新技術が変えるカメラの付き合い方

全体的に見てカメラの売上は落ちているそうで、特にコンパクトデジカメはスマホにその市場を食われて低迷しているそうである。日常的に携帯するスマホとは異なり、撮影するという目的がなければ普通カメラを携帯することはないだろう。その点でカメラは分が悪いのは確かである。ならば、日常的に携帯していても苦にならにように小型軽量化したり薄型にしようということで、そうした製品が以前より各社から出ている。最近ではスマホでは撮れない綺麗な写真であったり、望遠や広角といった画角、更には決定的瞬間を逃さないようにとその仕組みは進化している。

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全天球カメラRICOH THETA。カメラの前後に装備されたフィッシュアイカメラで周囲をすべて撮影することができる。アプリを使うことで撮影した任意のところや部分的に拡大などが行うことができる。撮影者の周囲すべてを撮影して後から好きなところを再生できる

綺麗な写真ということで逆光や夜間モードなどの様々なシーンを想定した露出制御や、実際より見た目の良さを追求し、空の青さを強調したり、人の顔を綺麗に見せる美肌モードなどの画像処理を駆使したものを考えつく限りのシーンを想定した対策が練られているといえよう。

オートフォーカスの精度やスピードは年々進化し、一眼レフカメラでもオートフォーカスによる撮影がマストになっている。フレーム上のどこにピントを合わせるかは撮影者の作画に関わる問題でカメラまかせにできないということはオートフォーカスのカメラが出始めた頃にあったものである。これはオートフォーカスロックや多点オートフォーカスなどが解決してきた。

コンパクトデジカメでは、パンフォーカスで解決していた時代もあったが、一般的な撮影では人物を撮影することが多く、人の顔を認識してそこにピントを合わせる機構が組み込まれたり、遠景撮影などシーンを解析して最適な位置にピントを合わせる方法も一般的な機能となっているといえよう。そうした中で大判センサーによるボケを生かした写真に注目が集まるようになり、ピントに関しての捉え方が変化してきているものの、撮影後にピント調節が行えるカメラの登場でこれも解決しそうである。

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フォーカスを撮影した後で調節できるLYTRO。撮影した後でLYTRO DESKTOPという専用ソフトで、画像の任意の位置のフォーカスを調節できる。撮影した後からピント合わせを行うという今までになかった発想のカメラ

写真はシャッターを押してその瞬間を捉えることで成立している部分があるが、これも笑顔を検出してシャッターを切る技術やシャッターを切る前後を連続して撮影しておき、そこから決定的瞬間を抜き出すという手法を搭載したカメラが出ている。

ただスマホが普及することでアプリが出回るようになり、そうした処理は優位性が薄れてくるのかも知れない。スマホは常に携帯するガジェットであることから大きさ(薄さ)という物理的な制約が必然的につきまとう。大判センサーや光学ズームレンズを搭載することは難しい。ならば、カメラを合体させてスマホとカメラを持つより携帯性に優れたものを、ということでスマホとカメラの合体製品やレンズとセンサーのみで操作やファインダーとしてスマホを利用するというコンセプトのカメラも出現している。

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オリンパスAIR A01。携帯電話とカメラの合体としてはCyber-shotケータイがあったが、このカメラはスマホをファインダーやシャッターなどのコントロールに利用できる。さらに、ソフト開発のためのSDKやアクセサリー製作のために外形寸法CADデータも公開されている。ユーザーの交流の場もネットで用意されており、ユーザーが自由な発想でカメラを作れるが特徴

誰もが一定以上の綺麗な写真を撮れる時代だからこそ

画質や機能の追求はもはや留まるとこを知らず、誰がどのような状況で撮影しても綺麗な写真をとれるのが当然となり、写真を趣味とする様々なジャンルの要求に応じたカメラも出揃っている。

そうした中で気づいたことは、レンズの性格を活かした作画ができるシンプルなカメラが殆ど無く、レンズも表面的な性能(周辺部も含めた解像度やコントラスト、周辺光量、色収差といった数値化しやすい部分)や携帯性・利便性を追求した製品ばかりが新製品として出されているということである。とはいえ、今年辺りからミラーレス一眼やコンパクトデジカメにも大判センサーが搭載されボケやピントの合う範囲などにも関心が高まってきたことからカメラやレンズに対する要求も変わってきたようである。

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ZEISS Distagon T*1.4/35 ZM

ZEISS Distagon T*1.4/35 ZMは、完全なマニュアルレンズで、ピント指標のところにF値が刻まれており、指標の前後のピント範囲がわかるようになっている。一眼レフでもオートフォーカスが当たり前となり、こうした表示のあるレンズはほとんどなくなってしまったが、作画を行う上ではピントの範囲やどこからをどのくらいアウトフォーカスにするかは重要なこと。そういえばフィルムカメラには初心者向けのエントリー一眼でも絞り込みのボタンが使いやすい位置に装備されていたが、オートフォーカスになってからほとんど見かけなくなってしまった。

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中判のデジタルカメラは機種も少なくなってしまった。Phase Oneはそうした貴重なカメラの1つで、フィルムバックの代わりにセンサーがビルトインされているといったイメージだ。昔ながらの作画を行おうとするとこうしたカメラを利用するしかないのだろうか

これからは、作画的な観点から絞りは明るさを調節するためでなくピントの合う範囲やボケ量による省略を調節するもので、焦点距離も遠いから望遠でとか、近いから広角というのではなく、パースペクティブ、遠近感を決めるものとして利用し、その上でレンズの性格を生かした作画をする方向へ向かってほしいものである。

さて、前年の大雪から一転して天候に恵まれたCP+2015の参加者数は、過去最高の67,617人となった。CP+2016は、2016年2月25日(木)~2月28日(日)に開催される。


Vol.03 [CP+2015] Vol.01