10月1日より千葉県の幕張メッセで、ITとエレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2013」が始まった。CEATECの魅力は、ソニーやパナソニックなどが「IFA 2013」で発表した新製品が国内で初展示されることや、CEATECの期間に合わせた多数の製品が初公開されることであろう。今年のCEATECの注目は4K関連の製品の充実だ。2年前のCEATECでソニーが4Kプロジェクターを発表して家庭向け4K製品がスタートし、昨年のCEATEC 2012では各社から4K対応の液晶テレビが続々と登場、そして今年のCEATECは4K対応の民生用ビデオカメラやタブレットなど4K対応製品が増えてきている。そんな4Kでにぎわっている展示会場の様子をさっそく紹介しよう。

民生用の4K対応カメラがついに登場

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民生用4Kカムコーダー「FDR-AX1」。4K対応液晶テレビに実機で撮った映像を再生して一緒に展示していた

今年のCEATECの注目を挙げるならば、ソニー初の民生用の4K対応カメラだ。4Kビデオカメラというと映画の撮影に使われるなど業務用というイメージの製品だったが、4Kで家族を撮影してリビングルームで楽しむという時代がそこまできているのだ。

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FDR-AX1の全景。民生用カメラとして見ると大き目のボディといえるだろう

ソニーブースの注目の展示は、9月5日に発表したソニー初の民生用4Kカムコーダー「FDR-AX1」だ。FDR-AX1は11月8日発売予定で価格はオープンプライス、ソニーストアでの販売価格は42万円だ。対応する4KはフルHDの4倍の解像度を持つQFHD(3840×2160)のほうで、4Kの60pの映像を撮影ができるのが特徴だ。業務用に開発されたXAVCフォーマットの民生用4K/HD記録フォーマット「XAVC S」を採用し、4K映像でありながら長時間撮影が可能というのも特徴だ。

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XLR端子を2基搭載しているのも特徴だ

メモリーカードは「XQDカード」を採用しており、64GBのXQDメモリーカードを使った場合は最大約125分の長時間記録(4K 30p/24p、60Mbps)が可能だ。ちなみに、ソニー純正の64GBのXQDメモリーカード「QD-N64」は、ソニーストアでは29,800円だ。また、XLR端子を搭載しているのも特徴で、高性能マイクを使用した音質にもこだわった映像を撮影が可能だ。

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背面にはビデオ出力端子のほかにHDMI出力端子を搭載。右側にはアップグレード専用のSDスロット。ふたが閉まっている状態で中が見えないが、左側にはXQDスロットを2基搭載している。SD/MSカードスロットも搭載しているが、AVCHD専用で2014年夏ごろ対応予定

撮った映像は、4K対応液晶テレビであればHDMIケーブル1本で30pと24pを楽しむことが可能だ。ソニーの4K対応ブラビアであれば、独自方式により4K/60pの映像をHDMIケーブル1本で出力できる。もし4Kテレビがないという場合は、メニューのHDMI出力設定を「1920×1080」に変更することで4K映像をカメラ側でフルHDに変換して出力することが可能だ。PCで楽しむ場合は、画像管理ソフトウェア「PlayMemories Home」を使用して、パソコンとAX1をUSBケーブルで直接接続するか、PCに動画を取り込んで楽しむことができる。この場合のPCの推奨スペックはCore i7 Quad Core以上、Intel HD Graphics 4000以上が必要となっている。

気になるのは4Kの編集環境だが、編集ソフトに関してはXAVC S対応編集用ソフト「VEGAS PRO 12 Edit」の無料クーポンが同梱される。各編集ソフトのXAVC Sへの対応は、EDIUS Pro 7がカムコーダー発売後に対応することを表明している。そのほかの編集ソフトの動向も気になるところだ。

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4Kカムコーダの試作機。レンズから入力された映像を4Kで出力して、4Kモニターに表示するという形で展示

パナソニックブースでは、コンパクトな4Kカムコーダ試作機が展示されていた。ガラスケースに入っていた状態で展示が行われていて、カメラの前のジオラマを撮影して4Kモニターに出力をしていた。ブースのパネルには、コンパクトハンドヘルドであることや4096×2160や3840×2160に対応すること、1本のHDMIケーブルによる4K映像出力に対応と明記されているぐらいだった。コーデックや記録メディアなどについては、スタッフによるとまだ未定とのことだ。

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12月に発売する31インチの「BT-4LH310」を使った「31型モニターによる4K編集コンテンツの編集」のコーナー

パナソニックブース内に、「31型モニターによる4K編集」がテーマの展示や業務用4Kカメラの展示のコーナーも設けられていた。4K編集のコーナーは12月に発売予定の31型の「BT-4LH310」が展示されていた。

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BT-4LH310は、4096×2160の解像度とDCI(P3)色域の表示性能を実現しているのが特徴だ。4K映像の入力は、3G-SDI(BNC)×4本、DisplayPort (1.1a)×2本または1本、HDMI(1.4b)×2本または1本の3種類のインターフェイスを備えている


