外郭からの攻勢がより強まり、4K+αの製品が数多く登場
4Kは実際の納品ベースではまだ需要が少ないものの、小型でも実用的な4Kカメラがすでに数多く出回り、プロスーマ・ネクストソリューション分野においても、カメラやレコーダー等ではすでにスタンダードな存在になってきた。そして今年何といっても目立ったのは、ドローンや3軸ジンバルシステムなどの新たなカメラ周り以外の外郭機材が急速に浸透したことだろう。ドローンに関してはDJI社の製品のここ数年の市場への導入が急激に広まり、専門業者以外でも各プロダクションや個人を問わず多くのドローンユーザーが生まれた。TV番組はもちろん、地方の企業VP作品やWebCM等にもドローンを使用した空撮カットが数多く取り入れられるなど、その普及の早さ・広さは凄まじいものがある。
また5月には国内初の国際ドローン展が開催され、InterBEEを始めとする各展示会でもドローンコーナーが設けられ、その関心の高さと浸透ぶりを窺わせた。また新たな側面としてこのドローン関連技術を応用・進化したのが、昨年登場してきたFreefly MoVIを発端とした3軸ジンバルによるカメラスラビライズシステムである。これも今年になって多くの企業が真似た製品を出してきたが、価格や性能の面ではやはりDJI社が一歩抜きん出た感がある。昨年登場したRONIN、そして今年春に発売された小型のRONIN-Mと、性能、使い勝手、低価格という点ですでに多くのユーザーを獲得している。さらにはこのDJIを筆頭とするドローン技術メーカーが新たな展開として、GoPro HDなどのアクションカメラとはまた違った方向性への開発という面白い現象が起こり始めている。DJI Osmoに代表されるジンバル型カメラの登場がそれだ。
もう一つの動きとしては、よりシンプルにより使いやすいプロ機材の新たなベクトルだろう。その中において機能を絞り、仕様用途に必要な部分だけをクローズアップしたようなシンプルな単機能型製品にも注目が集まった。
今年のPRONEWS AWARD製品の選出は、低価格でもこれまでにない撮影が出来る製品や、新しい業界参入者でもアイディア次第で面白い映像が作れるような、使い勝手重視の新たな機材を中心に選出した。
PRONEWS AWARD 2015 プロスーマ・ネクストソリューション部門ノミネート製品
- ローランド HDビデオスイッチャー V-1HD
- DJI ハンドヘルドカメラ用3軸ジンバルシステム RONIN-M
- DJI ハンドヘルドブラシレスジンバルカメラ Osmo
- ソニー デジタル一眼カメラ α7S II
- SmallHD HDMI/SDI対応フィールドモニター 502
- キヤノン 業務用4Kデジタルビデオカメラ XC10
何が受賞するのか…?
PRONEWS AWARD 2015 プロスーマ・ネクストソリューション部門受賞製品発表
- プロスーマ部門
ゴールド賞 - Osmo
DJI
今年10月に発売された直後から、すでにあらゆる分野で使用され始めているグリップジンバル型のカメラ DJI Osmo。DJIがドローンで培ったその技術をカメラ側に大きくシフトしてきたアイディア製品だ。今年2月にDJIはマイクロフォーサーズの規格賛同企業としても名を連ねており、今年のIBCでは、早くもドローン搭載用の同規格の小型カメラを発表している。同社は今後もこの方向性での開発を押し進め、製品市場を拡げて行くだろう。
Osmoは3軸ジンバル部分は「Zenmuse X3」、カメラ部分は同社のドローン「Inspire1」でも使用されているX3から移植されたもの。4K撮影が可能で有効解像度12.4メガピクセル、1/2.3インチのソニーExmor R CMOSを実装している。記録メディアはmicroSD。収録フォーマットは、MP4/MOV(MPEG-4 AVC/H.264)でフル4K(4096×2160)24/25p、4K(3840×2160)24/25/30pも可能。
- プロスーマ部門
シルバー賞 - V-1HD
ローランド
ほんの少し前までビデオスイッチャーというのは、誰もが扱える機器ではなかったが、ネット中継/配信がビジネスになってきた数年前から、ビデオスイッチャーを扱う人が増えてきた。その度に、放送局以外の映像切り換えが必要なそうした層に適正製品を出し続けてきたローランド。今年4月にはV-1200HDという高機能製品も発表したが、高機能のため扱える人は限られている。そんな中でInterBEEに合わせて発表されたのがこのV-1HDだ。HDMIの4入力を切り換え可能な本体とコントロールパネルが一体になったハンディサイズのスイッチャー。オーディオ部分はHDMI経由でミキシングも可能、アナログ入出力にも対応している。非常にシンプルに作られた「映像入力切り換え器」として、あらゆる層での使い勝手が良さそうな製品である。そのうえ意外にも沢山の設定メニューが用意されており、大概のネット配信であれば充分な機能を備えている。128,000円という価格帯も非常に魅力的だ。
総括
4K撮影を補完するものとドローン技術から派生したニューアイテムが席巻した今年の映像機器市場。2、3年前からの動きとしてかなり急速に発展してきたが、ここに来てその技術が確実に映像制作界と合致したカタチだ。しかしその急速な潮流が行き過ぎた面としてドローン関連の事故も起きている。特に4月には総理大臣官邸屋上へのドローン侵入事件を発端に、国内でもドローンに関する法規制が急速に行われるまでに至ったのは記憶に新しい。まだまだ進化を続ける中で、今後はその新たな視点のアイディアとともに、安全性や操作性などの面で大きく改良・進化しいていくことになるだろう。