さらに続く注目のプロダクトを会場から

■SAMSUNG | 話題のオーバルTV
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CESで発表した、話題の凹面画面のオーバルTVコーナーを全面に出して、6枚のパネル全てをオーバルTVで展示。そして4KUHD用の衛星放送用STBを技術公開。HEVCフォーマットによる配信でSTBで衛星電波をデコード、解像度はフルHDの4倍で4K/60p 10bitをサポートする。韓国では2015年に実装開始を予定しているという。会場中にもこのサムスンのオーバルTVを置く企業がいくつか見られた。

■Panasoinc | 4KLTOアーカイブ
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パナソニックが技術展示として紹介していた次世代アーカイブとしてのLTOによる4Kアーカイブシステム。独自のソフト「Pro Archive Management Software」でコントロールするもので、まだ技術展示の段階だが、要は4Kデジタル素材をProRes4Kに変換してLTOへアーカイブ化するソフトウエアである。同時にプロキシ素材(現状ではMP4等)も生成、閲覧したい場合はプロキシ素材で確認できるという。

展示はまだプロトタイプだが、現状のLTO6のデータスピードが160MB/sであること、さらにLTO7で315MB/s、LTO8では472MB/sというロードマップも示されてはいるものの、今後も書き込み速度の進化に比例して4K、そして8Kというデータ容量の問題は継続して避けては通れない。またLTOは2世代問題(2世代以上前のバージョンでは読み書き不可)もあり、この分野においては今後の実用的かつエポックメイキングな発明が望まれるところだ。

■Crosscast | ハイスピードカメラ「X-FUSION」
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Crosscast社は、ドイツのハイスピード撮影中心に、これまで生中継、ライブイベントなどでその実績を積み重ねて来た経験を持つ。放送ベースを意識した同社のハイスピードカメラ「X-FUSION」はグローバルシャッター内蔵の2/3インチCMOS搭載、フルHDサイズ/秒間350fpsを実現するHSカメラ。特徴的なのは、B4マウント標準装備で上部にVマウントバッテリーが直接装着可能。

バックのコネクター部には、LIVE、SLOMOのそれぞれ独立したHD-SDI/OUTが設けられており、またカメラコントロール用にRS485のコネクターから専用のX FUSIONオペレーターコントロールパネル「The OCP」もしくX FUSIONハイスピードコントロールパネル「The RCP」を使って約1km先からのコントロールも可能。

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X-CAM 350

CマウントもしくはミニPLマウントを配した小型のカメラヘッドと独立したCCUから80m延長可能、最大340fpsのHS撮影が可能な「X-CAM 350」もある。

■Libec | ALLEX、IBCに初登場
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発売直後の注目の新製品、ALLEXがIBCにも初登場。ブースもこれまでのシンプルなイメージからALLEXに合わせたアグレッシブで躍動感のあるブースデザインに変更。ALLEXは三脚とスライダーが組み合わせられるという小型軽量な万能ツールとして、やはりインディペンデント系、DSLRムービー系のユーザーには大好評のようだ。特にスライダー部の絶妙な粘りは、各方面のプロからも高い評価を受けているという。さらにラインナップの充実が期待される。

■Transvideo&Aaton Digital | ユニークなデザインCantar X3
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フィルムカメラでも有名なAaton。実は2013年6月にAatonからAaton Digitalと社名変更し、今回は同じフランスのミニモニターメーカーTransvideo社と同ブースに出展していた、同社の24トラックのユニークなデザインのデジタル“On-site”=オーディオフィールドレコーダー「Cantar X3」。

同シリーズ3世代目となるCantar X3。ノイズレベルを低減するため再設計されたマイクプリアンプと、Transvideo社が設計したユニークなディスプレイ。X2など、これまでのCantarシリーズはこれまで映画のフィールドレコーディングの世界で活躍。「007スカイフォール」「ハートロッカー」「グランドブダペストホテル」など数々の最近の名作において、最も厳しい現場での要求を満たして来た名機だ。