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PLマウントモジュール搭載の4K業務用カメラ「4K VARICAM」が参考出展されていた

東芝が50インチと40インチの4Kモデルを参考出品

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50インチと40インチの4Kモデルで確認しながらDaVinci Resolveで作業するというデモが行われていた。奥にはREDのカメラも展示されていた

東芝のブースでは、50インチと40インチの4Kモデルが参考展示されていた。東芝の4K対応液晶テレビの現行モデルは58インチ、65インチ、84インチのラインナップで、そこに50インチと40インチが追加されるとなると、「4K液晶テレビの廉価版では?」と思われるだろう。しかし、ブースにはDaVinci ResolveやREDのカメラが持ち込まれており、本職のオペレータの方がREDのRAWの素材を使ってカラーグレーディングの作業を行っていて、そこで使うモニターとしてのデモが行われていた。参考出品の50インチと40インチの4Kモデルはあくまでも民生用なのだが、「プロの方にも使っていただけるようなものを目指している。映像業界でも市場を見込めるかもしれない」ということで、グレーディングの環境でデモを行っているとのこと。というのも、東芝の4K液晶テレビは、ポスプロのスタジオやカメラメーカーから非常に引き合いが強かったからとのことだ。

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参考出品されていた50インチと40インチの4Kモデル

映像のパラメーターの調整をユーザーが非常に細かいところまで設定が可能で、プロの人たちがきっちり追い込んで使えるということでかなり評価を頂いたとのこと。今回の50インチと40インチの4Kモデルは、マスターモニターとして実際スタジオで使っていただくにはちょうどいいサイズということもあって、民生用でありながら映像制作の環境も視野に入れて反応を探っている最中とのことだ。気になるのは価格だが、現行の58インチよりも価格が安くなるのか? そのあたりを聞いてみたところ、「まだコメントできる状態になっていない。価格はまだ未発表です」という返答だった。

三菱やパナソニックが4K対応新技術で画質をアピール

■三菱
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ついに発表された三菱の液晶テレビ「4K LASERVUE」

4K対応液晶テレビ関連の展示で一番注目だったのは、三菱の液晶テレビ「4K LASERVUE」だ。三菱の液晶テレビといえば、レーザーを用いたレーザーバックライト液晶テレビ「REAL LASERVUE」が有名だ。赤色レーザーに青色系のシアンLEDと緑色系のシアンLEDを使うことによって、白色LEDバックライト光源の液晶テレビと比べて色再現範囲が広くて鮮やかな色彩を実現するという技術だ。65インチでありながらベゼルが6mmであったりHDMIの60p入力に対応しているところなども注目だろう。デモは60pの入力で行われていた。

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「4K LASERVUE」はベゼルの幅が6mmしかないというのも特徴だ

■パナソニック
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ブースの中央の中央に設けられていた55型4K有機ELパネルのシアター。長い行列ができていた

パナソニックのブースの中央に56インチの4K有機ELパネルの視聴環境が設けられていた。中は暗室になっていて、4K有機ELパネルのクオリティをじっくり体験できるようになっていた。有機EL材料を印刷により塗布し、発光層(EL層)を形成するRGBオール印刷方式という技術を採用して、高精細、高コントラスト、優れた色再現性を実現している。パネルの重量は10キロ強で、本体の薄さは薄いところで8.9mmしかないところも注目点だ。

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シアターの中の4K有機ELパネル

■ソニー
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ソニーブースの中央に展示されていた4K有機ELパネルのデモ

ソニーもブースの中央には、56インチの4K有機ELパネルが展示されていた。今年1月のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)の時に発表したものだが、国内では初公開だ。輝度感や精細感に優れているのが特徴だろう。ソニーは、2007年12月1日に発売した世界初の11インチの有機ELテレビ「XEL-1」のときから蒸着方式の有機ELを手がけてきて、今回展示の56インチ 4Kパネルでも変わらず同じ方式で実現している。

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4K有機ELパネルは独特の立体感がある。周囲からは「3D映像をみているみたい」という感想も聞かれた

ここのあたりが先に紹介したパナソニックの有機ELと違うところだ。ちなみ、パネルの隣にはF65RSが置いてあった。撮影から編集のワークフロー、送出、表示まで一貫したシステムを構築できていることもソニーの強みであることをアピールしていた。

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8K CMOSイメージセンサーを搭載したCineAltaのF65RSも展示されていた

4K液晶テレビの新製品は60p入力やDisplayPort.対応をアピール

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65インチの4K対応液晶テレビ「スマートビエラWT600」の展示。60p対応が特徴で、30pと60pの違いを映像でアピール

ソニーやパナソニックは、4K対応テレビの新製品を複数展示していた。そんな中で面白い展示を行っていたのはパナソニックだ。65インチの4K対応液晶テレビ「スマートビエラWT600」の特徴は、HDMI 2.0に早速対応しており、4K60p映像信号入力対応していることだ。ブースのデモでは60P映像と30P映像で比較ができる展示を行っていたり、DisplayPort.1.2aを使ってPCのゲームが4K60pで楽しめることをアピールしていた。

