VQ-RT101が評価されている現場から

ポニーキャニオンエンタープライズは、エンターテイメント系の音楽や映像ソフト制作を展開するポニーキャニオングループの中で、各種ソフト作品の製造・技術部門を担当する会社として設立された。同社は先進性と高品質をテーマに、製品を通じて時代のニーズに応えるという姿勢を基に様々なメディア・ソフトに対応できる態勢を構築している。編集、MAなどのポストプロダクション業務を行うピーズスタジオ、DVD、Blu-rayのオーサリングをおこなうデジタルスタジオ、デュプリケートやアッセンブル部門、さらには、翻訳から字幕制作、吹き替えまでを担当する言語制作部門までを擁する。

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ポニーキャニオンエンタープライズ・ピーズスタジオ北澤直之氏

今回、ポニーキャニオンエンタープライズ・ピーズスタジオのエディター北澤直之氏にクオリティチェックの重要性とVQ-RT101の製品評価に関してお話をお伺いした。

 

-VQ-RT101を製品評価した経緯は

ノイズを自動で見つけてくれるツールを探していたところ、IMCのニコンシステムブースで参考出品であったノイズ検出装置を見つけました。ファイルベースでデータの損失、フレーム落ちなど、元データとの相違から判断するものは他のメーカーからいくつか出ていたのですが、比較映像無しにノイズを判断してくれるツールはこれまでありませんでした。ニコンシステムブースでこのノイズ検出装置VQ-RT101を見つけて、デモをお願いしたことが始まりです。製品化はされていませんでしたが、パイロットユーザーとして検証のお話を頂き、僕らとしてもこういうものが欲しかったので、良いものが出来ればということで協力させて頂きました。

-クオリティチェックはどのくらい時間がかかるのでしょうか

素材の時間のおおよそ2、3倍ぐらいですね。海外の素材が多く、ほとんどがHDCAMのテープです。デッキに掛けて、マスターモニターに映し、人による目視で確認を行っています。ノイズだけでなく、キャラクターなどの権利関係の確認、映像のレベル、音のレベル、位相のチェックなど、確認することが非常に多く、検査項目のどれかを機械に任せたいところでした。ノイズの検査を機械に任せることで、その分、他の検査項目に集中できます。

-どういった種類のノイズがありますか

デジタルのブロックノイズがほとんどですね。コピーした時や、収録時から入っていたものもあると思います。どこで出るかわからないので気が抜けないですね。1フレで済んでいるものもあれば、2フレ以上に渡って出ているものもあります。1フレだとまばたきしている間に見落としてしまいますので、人の限界を感じます。

DVDなどのパッケージになるものは、検証チームもあるのでそこでも見つけることも出来るのですが、パッケージになる前にオンエアされるものも多いので、その前段階である僕らのチェックでの精度をあげないといけない。また、DVDなどのパッケージになると例え1フレのノイズでも問題になりますし、そういった細かなノイズも見逃さないようにしっかりとチェックしています。ただ、現状スタジオにはチェック用の専用のシステムや部屋があるわけではなく、編集室を使って、編集のオペレーターがチェックしていますので、人的、設備的にもリソースの効率化を図らないといけません。

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マシーンルームに設置されたVQ-RT101

VQ-RT101本体

-そこでVQ-RT101を活用して効率アップ、クオリティアップにつなげたいというわけですね。

そうですね。特に持ち込まれる素材のチェックなどは、問題があった場合修正して再納品してもらわなくてはならないので、ここで時間をとられてしまうとその後の作業にも影響が出てしまいます。特に海外からの素材の場合は、テープのやり取りだけでもかなりの時間を費やしてしまいます。

それでも再チェックすると別の箇所で問題が発生したりすることもあります。いずれにしてもタイトルの発売やオンエアが決定しているものなどは、スケジュールをずらすわけには行きませんので、軽微なものならこちらで修正することもあり、修正内容によってはここで時間やコストがかかってしまいます。とにかく問題があった場合はなるべく上流でせき止めたいということです。

-VQ-RT101の使い勝手はどうですか

最初は検査項目も多く設定も複雑であったため、誤検知を招くようなこともありましたが、こちらからのフィードバックに対してニコンシステムさんが素早く対応してくれて、今ではかなり良くなっています。放送用フォーマットのHDCAMに絞ったことにより検査項目も絞られ、使い易くなりました。採れなかったテープノイズなどもしっかりと検出してくれるようになりました。

ブラックアウトの検出などは、フェイドアウトなどの誤検知を招かないように、フレーム単位でのしきい値が設定できるように改善されて良かったです。映像系の評価は色々と行いましたが、音系の方はあまり行っていないので検出の精度はまだ課題があるかもしれません。特にうちで扱っている海外の作品には、一般にモスキートノイズと呼ばれている高域ノイズの入っているものも多く、年齢によっては聞こえないものなので厄介なんです。モスキートノイズをしっかりと検知できるとうれしいです。音楽素材などにはこういった高域成分を含んでいるものもあるので、ある程度連続した場合にのみエラー警告するなど、設定やプリセットを工夫する必要はあると思います。

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ポニーキャニオンエンタープライズ・ピーズスタジオ

-実際にVQ-RT101を導入したら効率アップになりますか

製品になる前から試用していますが、だいぶ良くなってきましたね。かなり期待できると思います。具体的にどのくらい効率アップにつながるかはVQ-RT101を実戦配備してみないとわかりませんが、確実に効率アップに貢献できると思います。エラーのログも出力できますので、クライアントに提出するレポート作成にも役立ちます。これを添付すれば相手に問題箇所を説明しやすいですし、場合によっては素材を返却しなくてもレポートをメールに添付することもできますから効率的に作業を進めることが可能だと思います。効率アップ以上に期待できるのはクオリティチェックの質です。

人の目では見逃してしまうようなノイズも検知してくれるので確実に質の向上につながります。HDCAMで持ち込まれる素材が多いのですが、テープベースだと人、場所、デッキの3つがそろっていないと作業出来ないので、欲をいえば、ファイルベースでのクオリティチェックができると、デッキの空いている時にファイル化して、ノイズ箇所をまとめてチェックし、人と場所が空いている時にその他のチェックをするというようなリソースの分割ができ、更に作業効率が向上すると思います。将来的にはファイルでの素材持ち込みも増えてくると思いますので、今後ぜひ対応していただきたいですね。

8トラックテープやミュージック・カセットの時代から長年パッケージメディアを手がけてきた同社は、製品のクオリティに特に重きをおいている。こうしたメーカーが世界でもっとも品質に厳しいと言われる日本の消費者を満足させてきたに違いない。VQ-RT101はこうした厳しい要求をクリアするためのツールとして強力な武器になるのではないだろうか。特にハイビジョン時代になり大画面で視聴できる環境が当たり前になった昨今では、今まで以上のクオリティチェックが求められるようになったといえよう。今回の取材を通して感じたことは、目視による人手によるチェックだけではすでに限界がきた時代になったということだ。