多岐にわたる周辺機器の今とは?

最近のカメラやノンリニア編集システムでは、波形モニターやベクトルモニターの機能を搭載しているものが多く、もはや測定器としての必要性はないという現場も出てきているようだが、マルチカメラでのレベルや色合わせが必要な現場や放送局では、信頼できるこうした測定器は必需品だろう。特にカメラが多様化した制作現場では、色域に対し従来と異なったアプローチも必要となる。アストロデザインのほか、老舗のテクトロニクスやリーダー電子などが新製品を出展していた。

また、SDからHDへの移行時でもそうであったように、HDから4K/8Kでもワークフロー上相互変換が必要になることがあり、相互に変換可能なコンバーターが各社から発表されている。カメラサポート関係では、ジンバルやスライダーを取り入れた製品が最近の流れといえ、平和精機工業やマンフロットといった従来から三脚を扱っていたメーカーのほか、ジンバルを応用したカメラサポートシステムではDJIなど異業種からの参入が多い。いずれも小型ビデオカメラを対象とした製品が多く、カメラを始めとした撮影機材のローコストとともに撮影現場も様変わりしてきたと言えるだろう。

周辺機器は対象となる製品の幅が広いが今回はこうした側面から見ていくことにしたい。

PRONEWS AWARD 2015 周辺機器部門ノミネート製品

  • アストロデザイン 8Kクロスコンバーター SC-8209-A
  • リーダー電子 マルチ波形モニター LV 5490
  • テクトロニクス 波形モニター WFM/WVR8000シリーズ
  • 平和精機工業 LIBEC ALLEXシステム
  • ケンコープロフェショナルイメージング(KPI) 電動スタビライザー WenPod

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2015 周辺機器部門受賞製品発表

周辺機器部門
ゴールド賞
LIBEC ALLEXシステム

平和精機工業

AWARD2015_03_libec_ALLEX_gold

従来スライダーは三脚などのカメラサポートシステムのオプション的な存在だった。LIBEC ALLEXシステムは、従来三脚メーカー以外が扱うことが多かったスライダーを三脚やヘッドなどを含めた一つのシステムとして捉え、様々な組み合わせを可能としている。今回ハーフボールとフラットベースの特性をあわせ持った平和精機工業独自のデュアルヘッドモデルRSが登場したことで、様々なカメラに対応できるようになっただけでなく、すでに発売されている3種類のスライダーとの組み合わせにより、撮影領域の拡大が図られている。スライダーを独立したいちオプション的存在からカメラサポートシステムとして発展させることで自由な組み合わせをリーズナブルに実現したことは、小型ビデオカメラで撮影することが多くなった時代にマッチしたものであると考え、ゴールド賞とした。

周辺機器部門
シルバー賞
8Kクロスコンバーター SC-8209-A

アストロデザイン

AWARD2015_03_astrodesign_SC-8209-A_silver

SDからHDへは放送自体が地デジへ移行したが、HDと4Kでは地上波と衛星で並行した放送が行われることとなり、ラジオのAMにFMが加わったようなものと言えるだろう。こうした現状ではHDと4Kをリアルタイムで相互変換しなくてはならないことも多い。SC-8209-AはHD、4K、その先の8Kへも対応しており、映像信号の変換だけでなく音声も22.2ch、5.1ch、2ch(ステレオ)の変換にも対応している。また、ダウンコンバートでは8Kの入力に対して4KとHDが同時出力できたり、4K入力時に8KとHDの同時出力といったアップコンバートも可能となっている。いち早く8Kに対応した先進性や音声への対応などによりシルバー賞を送りたい。

総括

4K時代の到来と言っても制作費が2倍、3倍になるわけでもなく、HDと同等のバジェットの中で制作しなくてはならないのが現状で、それを踏まえカメラなどの主要な機材はHDとそれほど差がない価格帯で勝負をかけていると言えるだろう。周辺機器もそうした実情を反映し、様々な製品が出ているため選考にも苦慮したが、今回は三脚システムにスライダーを組み込んだLIBEC ALLEXシステムをゴールド賞とした。

スライダーを使う場合はヘッドなどの周辺も含めて細かなオプションが必要になるが、平和精機工業のLIBEC ALLEXシステムはその点を見事に解決し、かつシステムとしての柔軟性やコストパフォーマンスも高くゴールド賞に値すると思う。来年から4K放送が始まるが、その先には8Kが控えている。アストロデザインのSC-8209-Aは、そうした先進性を備えていることからシルバー賞とした。

4Kは放送だけでなくネットなど様々な業界で利用されるようになり、すでに民生用のテレビも特別高価なAV機器ではなくなってきている。また、来年からの放送や東京オリンピックというビッグイベントが控えているといったこともあり、制作現場でも4Kが一気に普及するだろう。4K対応のスタジオ・中継用カメラが各社から出揃い、小型ビデオカメラもバラエティに富んできた。それにつれ周辺機器もこうした制作環境への変化に伴い来年も様々な製品だ出てくるだろう。


Vol.02 [PRONEWS AWARD 2015] Vol.04