黎明期からデジタルシネマを見つめるソニー4Kの考え方
デジタルシネマという言葉がまだ一般化する以前からビデオの映画利用は始まっていた。95年に発売されたDCR-VX1000で98年には「ラブ&ポップ」という劇場公開映画が製作され、99年にはHDW-F900が「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」で使われ、「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」により本格的な運用が始まることになる。このあたりからソニー自身も映画製作を意識するようになり、シネアルタ(CineAlta)という名称を使い始めている。
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ソニーのカメラは早くから映画でも利用されており、ソニーが意識するしないにかかわらず事実上のリーディングカンパニーといえるだろう。
今回、ソニー株式会社 プロフェッショナル・ソリューション事業本部 コンテンツクリエーション・ソリューション事業部 商品企画部担当部長、山下正弘氏(左写真)にお話をお伺いした。
–ソニーは早い時期から映画製作を意識した製品やHD以前からPAL方式による映画上映システムなどを手掛けていますが、ソニーとしての4Kの今後の取り組みについて教えてください。
山下氏:すでに、デジタルシネマではF65を中心にした撮影システムやワークフローの確立、4Kプロジェクターなどキーになる製品の発売をしていますが、ユーザーのみなさんの要望をもとに周辺機材を始め更に充実させていきたいと思います。
また、4Kのフィールドをどう活かすかは今後の大きな課題ですが、単に画素が4倍ということでなくそれによる新たな映像制作の世界を広げていきたいと考えています。
解像度が大きい事による没入感や臨場感を利用した映像表現はもちろんですが、画面の一部を切り出すというような新たな利用により、今までにない大きな世界を展開していきたいですね。
たとえば、4KによるHDの制作などで、NABではその一端をご紹介させていただきました。
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新開発のロータリーシャッターによりCMOS特有の歪みを低減したF65RS。24p時には5倍のハイスピード撮影が可能で、CMや番組などの30pの制作では4倍のハイスピード撮影ができる
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幅広い色再現性による鮮やかで深みのある映像投影が可能な4K対応デジタルシネマプロジェクターSRX-T420
–ビデオやスチル、デジタルシネマの業界で4Kをキーワードに様々な製品が発売されていますが、こうした業界を乗り越える新たな制作スタイルの製品開発というのは考えられるのではないでしょうか。
山下氏:映画やビデオ、スチルなど文化の違いを超えた新たな使い方の提案が行えるのが理想とは思います。まずはF65により色々なお客様から提言をいただき今後につなげていく方向です。
映画系では光学VFやモニタリングの環境などありますが、ビデオの業界では撮影現場やワークフローなど映画とは異なる文化をもっており、別なアプローチが必要になるでしょうし、スチルもまた違った撮影スタイルとなっています。現状ではこうした違いを一気に超えるのは難しいと思います。レンズのオペレーション一つとっても映画とビデオでは違いますし、パンの速度なども映画とビデオでは視聴する画面の大きさからもその速度なども作品や現場によって異なります。こうしたことを踏まえて周辺機器を含めて考えていきたいところですね。
共通に使えるところ、あるいはそれぞれで特化しなくてはならないところがあるので、そのあたりを見極めていくことが重要になるように思います。映画系では一連の製品を整えてきました。ビデオをこれからどうして行くのかが課題といえますね。アプリーケーションの広がりに合わせたソリューションの展開を考えていく時期と言えますね。
–ビデオは元々電気的なもので、スチルや映画はフィルムや現像といった化学処理が基本となっていますが、根本的に異なる原理によるものがデジタル化により一つになろうとしている時期と思います。そのなかで、特に問題となるのがダイナミックレンジだと思いますが。
山下氏:フィルムにしろビデオにしろ程度の差こそあれ記録できるダイナミックレンジには限りがあり、そのなかに収めるべく、フィルムであればフィルターワークでビデオであれば古くはニー、最近ではフィルムガンマなどで解決してきました。2K4KになることでRAWというビデオにはなかった概念がでてきて、これにより自由度が広がってきたといえます。
RAWのダイナミックレンジは撮影時の現場でも有利な使い方が可能ですが、ひとつの表現手段として映像表現の幅を広げてくれます。そこをどうアピールしていくか、それによって4KのRAWの世界をどう広げて行ったらいいのかということになると思います。
また、フィルムではフィルムごとの固有の色再現がありましたが、F65でもセンサーやフィルターなど色再現を広げる工夫がされています。このダイナミックレンジや色再現、画素パターンなどセンサーの性能に依存するRAWをどう活かすか、こうしたカメラを特徴付ける要素を表現手段として制作に生かせる方向へもっていきたいですね。
F65がまだ市場に出たばかりなので、これを基軸に24コマや60系など、フィルムやビデオの世界でどういったカメラが求められていくのかを見極めて、共通したところや特化しなくてはならないところのほか、ビデオでは4Kをどのように利用していくかも考えていかなくてはならないでしょう。
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F65RSは14ストップのダイナミックレンジをもち、色再現性も広色域を実現。カラーコレクションの自由度をさらに広げ、極めてフィルムに近いコントラストと色再現性を得ることが出来る
–4Kの普及にあたって、CSの回線とシネコンを結んで4K上映したり、スポーツバーのようなものを仮設して4Kイベントを催したり、今後の普及に向けた展開について教えてください。
山下氏:4Kのライブ上映もそうですし、4Kの中から必要なところを切り出してデータとしてその部分だけを携帯などで見るとか4Kのシステムを利用した様々なアプリケーションが考えられますが、機材がある程度そろったところで進めていきたいですね。そうした中で色々な使用方法を提案させていただき、みなさんとともに作っていきたいと思っています。
NABやInterBEEのほか展示会やセミナーなどでは4Kのアプリケーション拡大についてすでに様々なアプローチを行っています。今後どのような形式にするかは未定ですが、一般の方たちに4K映像の素晴らしさをわかっていただくような仕掛けは考えていますし、なるべく早い内に実現したいと思います。
デジタルシネマだけでなく今後の普及を考えると従来型ではなく、オープンでユーザー同士も交流できるような場が必要なのかも知れませんね。
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ソニーはNABなどの展示会のほか、IR情報でも4Kの特集を組むなど全社的に4Kを推進していく方向だ
txt:稲田出 構成:編集部
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