10周年を迎える九州放送機器展(QBEE)の進化を見た!

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7月初旬の博多といえば、770年余りの歴史を誇る博多祇園山笠の期間中で、街のあちこちに飾り山が飾られるなどお祭りムード。我々映像音響業界の人間に於いても、7月の博多には山笠の熱気に負けない映像音響機器の一大イベントがある。それが九州最大の放送機器展「九州放送機器展」、通称QBEEだ。去る7月4日、5日の両日、博多駅から程近い福岡市のベイサイドエリアにある福岡国際センターにて、九州放送機器展2013が開催された。

九州放送機器展は2004年から毎年開催され、今年で10回目を迎えた。17社の出展から始まった九州放送機器展も今年は過去最多の119社が出展し、来場者数も開催2日間で2275名と過去最高を記録するなど年々規模が大きくなっている。今や九州だけでなく、全国から注目される国内屈指の放送機器展に成長している。今回はそんな注目のQBEEを詳細にレポートしようと思う。

txt: 黒田伴比古 構成:編集部

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開会式では10回目を記念し、第1回から出展している17社からアイ・ディー・エクス、池上通信機、エヌジーシー、オタリテック、九州電子パーツ、信誠商事、パナソニックシステムネットワークス、朋栄、報映産業、三友の10社の代表者らによってテープカットが行われた。

華々しいセレモニーで幕を開けた九州放送機器展2013。今年は例年と違ったブース配置がされており、会場の1階部分に映像系、2階部分に音響系と5000平方メートルあまりの展示スペースを有する福岡国際センターいっぱいに各社から国内初、九州初の展示が行われた。

ブラックマジックデザイン NAB発表商品と4Kシステムを提案

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NAB発表の衝撃製品、Blackmagic Pocket Cinema Cameraを九州初展示。様々なm4/3、4/3レンズが用意され、実際に装着することもできた。あいにく未だテスト機のため通電することはできるもののSDカードへの記録はできない状態での展示だった。気になるm4/3レンズ使用時の画角だが、筆者が会場で見た感覚では、オリンパスの17mmパンケーキレンズを装着した状態で、35mm換算の50mm~60mmあたりの画角といった印象だった。一方、期待のスーパー35mmセンサーを搭載した4KデジタルシネマカメラのBlackmagic Production Camera 4Kについては、残念ながら展示はなかった。

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ちなみにBlackmagic Pocket Cinema Cameraだが、発売時期は今月末~来月ごろの予定だそうだ。しかし、すでに大量のオーダーが入っているそうで、Blackmagic Cinema Cameraのときと同様、発売当初は入手困難になることは必至だ。出荷数量も未定。

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そのほかには、同じくNABで発表された世界初の4KスイッチャーATEM Production Studio 4Kや、4Kの収録・再生が可能なHyperDeck Studio Pro、波形表示機能を有する2連モニターSmartScope DuoなどNAB発表の新製品で4K関連製品を中心とした展示を前面に押し出していた。

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パナソニック AVC-ULTRAが作る新たな制作フローを展示

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パナソニックはAVC-ULTRAコーデックファミリーに対応した製品を前面に展示。AVC-ULTRAは単一の追加コーデックではなく、これまでのAVC-Intraを包括しつつ、さらにIP伝送用途に利用できるAVC-LongGやAVC-Proxy、高画質制作用途のAVC-Intra Class 4:4:4など様々な用途に応じた選択を可能にしたコーデック群の総称だ。

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記録媒体にはこれまでのP2カードに加え、SDカードサイズのmicroP2カードを開発。SDカードUHS-II規格に準拠したカードで、AVC-Intra200コーデックまでの記録に対応している。

そのAVC-ULTRAコーデック群に対応し、microP2カードスロットを有した放送用カメラレコーダーとしてNABでモックアップ展示されていたAJ-PX5000Gが初展示。同社の放送用カメラレコーダーでは初となるCCDではなく新開発の2/3型220万画素3MOSセンサーを採用、AVC-ULTRAコーデック群のうち、これまでのAVC-Intra100のほか、AVC-LongG50/25での記録が可能。

