11月に登場する映像品質検証ソリューションVQ-RT101とは?

ニコンといえば一眼レフやコンパクトデジカメなどを思い浮かべる人が多いと思うが、ニコンシステムはこうしたカメラのほか、半導体の製造に欠かせない露光装置(半導体/液晶露光装置)のソフトウェア・ハードウェア開発を担う会社だ。ニコンのグループ内の仕事が大半を占めていたが、最近ではグループ外の仕事や自社製品の販売も積極的に行っている。

ニコンシステムでは、映像品質評価ソフトウェアとして、デジタルメディアコンテンツの効率的な品質検証をおこなうコンテンツチェッカーVQ-500や画質の劣化現象を計測するソフトウェアVQ-1200のほか、国内のメーカーで多数の実績を誇る動画解析ソフトウェアとして、H.264 解析ツールやMPEG-2解析ツール、MPEG-4解析ツールなどをすでに開発・販売している。

11月に発売されるビデオテープ素材特有のノイズチェックが行える映像ノイズ検出装置VQ-RT101についてニコンシステム第3システム本部事業推進プロジェクト田村重和氏とプロジェクトリーダー安藤智英氏にお話をうかがった。

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ニコンシステム第3システム本部事業推進プロジェクト田村重和氏(右)とプロジェクトリーダー安藤智英氏(左)

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11月に発売される映像ノイズ検出装置VQ-RT101

-VQ-RT101を開発した経緯を聞かせてください。

動画解析ツールや映像品質評価ソフトの販売を通して、放送局や映像制作会社の方々とお会いし、映像制作における品質チェックの課題をお聞きしました。映像のチェックは目視で行っていて、多大な時間と労力を掛けており、それを何とか自動化したいとのことでした。そこで私どもは、お客様の負荷軽減と業務の効率化を目的にこの製品を開発しました。

-今回発売となった映像ノイズ検出装置VQ-RT101は、ソフトウェアではなくハードウェアですね。

現在販売している動画解析ツールや映像品質評価ソフトなどは、手軽さや扱い易さが市場のニーズにマッチしていました。一方で、VTRのHD-SDI信号を入力し、映像や音声のノイズを検出したいとのご要求も多くあり、リアルタイム処理が必要でした。そこでお客様のご要望と使いやすさを実現させるためにハードウェアという選択肢を選びました。比較映像なしにテープノイズを検出する装置はまだ無いはずです。

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検査項目一覧ウィンドウ。映像と音声の検査内容や検出感度(しきい値)、エラー発生時のキャプチャー範囲などを設定することが可能。最大で32 個の検査を登録できる

VQ-RT101動作時の画面。VQ-RT メインウィンドウ(左上)、ログビューワウィンドウ(右上)、グラフウィンドウ(左下)

-確かに、そのような映像のノイズを検出する装置は聞いたことがありません。では、VQ-RT101は具体的にどのようなノイズが検査できるのでしょうか。

VQ-RT101の検査項目は、テープ素材特有のノイズやフレームまたはフィールドで発生したブラックアウト、フリーズフレーム、タイムコードの不連続などの映像検査のほか、しきい値を超えた音声検出やしきい値以下の音声を無音として検出する機能、設定した周波数(高域)範囲の音声の検出などが行なえます。

-検出結果はどのように処理されるのでしょうか。ログで保存されたり波形が表示されたりするのでしょうか。

エラー発生時の映像をキャプチャーし、ログ情報と共にパソコンに保存することができます。これらはグラフウィンドウやメインウィンドウによりリアルタイムで監視でき、タイムコードで指定した範囲の映像を検査することもできます。また、検査項目一覧ウィンドウで詳細な設定が可能です。保存したログ情報は、ログビューワウィンドウでエラーの詳細履歴を確認することができるようになっています。エラーの起きた画像や音声がタイムコードとともに保存されるので、後で実際のエラー箇所を確認することができるようになっています。

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メインウィンドウ。エラーが発生したタイムコードと継続時間、エラーの内容などが表示される

ログビューワウィンドウ。エラーが発生したタイムコードと継続時間、エラー内容のほか、画像のサムネイル表示や音声の波形表示など。エラー発生箇所のサムネイルをダブルクリックすると実サイズで画像が表示されるほか、画像内のどこにノイズが発生したか点滅で表示可能

InterBEE2010でVQ-RT101を体感!

-検出・保存されたログをプリントアウトできるとテープに添付して情報として活用できると思うのですが、そうした機能も装備されているのでしょうか。

Excel2007の形式でエラー箇所のタイムコードや種類、サムネイル画像をエクスポートすることができます。また、CSV形式での出力もできるようになっています。

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グラフウィンドウ。エラー項目毎にタイムコード上のどこで発生していたかを表示できるほか、音声も波形表示され、レベルオーバーなどが視覚的に分かりやすく表示される。なお、このウィンドウの波形は検査中もリアルタイムで表示される

Excel2007の形式でエラー情報をエクスポートしてExcelでファイルを開いたところ。サムネイル画像が付いているので分かりやすい

-開発にあたって苦労された点はどこですか?

一番苦労したのはノイズ検出の精度をどこまで上げられるかという点です。精度向上のためには実際の映像で検証しなければなりません。実際の映像での評価・検証は映像制作会社の方にご協力を頂きました。精度向上にはかなりの時間が掛かりましたが、やっと製品化に漕ぎ着けました。

幕張メッセで11月17日から19日まで開催するInterBEE2010に出展します。InterBEEに来られる方は弊社ブース(#7204)でご覧頂けます。ご購入をご検討されるお客様にはデモ機の貸出しも行っています。

今回取材した製品は、VTRから出力されるHD-SDI信号を入力して映像のノイズを検出する装置だが、HD-SDI出力が装備されたVTRはいくつか市場に存在する。市場で広く普及しているVTRでどの程度のノイズが検出できるかがこの製品のカギとなる。その点については、実際に製品を評価した映像制作会社に話を聞こうと思う。