ジャンルやコンテンツが多様化する中、来るべき4Kスタンダード時代を睨んだ製品群が続々登場

ここでは、近年目立ってきている個人やプロスーマ向けの小規模制作者、そしてインハウス型(一般企業内)映像制作を行っているようなユーザー向けた製品を中心に、今年最も受け入れられた製品に注目した。

このプロスーマ・ネクストソリューション分野では、主に製品解説や企業PR、Web CM、SP(セールスプロモーション)ビデオなどでの映像制作が中心で、制作者層もこうした分野での活躍が中心だったが、ここ1年ではさらなる広がりを見せたように思う。制作内容に際しては、個人ベースでもマルチコプターやスタビライズ機材、またウェラブルカメラ等の活用幅が広がり、1カメ収録からマルチカム収録のものも増え、さらに編集も凝った内容のモノが目立ってきている。

また、ネット配信系もUSTREAMやYouTube Liveなどのオープンなものから、限定的なクローズド環境でのコンテンツ、例えば医療系や工業団体系の学会、集会セミナー、議会などのネット中継の需要が増えてきたり、また大学や企業内でのイントラネット内の映像公開授業/ワークショップなどの利用も盛んになっているようだ。さらにSNS利用の拡大による動画連動アプリ等の普及などで、例えば地域活性などの地域限定コンテンツなども一般的に活性化しており、Web/スマートフォン用として閲覧するコンテンツに動画はもはや欠かせない存在になってきているのは周知の通りだ。またウエディング業界でも最近ではプロパーで入社した社員が、映像制作部門に配置されて、専業としてウエディングビデオを制作していたりすることも増え、また身障者や高齢者など社会的弱者におけるタブレット端末利用率も増えているなかで、福祉や厚生サービスなどにおける動画コンテンツの活用はますます増えていると思われる。

そんな中で最も目立った今年の動きはやはり4Kだろう。プロスーマ層のユーザー分野でも4Kはすでにスタンダードなワードとなりつつあり、今年は特に民生機への4K普及が急加速で浸透してきた年でもある。特に1月のInternational CES、そして4月のNABSHOW以降は、全域に渡って4Kの文字が踊り、多くのユーザーが4K制作への足がかりを模索し始めたように思われる。しかし実際はこの分野での4Kは、納品先や上映先がない以上、いまだ現実味がないのも事実だが、映像制作に携わる多くのクリエイター/カメラマンたちの、飽くなき探究心と向学心を煽るには充分な状況になってきたこともまた事実だ。

そんな中での今年のAWARD製品の選出は、あまりネット配信とか小規模プロダクション制作ということにはこだわらず、単にプロスーマ系、もしくはハイアマチュアの方がいかに高品質な映像制作をもっと身近に感じられる製品か?そしてその中でも高性能と操作性、コストパフォーマンスをいかにバランス良く持っているか?という視点で選んでみた。

PRONEWS AWARD 2014 プロスーマ・ネクストソリューション部門ノミネート製品

  • ソニー デジタル一眼ミラーレスカメラ α7S
  • パナソニック ミラーレス一眼カメラ GH4
  • NewTek マルチメディアスタジオ TriCaster Mini
  • Libec スライダー・三脚一体型システム ALLEX
  • キヤノン HDビデオカメラ EOS C100 Mark II

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2014 プロスーマ・ネクストソリューション部門受賞製品発表

プロスーマ部門
ゴールド賞
デジタル一眼ミラーレスカメラ α7S

ソニー

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ソニーの動画向けデジタル一眼ミラーレスカメラ「α7S」は、有効画素数約1220万画素の35mmフルサイズセンサーを搭載、これはベースモデルのα7(2470万画素)の半分の画素数であり、これは受光面積の拡大により動画撮影における高感度とダイナミックレンジを強く意識したものだ。さらに動画撮影に特化した機能(S-Log2、XAVC S収録、RGBカラーフィルター等)の搭載、またATOMOS SHOGUNとの組み合わせで、4K(UHD)収録も可能。4K画像に必須とされるクリアなパンフォーカス撮影を実現するための回析低減処理やエリア分割ノイズリダクションなど、4K最高画質を収めるための技術を詰め込んだ強力なカメラに仕上がった。またイメージセンサーの感度特性、飽和信号量を向上、最大ISO 409600という圧倒的な高感度での撮影も可能したその優良な画質は、すでに多くのユーザーの注目の的となっている。

プロスーマ部門
シルバー賞
ALLEX

Libec

AWARD2014_02_Libec_ALLEX_silver

メイドインジャパンとして誇れる三脚メーカー、平和精機工業が満を持して発表・発売した、スライダーと三脚の一体型システムALLEX。現行のLibec三脚の主軸であるRSシリーズは、業務用中堅クラスが使用するプロフェッショナル用三脚だが、ALLEXはDSLRムービーユーザーを中心とした小型カメラでの撮影を多用するプロスーマ・ユーザーには、性能でもコストパフォーマンスでも非常にフィットした製品となっている。4月のNAB前に発表され、NABでは実機展示とともに製品PVなども公開、世界各国でPRに余念がない。これまでに見られなかったその意欲的なプロモーション展開と製品販売の好調さがその注目度を物語っており、PRONEWSでもその後何度もレビュー記事等を掲載してきた。さらに11月のInterBEEでは、スライダーの新たなサイズバリエーションも公開され、今後の進展が楽しみな製品だ。

総括

今年は手がけるコンテンツや制作ジャンルによっても、各々のユーザーの中でのトレンドが違った年でもあったように思う。すでにネット配信系とプロダクション系、またはグラフィック系とENG系、さらにはCM、PVとウエディングなどは、たとえ同じような機材を使用されているといっても、同一目線で機材やソフトを比べるのは難しい。それほど機材も映像ジャンルも細分化しさらに混迷化しているのが現状だ。

その中でソニーα7Sは、その画質の上品さ、4K拡張の可能性、レンズ等の周辺機材体制の強化におけるDSLRムービーの進化度、そしてコスト面など様々な点において、どのジャンル、どんなコンテンツからも注目される、新たなスタンダードになりうるカメラであり、今年最もセンセーショナルな製品となったと思われる。

ALLEXはこれから増え続けて行くであろうミドルレンジ以下のこれらの層に向けて、老舗三脚メーカーが自らの技術を再度見つめ直し、新しい提案として昇華して世に送り出した製品。映像業界へ向けてのその真摯なメッセージが、着実に幅広いユーザーに受け入れられていることを高く評価したい。

来るべき4Kスタンダード時代に向けて、新たな動きが見えて来る中で、益々このジャンル向けに生まれ出るツール群と、そのコンテンツには目が離せなそうだ。


Vol.01 [PRONEWS AWARD 2014] Vol.03