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同じくAVC-ULTRAコーデック群、microP2カードに対応したレコーダー、AJ-PD500も実機が初展示された。AVCHD記録のSDカード再生にもオプション対応しており、中継車や局内に配備することで、民生カメラやハンディーカメラのAVCHD素材の即時再生が可能になる。

このように制作向け高画質コーデックから、IP伝送向けコーデックを多岐に選択できることで、ネットワークを利用した映像伝送ソリューションを提案している。

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カメラレコーダーにUSBタイプのLTEモデムを接続すれば、1クリップRECのたびにProxyファイルをクラウドサーバーに自動転送する。サーバー側のビューワーソフトウェアには逐次Proxyファイルが表示され、ソフトウェア内で視聴、プレイリスト編集ができる。プレイリスト編集の結果は対応NLEにエクスポートができるといったものだ。

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たとえば報道取材現場なら、撮影しながら局舎にProxyファイルが転送されるため、局舎ではProxyファイルを元に編集を進め、カメラマンが帰社した段階で、Proxyファイルを撮影映像と自動的に挿げ替えOAできるという速報性に優れた運用が可能になる。

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このほか、ENG取材の定番RAMSAのワイヤレスマイクロホンの展示では、総務省の周波数再編プランに対応した1.2GHz帯A型デジタルワイヤレスマイクロホンを参考展示。現在音質面などの調整を行っているという。

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また、HD-SDI、HDMI入力に対応したブルーレイレコーダーDMR-T4000Rは、ブルーレイディスクへの直接記録のほか、内蔵HDDとブルーレイディスクの同時記録も可能。SDカードにMP4(720p)形式の動画ファイルを書き出すこともできる。医療現場のオペ収録や、放送用途では局内同録などに活用できる。

ソニー NAB発表製品の実機が続々登場

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ソニーブースでは、XDCAMを核にした取材~編集~OA~アーカイブまでのトータルソリューションのほか、NABで発表された製品のほか、ひっそり驚くべきものが置かれていた。

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カメラコーナーには、先月発表したばかりのXDCAMハンディカムコーダーPMW-300が初展示。ショーケースに納められており、あいにく手にとって見ることはできなかった。PMW-300には、PMW-300K2という16倍レンズが付属するキットも発売される。この16倍レンズだがPMW-320Kに付属していたレンズと同じものだそうだ。ただし、PMW-320は1/2バヨネットマウントだったため、この16倍レンズはPMW-300に付属する際はEXマウント変換アダプタが付属するそうだ。そのほかカメラコーナーには、NABで発表されたショルダーカムコーダーPMW-400が展示され人気を博していた。

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一方大判センサーのNXCAMカムコーダーNEX-FS700JはRAWレコーダーAXS-R5とともに展示。ブライダルに人気のNEX-EA50JHはこの九州放送機器展と期を同じくして公開されたファームウェアVer.2.0を適用して展示。要望の多かったというフラッシュメモリーユニットHXR-FMU128を装着してメモリーカードと併録する際、録画ボタンとハンドル録画ボタンにそれぞれの録画を割り当てることが可能になった。これにより、フラッシュメモリーユニットは撮りっぱなし、メモリーカードは止め撮りといったことが可能になった。

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NEX-FS700JやNEX-EA50JHは、レンズマウントを変換してソニーのEマウントレンズのほか他社のレンズを使用することで表現の幅を広げられるメリットがある。そのようなニーズも多いからか、展示ブースにはMETABONES社製の縮光レンズ内蔵レンズマウントアダプターSPEED BOOSTERが展示されていたのだが、そこに見慣れぬものを見つけた。NF-Eと書かれたSPEED BOOSTERだ。実はこの日リリースされたばかりのニコンGレンズをEマウントに装着できる新製品が何気なくカメラコーナーに置かれていたのだ。これは無視できないので取り上げさせていただく。ニコンのレンズのうち、絞りリングのないレンズは絞り調整がレンズマウント部にある爪の位置調整でコントロールしている。

