往年の名機へのオマージュとして誕生した、AG-DVX200が大賞を受賞！
毎年大晦日の恒例であるPRONEWS AWARDの発表。2015年は4Kカメラ仕様がすでにスタンダード化し、さらにはカメラ周辺機材にも大きな注目が集まった年となった。とりわけドローンやブラシレスジンバルなどの新たなテクノロジーが完全に映像業界にも浸透し、当たり前の機材になってきた。
また4Kカメラもいよいよスタンダード化し、4Kそして次なるステップの8Kへ向けた準備としての橋渡しとなる機材やテクノロジーの進展も目立った年である。その他、HDRなどの新たなる高画質への技術躍進等、様々な動きがあった2015年。多種多様、玉石混合の機材がひしめく中で、今年度の大賞に選んだのはこの機材だ。
- 大賞
- レンズ一体型4Kカムコーダー AG-DVX200
パナソニック
2003年に登場したPanasonic AG-DVX100は、24p撮影が可能で、シネマガンマ搭載という、それまでのDVカメラの常識と歴史を塗り変えるセンセーショナルなカメラだった。その後、DVカメラで誰もが映画が撮れるということで、インディペンデントムービー制作が隆盛を極めた。このムーブメントを機にプロ映像業界に足を踏み入れた方も多いだろう。
そしてその13年後に発表されたこのAG-DVX200は、DVX100の頃とはその用途と目的が違うものの、これからの4Kスタンダード時代にむけて、これまでのビデオカメラの操作カルチャーのレガシーを正当に受け継ぎながらも、4/3センサー、SDカードによる4Kカメラ内収録をはじめとする日常業務に使える堅実な4Kカメラという機能部分と、それに加えて今後のカメラデザインの新たな方向性を示す、斬新なボディデザインとカラーリングなど、“シンプル”“スタイリッシュ”“スタンドアウト”といったキーワードで、これからのプロフェッショナルカメラの新たな付加価値を見い出している。
メーカー自らも往年の名機をリスペクトする形で、あえて4月のNABショーでの発表時に「The DVX 4K」というヘッドコピーを入れて来たことも、その肝いりの度合いが伺われる。4Kカメラとしての実用的な基本機能、話題性、独自のアイデンティティ、価格帯など、現況からみるプロ映像業界と照らし合わせ総合的に考えた結果、今年はこのAG-DVX200を、PRONEWS AWARD 2015の大賞に選出させて頂いた。
2016年の展望
このAG-DVX200を選出した理由として、4Kカメラでありながら、機能やスペックをある程度絞り、シンプルな操作性でビデオカメラのこれまでの操作カルチャーを非常にうまく伝承している点を評価させて頂いた。昨今、多くの4Kカメラが出てくる中で、どのメーカーの製品もそれぞれの個性を持つ素晴らしい画質と多くの優れた新機能を装備して、素晴らしい映像を映し出してくれる。しかしその一方では、あまりの高性能、多機能のために、多くのユーザーがその機能を使いこなせないという「機能・スペック飽和状態」という弊害もあるようだ。
特に映画に加えてTVドラマ、CM、PVまでも、多くの現場がシネマカメラの導入により、撮影部がワンマン/ツーマン体制の撮影から、シネマスタイルの複数名でのユニット撮影になったことで、多くの現場ではいま大変な助手不足に喘いでいる。そんな中で、毎回の現場で、多種多様なカメラが選ばれると、セットアップ時間もわずか1日しかとれないような現場がほとんどの状況では、到底それらの機能を充分に理解することは出来ず、結果として使いこなすことは難しい。
その中で求められているのは、ある意味で「誰が撮っても失敗しない4Kカメラ」である。機能も絞り、シンプルな操作感覚で現場で迷わないなど、要は現場の状況と要望に合わせたバランスが重要になってきているのだ。また機能やスペックなどの数値的な向上＝通常進化では、いまのプロ業界では4K/8Kへの過渡期ということもあって買い控えする傾向もままあって、いまは購入即日に現場に投下できて、慣れない操作性が少ない、現場での混乱をなるべく起こさないようなものが求められているのだと思う。
一方で、大賞の次点となったDJI Osmoなど、使用するジャンルや状況は限られるが、新たな発想と多くの映像制作アイディアを引き出せる可能性を秘めた新製品も多く登場した。2016年はまたこのような傾向が続くであろうことに加えて、HDRなどの新技術をさらに高品質化、廉価化した製品等が出てくるだろう。IP関連もさらに安価で導入できるソリューションの登場が期待できるなど、これまでにない新たな展開が出てくることも楽しみだ。
PRONEWS 編集部
