VTRによるリニア編集からノンリニア編集になり、1インチやD2、スイッチャー、DVE、編集機、ミキサー、テロップなど、高価な上に大きく重たい機材から開放された。こうした機材は、スペースが必要なだけでなく、メンテナンスや機材用の部屋、空調、電力なども考慮しなくてはならず、設備だけでなくランニングコストもプロダクションにとって大きな負担になっていた。しかし、入り口と出口にVTRがつながっただけのノンリニア編集システムにより、格段にスリムになった。さらに、カメラがファイルベースになることでVTRも不要となりつつあり、システムもワークフローも大幅に変わりつつある。

こうしたダウンサイジングは、コストダウン的には恩恵をもたらしたが、さまざまなファイルを扱わなくてはならないという別の問題をはらむことになった。

Rhozet Carbon Coderの導入に向けて

今回、Rhozet Carbon Coderの導入検証をしていただいたUVN(東京都千代田区)は、映像コンテンツ事業、映像テクニカル事業、Web TVプログラム事業、Web・モバイル媒体事業、映像環境事業の5つの事業で形成されており、Blu-rayやDVDのオーサリング、ポストプロダクション業務のほか、撮影なども含めた映像制作全般を扱っている。テレビ番組の編集やDVDおよびBlu-rayのオーサリング、インターネットによるストリーミング配信、イベント映像制作など、その作業内容は多岐にわたっており、対応しなくてはならないビデオフォーマットも幅広いことが要求される。

UVNが扱うテレビ番組の編集作業では、比較的扱うフォーマットは決まっており、これらはリニア編集室やAvid SymphonyやAvid Media Composer Nitris DXといったノンリニア編集システム、DAWシステムのPRO TOOLSなどでほとんどは問題なく作業することが可能だ。Blu-rayやDVDのオーサリングではそれぞれ専用のエンコーダーを装備することで対応している。

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しかしながら、最近では2k4k素材やWeb系ではFlashなどの案件もあるほか、小型ビデオカメラで撮影したAVCHDやHDVなども当たり前のように持ち込まれるようになってきた。さらに、従来編集用の中間フォーマットであったProResコーデックの素材やテレビ番組用に収録された素材をストリーミング配信用のフォーマットへ変換するといった需要もでてきたそうだ。

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Rhozet Carbon Coderは、ソニーのXDCAMやパナソニックのP2といった収録フォーマットからWindwsMediaやFlashなどさまざまなフォーマットに対応している。こうしたプリセットのほか、ユーザーが独自に設定することもできる。

Rhozet Carbon Coderは、さまざまなフォーマットのファイルを相互に変換することができるトランスコーダーだ。変換可能なフォーマットは多岐にわたるので、どのようなファイルを持ち込まれても、またどのようなファイルで出力するように依頼されてもRhozet Carbon Coderならすべてかなえてくれそうだ。

ノンリニア編集では、編集ソフトがそれなりの収録フォーマットをカバーしているものの、MPEG2やAVCHDなどの混在のほか、1080iや720p、1920や1440といった異なる解像度のファイルを直接タイムライン上へもってきて編集することは得策ではない。Avidであれば、DNxHDなどに変換して作業するほうが効率的というわけだ。このあたり、リニア編集で行っていた1インチやD2への素材のコピー作業に似ており、ワークフロー的には原点回帰といった感じだ。

HPワークステーションZ800環境で検証

UVNがRhozet Carbon Coderに注目したのは、対応フォーマットが多彩なことだけでなく、出力フォーマットを設定したフォルダー(Watch Folder機能)を作っておけば、そこに変換が必要なファイルを入れてやれば元のファイルが何であるかなどを考えなくともRhozet Carbon Coderが対応したフォーマットであれば同時進行で処理してくれるという点だ。

処理するジョブがたまってくると変換処理に時間がかかるが、変換作業が終了したら担当者へメールを自動的に送る機能もあるので、その間担当者は別の作業を行うことが可能だ。

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Wizardにしたがって Watch Folderなどを簡単に設定することが可能。

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KernelSettingsでは、プライオリティやFTPの設定などが一覧できるほか、より詳細な設定が行える。

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トランスコード作業の流れは、ソースファイルを追加[Add]し(上)、プリセットからトランスコードのファイル形式を選択し(中)、ターゲット先に書き出すトランスコードファイルの詳細設定を行う(下)。プリセットを複数選ぶことにより、複数のファイル形式でターゲットにトランスコードすることが可能だ。

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導入検証にはHPのパーソナルワークステーションシリーズの最上位モデル Z800 Workstationを使用した。2基の3.2GHz Xeonプロセッサーを搭載。メモリーは12GB実装している。

試しに、手元にあるいくつかのファイルをRhozet Carbon Coderで処理したところ、元素材がSDフォーマットの場合思いのほか時間がかかっていた。CPUの利用率を見ると複数あるCPUのうち1個しか働いていない。HD素材の場合は満遍なく働いており、変換フォーマットによってマルチCPUに対応しているものとしていないものがあるようだ。このあたりは、各コーデック供給元のソフトウェア設計で差が出てくるようだ。

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Carbon Coder Adminにより各種ジョブ管理をすることができる

今回使用したマシンはHPのパーソナルワークステーションシリーズの最上位モデルZ800 Workstationで、2基のXeonプロセッサーを搭載した最新のもの。OSも最新のWindows7を搭載している。Rhozet Carbon Coderは、Windows7だけでなく、XPやWindows Server上でも動作するので、ネットワーク接続して使用するのであれば、Windows Serverを利用したほうがクライアント管理やセキュリティの面で有利であろう。

Rhozetトランスコーダは、ネットワーク上で複数のクライアントの要求に応じられるように強力な管理機能を備えている。現在働いているジョブやプライオリティのほか履歴やロードバランス、変換後のファイルをFTP転送するなど、ファイルを変換するトランスコーダとマネジメントシステムが一体になった印象だ。こうした機能は、従来あった単体の製品にはない機能である。

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SDフォーマットAVIファイルをMPEG2 DVDフォーマットへの変換は思いのほか時間がかかっていた。CPUの利用率を見ると複数あるCPUのうち1個しか働いていない。

カメラで撮影したHDのMXFファイルの場合は各CPUとも満遍なく働いており、フォーマットによってマルチCPUに対応しているものとしていないものがあるようだ。

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UVNでは、適材適所の考え方から、DVDやBlu-rayのエンコーダ、ソフトウェアベースのファイル変換ソフトウェアなどを使い分けて利用していた。素材フォーマットの多様化や編集フォーマット、エンコードなど柔軟な対応を行うために一元管理できるRhozetトランスコーダはまさに待望のシステムといえる。

ただ、すべてがオートマチックに処理できるシステムなだけに、処理が終了したファイルのチェックまでも視野に入れたシステムが望まれる。この点についても、年内にはオプション製品との連携による対応が予定されており、これが期待通りに実装されれば、入り口から出口までワンストップで行うことが可能なワークフローを構築できそうだ。

(稲田出)