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このSPEED BOOSTERは絞りリングを持っており、先のようなレンズを装着した際は、レンズマウント部の爪を絞りリングに応じて動かすようになっており、手動で絞り調整ができるのだ。

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スイッチャー関連では、こちらもNABで発表されていたライブコンテンツプロデューサー”Anycast Touch” AWS-750が九州に初お目見えした。画面タッチオペレーションでカメラチェンジ、スーパー送出、オーディオミキシングができ、本体内部でXDCAM 35Mbpsもしくはフラッシュムービーでの収録も可能になっている。当然収録ファイルをUSBで外付けディスクに書き出すこともできる。驚いたのが強力なDSK機能だ。静止画ファイルとして、全画面のtitleを2系統、サイズ制限のあるLOGOを2系統、さらにPiPまでもを同時に送出可能な点だ。内蔵のテロップ作成機能も搭載されており、ワンマンオペレートでネット配信する場合や映像技術の知識のないスタッフでも簡単な送出ができるため、放送用途だけでなく文教、一般企業のニーズにもマッチしたといえる製品だろう。

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そのほかCineAltaカメラPMW-F55や2.4GHz帯デジタルワイヤレスパッケージDWZシリーズの新製品として管楽器向けパッケージを展示したほか、XDCAM Stationをマスター送出で使用する際のコントロールパネルの参考出品など盛りだくさんな出展内容となっていた。

朋栄 地方局のニーズにこたえる部門別~統合ファイルベースソリューション

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Media Conciergeとして収録~編集~OA~アーカイブまでのトータルファイルベースソリューションを展開する朋栄では、これらをトータルソリューションとしての提案だけでなく、予算に応じた個別導入に対応でき、部門ごとに個別のファイルベースソリューションとして実現できる点をアピール。個別展示を行っていた。

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まず、回線収録~編集~送出までのソリューションとして、同社のMXFクリップサーバMBP-120SXにインジェストオプションMCI-120を使用しベースバンドインジェストを行い、共有サーバーEditShare Energyを通じてノンリニア編集機にて編集、編集済みクリップを送出機としたMBP-120SXから送出するまでのワンパッケージを展示。今回Adobe Premiere Pro CCと先のシステムを連携させ追いかけ編集を実現した。編集システムの汎用性によるコストダウンと、小規模なハードウェア構成でファイルベース送出を低価格で導入できる。

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続いて放送後のアーカイブ、リトリーブ手段として、同社のLTO-5ビデオアーカイブレコーダLTR-100HSのほか、LTOサーバーLTS-50に素材管理オプションLTS-MAMを用いたコンテンツ管理ソリューションを展示。

先のようなファイルベース送出の環境がない場合にも、ベースバンドの放送素材をLTR-100HSにてLTOにファイル化。LTOサーバーLTS-50に素材管理オプションLTS-MAMを導入することで、複数のLTO素材のメタデータやProxyデータをLTO-50内のHDDにデータベース化しLTOテープを装填していない状態でも、検索することが可能になる。こちらも大規模なデータベースシステムなどを構築せずとも、LTO-50とLTS-MAMのみで簡易アーカイブが構築できる。

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そのほか単体製品として、10系統のフレームシンクロナイザを1Uユニットに収めたFA-1010やフレームシンクロナイザのほか、アップコン/ダウンコン、カラーコレクト機能など幅広い機能をもつデュアルシグナルプロセッサFA-9520も展示。

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テロップシステムとして定評のある3D-VWS TriにPremiere Proとの連携システムやTwitterのツイートを自動禁止ワードでふるい分けするだけでなく、その後段階としてリストから送出OK、NGを選択してOKのものだけ送出することができるオプションや、既存スタジオのカメラにセンサーとターンキーシステムの導入だけリアルタイムCGが送出できるSmart Direct RCGシステムなどが展示された。

