様々な役割を持ったカメラが出揃った2015

4K放送も来年からBSを使って開始される。すでにUHDに対応した小型ビデオカメラなどが発売されているが、今年はスタジオや中継用のカメラが各社から出揃った。加えてBT.2020に対応した色域の拡大やIP伝送対応など、次世代の放送へ向けて必要とされる収録システムが充実したといえよう。2020年に開催される東京オリンピックと言った世界的なビッグイベントが控えているといった絶好のタイミングでもあるが、すでに民生用のテレビも4K対応製品が手頃な価格になっており、4K放送の環境は整ったといえる。

スタジオや中継用のカメラとしてはソニーや池上通信機、日立国際電気、パナソニック、グラスバレーが出展しているが、いずれもレンズは2/3インチを使用するようになっている。現行HDレンズの流用や使い勝手といった関係もあるようだが、イメージサークルを変えるということは新規にレンズを開発しなくてはならず、キヤノンやフジノンなど放送用のレンズを開発しているメーカーの協力が不可欠となり、開発コストや販売台数の見込みから2/3インチに落ち着いたというのが実情ともいえる。

こうしたスタジオや中継用のカメラといえば3板という常識を覆したのはパナソニックAK-UC3000だ。1インチのセンサーを搭載し、光学的に変換することで2/3インチのレンズを使用できるようになっている。価格的に同時に発表されたHDのスタジオ・中継用のカメラより安価で、地方局やCATV局を狙ったものと言えそうだ。一方グラスバレーのLDX 86は2K相当のセンサーで4K出力を得るというもので、グラスバレーと同じベルデン傘下のミランダとの技術的な融合を感じさせるが、池上通信機も同様なコンセプトで現用HDカメラUnicamHDと組合せて2K/4Kハイブリッド対応可能なCCU-980/BS-98を発表している。日立国際電気はGchをデュアルにした4板式SK-UHD4000という4K対応のカメラを出展しており、Gchの画素をずらすことで4K解像度を達成している。ソニーのHDC-4300はある意味正統的な3板式のカメラとなっており、センサーを自社開発・生産しているという優位性がいかされているといえよう。

制作用のカメラとしては、ARRI AMIRA、ALEXA SXT、Blackmagic Design URSA、Blackmagic Micro Studio Camera 4K、キヤノンEOS C300 Mark II、ソニーPXW-FS5、パナソニックAG-DVX200といったカメラが挙げられるが、いずれも単板式でいわゆる大判センサー搭載機である。すでに発売されたカメラもあり、各社ともラインナップの充実を図りほぼ完成した感がある。ジャンルのカメラは60p対応やBT.2020対応、記録コーデックなどがポイントとなりそうだ。

PRONEWS AWARD 2015 カメラ部門ノミネート製品

  • Blackmagic Design Ultra HDスタジオカメラ
  • Blackmagic Design Blackmagic Micro Studio Camera 4K
  • キヤノン デジタルシネマカメラEOS C300 Mark II
  • ソニー レンズ交換式XDCAMメモリーカムコーダー PXW-FS5
  • ソニー HDシステムカメラ HDC-4300
  • ARRI デジタルシネマカメラ ALEXA SXT
  • ARRI デジタルシネマカメラ AMIRA
  • パナソニック レンズ一体型4Kカムコーダー AG-DVX200
  • パナソニック 4Kスタジオカメラシステム AK-UC3000

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2015 カメラ部門受賞製品発表

カメラ部門
ゴールド賞
レンズ一体型4Kカムコーダー AG-DVX200

パナソニック

AWARD2015_01_Panasonic_DVX200_gold

4K(UHD)で60p撮影が可能なほか、HDでは120fpsのバリアブルフレームレート撮影に対応。レンズ交換はできないがワイド端最短28mm(FHD時)の13倍ズームレンズを搭載しており、インテリジェントAFシステムやフォーカスアシスト機能、光学式と電子式、両方の働きを組み合わせたハイブリッド手ブレ補正を搭載。専用レンズのメリットを活かした機能を搭載している。

さらに、V-Log Lによる12ストップのワイドダイナミックレンジやメインとサブ、2つの異なったフォーマットで同時記録が可能なデュアルコーデック記録への対応など、税抜56万円という価格でよくぞここまでの機能を盛り込んだといえる。大判センサーではフォーカスが問題となりがちだが、見事に解決している。ワイドダイナミックレンジと相まってリーズナブルに4K撮影を行えるカメラとしてゴールド賞とした。

カメラ部門
シルバー賞
XDCAMメモリーカムコーダー PXW-FS5

ソニー

AWARD2015_01_Sony_FS5_silver

Eマウントを採用したレンズ交換が可能で、広角から望遠など各種レンズを撮影目的に応じて自由に選択できる(PXW-FS5KはSELP18105G付属)。電子式可変NDフィルターを搭載したことで、F値を決めて被写体深度を決め打ちした撮影が可能で、被写界深度を考慮した画作りを行うことができる。4K(UHD)で30pというのは上位機種FS7との差別化かも知れないが、その点がちょっと残念なところだ。

ただ、HSでは120fps/240fps撮影に対応しており、ハイスピード撮影ができる。1300%のダイナミックレンジを持つS-Logガンマを搭載しているほか、S-Gamut、S-Gamut3、S-Gamut3.Cineカラースペースにも対応しており、シネマ色域以上の領域をカバーした設定が可能。税抜68万円(レンズ付属のFS5Kは税抜74万円)という価格帯で、様々な撮影シーンに対応できるカメラとなっている。

総括

4Kの普及は制作機材のコストパフォーマンスが重要になった時期といえ、HDとの両立性や運用性、ランニングコストなども含め考慮したい。とは言え4Kのパフォーマンスを解像度という側面だけでなく、ダイナミックレンジや色域といった部分も含めて現状どこまで追求できるかがポイントになってくるだろう。

AG-DVX200は、運用性も含めて4K撮影を行う上で必要な項目を限られた価格設定の中でうまくまとめたカメラとして評価したい。次点のPXW-FS5もそういう意味では同格だが、60p撮影ができないという部分で残念であった。この2機種のカメラは若干性格の異なるカメラといえ(AG-DVX200は、従来の小型ビデオカメラの4K版として性能や機能、使い勝手を追求したもので、PXW-FS5は制作用のカメラとして性能や機能、使い勝手を追求したカメラといえるだろう)、同列に語れない部分もあるが、小型ビデオカメラとして幅広い用途に使用することが可能なAG-DVX200をゴールド賞にした。


Vol.00 [PRONEWS AWARD 2015] Vol.02