しかし、どうしてこのようなデザインになったのかの理由を尋ねてみると「なぜって、こうしたかったから!」というシンプルな回答が。現場での操作性的な理由もありそうだが、フランスらしい全ての多様性を認める文化はこんなところにも反映されている。

■Walimex | 「Made in Germany」の“Walimex pro”シリーズ
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ドイツ中央部のブルクハイムに本社を持つWALSER GmbH & Co. KG社のドイツ職人が丁寧に作り上げた「Made in Germany」が光る、剛性力に富んだカメラサポート機材“Walimex pro”シリーズ。

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プロ用リグシリーズのWalimex Pro“Aptaris”は、GoProやBMPCCなどの小型リグのからDSLR向け等、様々な形状にフィットするリグシリーズ。特にソニーα7、EOS 5D Mark III、Panasonic GH4、EOS C100、NEX-FS700までに対応する、Aptaris Universal XLは基本ケージの上下サイズを可変出来ることで様々なカメラに対応できる。

■HITACHI | 4KプロダクションカメラシステムSK-UHD4000
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すでにニュースでもお伝えしたが、既存の放送カメラの操作と運用を継承しつつ4K=UHD(3840×2160/59.94p)映像の撮影に挑める、2/3型CMOSセンサーを搭載し、レンズマウントにB4マウントを採用した4Kプロダクションカメラシステム「SK-UHD4000」を初公開。特殊な変換アダプターの必要なく、標準HDレンズ(BTA S-1005A)をマウントできる。通常のHD(1920×1080/60p)3Gカメラの仕様で4Kをリアルタイムに記録。スポーツ中継現場等での運用が効果的だ。また従来のHD放送カメラアクセサリーとの共用も可能だという。2015年3月以降に出荷を予定、このIBCでは「Best of Show TVBEurope 2014」のアワードを受賞した。

総括 | これまで以上に展示指向が放送寄りに回帰したIBC

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4K、そして8Kといった高解像度が放送中心に動きだした、その辺りの周辺技術の傾向が具体的かつ各メーカーとも顕著になってきた今年のIBC。これまでもNABやInterBEEに比べ、欧州放送関係者の年に一度の懇親会的な様相の強かったIBCではあるが、ここ数年はデジタルシネマ技術や3D、IPビデオ配信やDSLRムービーなど、放送の本流は大きく有るものの、そのときの映像世界全体からみた技術トレンドに、やはり話題の中心が移らざるを得なかった。

しかしここに来て、4Kという新たな指標が見えたことで放送局も、メーカーも、販売会社もその目標がはっきりした、というのが本音ではないだろうか?やはり元々映像世界においては、放送業界の主導権が強い欧州だけに、今年のNABもそうだったが、放送業界が高解像度化を基軸にして、マスメディアとしての復権を図ろうとしている、とも取れる動きだ。

映画業界よりも4Kの恩恵が大きいTV業界だけに、そんな背景からかその熱の入れ方が、これまで以上に増したというイメージもあった。

もちろん解像度以外の、「次世代高品質映像」を実現するための、「解像度」以外の3つの条件=「ダイナミックレンジ」「色域」「フレームレート」についても、このIBCからより進化系といえる具体的な次世代技術の展開が多く見られた。会場でその辺の話を訊いてみると、各メーカーとも分かってはいて研究は始めていたものの、一見してその良さを認知して貰えるだけの具体的な発表できるまでには至って居なかったことが分かる。

やはり映像は一見にしかず。この辺は徐々に進化の度合いを待つしかないのだが、単なる4K=高解像度化から、真の高品位映像化=「TRUE 4K」時代へ、ようやく波は動き出した。来年のIBC2015は、同じく2015年9月10日~15日、会場も同じくアムステルダムのRAIで開催される。

txt:石川幸宏/編集部 構成:編集部


Vol.04 [IBC 2014] Vol.00