere Pro CS4のスピーチ検索機能を使って音声解析をした後に書き出されたXMPファイルを使用すれば、クリップ内で話している単語のタイミングで背景のアニメーションを変更することもしやすくなります。こうしたことは制作者サイドのメタデータの活用ですが、アドビとしては、検索での効率化など視聴者サイドでもメタデータを活用することを考えています。配信メディアでもXMPファイルを活用することで、映像の検索や、必要なシーンへのジャンプがしやすくなります」

──今回のCS4 Production Premiumでは、Premiere Pro CS4のスピーチ検索を行った段階で、クリップに対してXMPファイルが付加されると理解してよいのですか?
古田「そうです。メタデータの記述については、まずメディアファイルに内包できる共通のメタデータについてはメディアファイル内に格納します。メタデータを扱えないメディアファイルのためのメタデータについては、新たにXMPファイルを生成するという仕組みです。例えば、QuickTimeでは内包されますし、P2 MXFでは、XMPファイルが別途生成されます。音声解析を行った時点で、各単語ごとにタイムコードが付加され、XMP形式でメタデータが出力されます」

──現在、放送局やプロダクションではMXF(Material eXchage Fomat)の採用が進み出しています。今後、メディアマネジメントに有効なフォーマットとして、XMPをどう普及させていくのですか?
古田「MXFにメタデータも組み込むという案もあると思いますが、その記述方法自体が統一されていないという現状があります。放送局やプロダクションにおいて、メタデータに何を記述するかという議論は当然あるわけですが、欲しいメタデータは、部署によっても変わってきてしまいます。海外のある大きな放送局でメタデータの統合を図ろうとしたときに、各部署から合計10種類のメタデータ記述の要望が上がり、それぞれの要望に合わせてMXFを作るのは非効率的だとして統合できなかったことがあります。最終的に、メタデータの記述に関してはXMPを採用して、必要なメタデータを取り出して使用する方向になりました」

──それは、XMPを中間ファイルとして存在させていくということですか?
古田「違います。MXFと連携したメタデータ用ファイルという意味においては中間ファイル的な役割となりますが、各社のシステムでXMPをサポートしてもらうことによって、直接読み書きしてもらうことが可能です。アドビとしては、XMPの規格自体をオープンソースとしてSDKを提供しています。現在、標準化をアドビが提唱しつつ、各標準化団体でXMPの枠組みを利用して議論してもらっているという状況です」

──最後にCS4のワークフローを導入検討している人に一言。
古田「まずは、Adobe Premiere Pro CS4の30日間無料体験版に日本語の言語解析モデルを追加してもらい、スピーチ検索を試してみて欲しいですね。新しい可能性が見えてくると思います」

(インタビュー:秋山謙一)