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こちらは4Kのレースゲームのデモ。操縦席を再現した「Playseat」を使って4K対応液晶テレビで楽しめるようになっていた

4K対応の液晶タブレットも登場

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パナソニックのブースに展示されていた「TOUGHPAD 4K」。4Kモニターを搭載しながら世界最軽量、最薄のタブレットPCを実現しているのが特徴だ

今年のCEATECは、4K対応製品の幅が広がっているのが見どころだろう。パナソニックのブースでは自社開発による20インチの4K IPSα液晶パネルを搭載したWindows 8.1 Pro搭載のPC「TOUGHPAD 4K」が展示されていた。Core i5-3437U vPro 1.90GHzで、質量は約2.35kg。バッテリーを搭載していて、野外で使用することが可能だ。

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TOUGHPAD 4Kに額縁をつけてデモが行われていた。絵のようで非常にリアルだ

ブースでは絵画を表示や、鏡の前で自分自身をメイクシミュレーションしているようなコスメティックシミュレーター、電子カルテや複数の医療用画像を同一画面に表示したりする医療用ワークステーションとして使用する例が紹介されていた。絵画の絵を表示したデモは、本当の油絵ではないか? と思うほどの立体感が伝わってくる感じだった。質感まで伝わるぐらいの感覚で絵を楽しむことができるといった感じだった。

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コスメティックシミュレーターのデモ。タブレットの前に立つと顔を認識して、左右に化粧をした際のシミュレーション結果を表示

「コスメティックシミュレーター」のデモは化粧品業界のソリューションで、まずモニターの前に立った瞬間に顔を認識して、お勧めのメイクパターンなどを瞬時に体験することができる。こちらで気に入っていただければ静止画シミュレーターに移行して、より精細なシミュレーターで化粧を試すことが可能というものだ。プリセットのおすすめメイクだったり、今まで使ったことのない色を試すといった操作をタッチパネルで操作することが可能になっていたり、4K解像度によってリアルに化粧の結果を確認することが可能になっていた。

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電子カルテや医療画像を同一画面に表示したり拡大チェックができる医療用ワークステーションとしてもデモが行われていた

アストロデザインは8Kのスーパーハイビジョンカメラを展示

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アストロデザインは今年もコンテンツエクスペリアゾーンのほうにも出展していた

CEATECには毎年超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)の「コンテンツエクスペリアゾーン」というゾーンが設けられていて、今年もアストロデザインと計測技術研究所が展示を行っていた。

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8Kに対応した単板式ハイビジョンカメラ「AH-4800」。NHKエンジニアリングシステムの3300万画素のイメージセンサーをベースに開発したフルスペック8Kカメラヘッドだ

アストロデザインは、スタッフが「うちはそろそろ4Kの次に行こうと思っています」といって、まず最初に紹介してくれたのが8Kに対応のPLマウントを採用した単板式スーパーハイビジョンカメラ「AH-4800」だ。現在開発中のカメラで、CEATECに展示されていたのはモックの状態だが、社内では動いていてInterBEEには実機を出せるのではとのことだ。そのほかの展示商品は4Kの非圧縮レコーダー「HR-7510」だ。

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4K非圧縮SSDレコーダー「HR-7510」。キヤノンのEOS C500のRAW出力を非圧縮での収録に対応するのが特徴のレコーダーだ

CEATECでは各テレビメーカーが4Kのコンテンツを展示しているが、アストロデザインのこのレコーダーを使って収録されたコンテンツもいろいろあるだろう、とのことだ。小型なのでキヤノンのEOS C500の後ろにつけることも可能というのが特徴だ。

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4K 32インチの液晶モニター「DM-3432」。32インチなので撮影現場や編集業務に最適であろう

モニターは10ビット液晶パネルを採用した4K対応で60インチの「DM-3412」が展示されていた。HR-7510から出力された4Kの映像を表示していて、非常にクオリティが高かった。

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独自の超解像技術を用いて映像を復元する超解像ユニット「FE-B1」。右のモニターがハイビジョンの映像で、その映像を左の4Kモニターにアップコンバートして映像の品質を確認できるというデモが行われた

計測技術研究所は、4Kテレビに搭載されている超解像エンジンの超解像技術をハードウェアユニットで実現した「FE-B1」のデモを行っていた。FE-B1は、地上波デジタルのハイビジョン放送に対して4Kにアップコンバートするというユニットで、家電メーカーの4K対応液晶テレビの中にこういった機能が搭載されているが、それを外に出してきたイメージの製品だ。ハイビジョンの映像はFE超解像がオフの場合、4Kモニターに映し出されるとぼやけて見える。FE超解像がオンになるとシャープネスがきいたような鮮明な映像になるのがわかる。また、パラメーター設定できるようになっていて、ユーザー側で強度を決めることも可能というのも特徴だ。デモ展示では効果がわかりやすいように、シャープネスが強めに設定されていた。


[CEATEC JAPAN 2013] Vol.02