グラスバレー プレス発表前の製品が登場

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収録、編集、送出までのソリューションを展開するグラスバレー。ディスクレコーダーのT2、共有サーバーK2-SANとアセットマネジメントシステムSTRATUS、編集ソフトウェアEDIUSと一貫した自社製品で構築できるメリットを前面に時系列に並べたブースを展開していた。

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その一連の展示のなかに何気なく置かれたEDIUS。よく見るとEDIUS Pro 7と書かれている。公式プレス発表は7月8日のため、九州放送機器展開催の段階ではリリースもされていないはずだが、いわゆるスニークプレビュー的なノリである。いよいよ64bitネイティブのアプリケーションとなったEDIUS Pro 7では、使用できるメモリ空間が増えることで、バッファも増える。また、分散処理によりデコード処理を複数同時処理できるため従来のEDIUS Pro 6.5に比べ最大7倍の高速処理が可能になった。またXAVCやAVC-Ultraコーデックに対応し、本格的に4K編集が可能になっている。

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そのほか最新CPUへの最適化、拡張命令への対応など、随所に高速化が図られたバージョンアップだといえる。操作面においては大きな変更は見られないが、エフェクトに新しくガウシアンブラーを搭載。高品位なボガシができるようになった。報道用途からするとうれしい機能追加だ。このガウシアンブラー、X軸、Y軸で効果レベルを変更できるので、これまでEDIUSではできなかったテロップの文字方向のみのボカシフェードができるようになる。発売予定は8月下旬の予定だ。

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編集関連の展示が目立つグラスバレーブースの一角になんとも近未来的なデザインをしたスイッチャーをみつけた。オールインワンライブスイッチャーGV DIRECTORという製品だ。ボタンとTバーという従来のスイッチャーの使い方とともに、タッチパネル上でコントロールが可能になっている。また動画ファイルの読み込み、送出にも対応しており、カメラ送出順や動画ファイルをシーン化し、ワンボタンでテイクしていくとができる。

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またトランジションパターンもコンポーザーソフトウェアで作りこみが可能となっており、オリジナリティのあるトランジションエフェクトが可能になっている。

キヤノン デジタル一眼~旋回カメラまで幅広く展示

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キヤノンブースは被写体を囲むようにCINEMA EOS SYSTEMの各機を展示。EOS-1D CからC100、C300、C500と展示しており、C300にはAJAのKi Pro Miniを、C500にはKi Pro Quadを装着して4K収録ソリューションの展示を行っていた。

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Ki Pro製品の担当曰く、C500だから4KだからKi Pro Quadではなく、C300のようにHD収録でもProPes4:4:4で記録できるメリットがある。HD制作環境でも積極的にKi Pro Quadを選択肢としてほしいとのことだ。

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また、小型カメラには先月発売が開始されたXA25が展示され、デジタル一眼カメラからも先日発表されたばかりのEOS 70Dが展示された。どちらも実機に触れるとあって、訪れる来場者が絶えることがなかった。

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放送用途の新製品として、河川監視や情報カメラとして用いられることの多いリモート旋回カメラの2製品を展示していた。ハンディビデオカメラXF305のカメラ部をベースに設計されたBU-42Hと小型軽量の専用設計XU-81だ。

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BU-42Hは、既存のパンティルトシステムU-4プロトコル対応のため、コントローラーなど既存設備を利用した容易な設置が可能となっている。また、XU-81は常設の固定設置だけでなく、イベントの河畔設置などに対応できるよう持ち運びにも対応している。

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まだまだ全貌を伝えきれない九州放送機器展。ここまで新製品ラッシュの年も珍しいというのが実感だ。引き続き次回も九州放送機器展の魅力を余すところなく伝えていく。メーカーブースだけが見所ではない九州放送機器展、その魅力とは。


[QBEE 2013] Vol.02