映像にまつわる多くの周辺機器がそろい踏み
1年の締めくくりとして、今年どのような製品が世に出てきたかを知る上でもPRONEWS AWARDは総決算的な意味合いを持っているものと思う。今年のトレンドとしてビデオやオーディオなど、いくつかの面から俯瞰できることは貴重ではある。ただ、今年はオーディオ部門が廃止されてしまったことから、周辺機器部門でフォローしたいと思う。オーディオ分野はすでに技術的に成熟してしまったという見方もあるが、単に性能や機能などで差別化する時代から、特定の現場に特化した製品であったり、表現手段としての「味」とか「シズル感」というような数値化できないようなレベルにきていると思う。言い換えれば性能機能が良いのは当たり前でその先のステップで各社が特徴的な製品を開発しているといえよう。
一方ビデオはフィルムの表現力にどれだけ近づけるのか、という段階であり、まだ発展途上という段階だ。それに伴い従来のビデオにはないレゾリューションや色域を扱うようになったり、レンズもB4マウントだけでなくPLマウントやEFマウントなど多彩になってきている。撮影や運用のスタイルもどのような制作を行うかで多様化しており、当然周辺機器も様々な製品が出現している。もちろん、記録フォーマットやコーデックのほか、アウトプットとしてどのようなインフラを利用するのかによってもシステムに違いがあり、効率的な制作環境としてどのようにまとめていくのか、難しい時期といえるだろう。
HDから4K/8Kという流れの中で、過去の資産であるフィルムを活用するうえで欠かせないテレシネの新製品がブラックマジックデザインから登場し、インディーズ系のプロダクションを初めとして手軽に利用できるようになったほか、今までのビデオからよりフィルムの描写に近づいた色空間を利用するうえで必要なプロセッサーが富士フイルムから発売され、Apple ProRes 4KやCinema DNG Rawに対応したレコーダーATOMOS SHOGUNが登場するなど、従来のビデオの枠を超えたフィルムよりの製品が今年の一つの流れといえる。
オーディオでは、ラウドネスやデジタルワイヤレスなどのほかPCMレコーダーの新たな活用の可能性を指向する製品としてティアックからPCMレコーダーDR-10Cシリーズが、モニタースピーカーのワイヤレス化を図ったフォステクスからワイヤレススピーカー6301NWといった新たな活用法を提案する製品も登場している。
PRONEWS AWARD 2014 周辺機器部門ノミネート製品
- ブラックマジックデザイン フィルムスキャニング Cintel Film Scanner
- 富士フイルム カラーマネージメントツール Image Processing System IS-mini
- フォステクス アクティブワイヤレススピーカー6301NW
- ティアック マイクロリニアPCMレコーダーDR-10Cシリーズ
- ATOMOS モニター一体型4K対応ポータブルレコーダー SHOGUN
何が受賞するのか…?
PRONEWS AWARD 2014 周辺機器部門受賞製品発表
- 周辺機器部門
ゴールド賞 - モニター一体型4K対応ポータブルレコーダー SHOGUN
ATOMOS
モニター一体型のレコーダーとして彗星のごとく現れ、あっという間に外付けのレコーダーとしての地位を確立してしまったATOMOS。そのATOMOSから4K/30pのシネマDNG RAW、ProRes4K、DNxHD(4:2:2、10bit)記録に対応したATOMOS SHOGUNが登場した。カメラとの接続はHDMI1.4bまたは12G-SDI入力となっており、ケーブル1本で接続可能。またオプションとして、HDDを2台搭載できるRAIDキャディーとSSDを1台搭載できるマスターキャディー用意されており、汎用のSSDを記録媒体として利用できるほか、オプションのアダプターによって、CFastカードへの記録も可能となっている。
操作はタッチパネルで行えるようになっており、パネルには1920×1080フルHD対応のS-IPS液晶を採用。波形、ベクタースコープ機能も搭載しており、フィールドでの収録ではこれ1台で大抵のことはこなしてしまう。HDおよび4Kの記録に対応しており、コーデックも汎用性のあるフォーマットに対応しているほか、コーデックも汎用性のあるフォーマットに対応しており、記録媒体も一般的なSSDを利用できるなど、現行HDから4Kをカバーしつつフォーマットや記録媒体などユーザーフレンドリーな製品という部分を評価したい。
- 周辺機器部門
シルバー賞 - カラーマネージメントツール Image Processing System IS-mini
富士フイルム
4Kは放送用途のUHDもデジタルシネマでもHDより広いカラースペースを採用しており、カメラやモニターなどのキャリブレーションが重要となってきている。マルチカメラでの運用性や編集やカラーグレーディングでの色管理など、撮影から後処理まで対応可能。従来LOG画像のまままたはビデオガンマでプレビューしていたものを最終仕上がりに近い状態でプレビューすることが可能なほか、各社のカメラの色諧調特性を記述したIDTにより、カメラの機種が異なっても同じルックを利用できるなど、従来非常に手間のかかった基本作業を大幅に簡素化できるほか、ブラックマジックデザインDaVinci Resolveへの対応など一般的なワークフローへ適応することが可能。カラーコレクション機能やモニターキャリブレーション機能などを搭載しているほか、オンセットグレーディング機能拡張やカラーマネジメントワークフロー機能拡張などのオプションが用意されている。また、モニターキャリブレーションセンサーとしてX-riteやKlein、JETI、コニカミノルタなどが利用可能となっている。
総括
4K対応のカメラは各社から発売され、収録フォーマットやコーデックも自社の物だけでなく編集フォーマットでも記録できる機種が増えてきており、後処理で困ることはほとんどなくなったといえる。ただ、4Kとなると転送レートなどの問題もあり汎用のメモリーではなく、独自仕様の物を使うことがほとんどだ。高画質で収録する場合はこうしたカメラメーカーのメモリーを使わざる負えないが、当然高価な物となってしまう。小型ビデオカメラではスペースの問題もあり、致し方ない面もあるが、複数のメモリーをそろえるとカメラ本体の価格を超えてしまうことも珍しくはない。
ATOMOS SHOGUNは汎用のSSDを利用でき、RAWを含めて各種コーデックにも対応している。また、4Kによる収録では外部モニターを使うことが多いが、キャリブレーションにも対応しており、モニターとしての評価も高い。20万円ちょっとという価格はモニターだけとみてもお買い得感があるといえよう。運用性や機能性能、コストパフォーマンスに優れた製品として評価したい。
一方富士フイルムImage Processing System IS-miniは、4Kのワークフローでは不可欠となりつつあるカラーグレーディングやルック、キャリブレーションなどの基本作業を大幅に簡素化することが可能で、特にデジタルシネマにおけるワークフローでは必需品ともいえる存在となるだろう。