NABSHOW 2016を迎えるにあたって

NAB取材へ出発する直前の14日、国内では熊本を中心として大地震に見まわれ甚大な被害が発生した。亡くなられた方々にお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

今回は、その後を心配しつつの渡米となった。そういえば東日本大地震の年のNABもそうだったが、地震や復興で大変な時期に日本から逃げ出すような、なんとなく後ろめたい気分が蘇ってきた。今年は日本だけでなくエクアドルでもコトパクシ山が14日に噴火、16日には大きな地震があり、地球規模でなにか異変が起きているのでは、と疑いたくなってしまう。願わくばこれ以上大きな災害が起きないように祈りたい。

さて、いよいよ明日18日からNAB2016が開催されるわけだが、展示会が始まる前日の17日はソニーとグラスバレーのプレス発表会が開催されるということで、早速取材にいってみた。ソニーとグラスバレーはいうまでもなく放送機器のリーディングカンパニーで、どちらもカメラやスイッチャーなどの放送機器を扱っており、この2社の製品動向を知ることは、今年の放送業界の動向を見る上で重要といえるだろう。

ソニー

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ソニーは、昨年に引き続き「Beyond Definition」をテーマに 4KやHDR、IP伝送、アーカイブなど最新の映像制作ソリューションを提案しており、昨年発売された2/3型3板式4Kイメージセンサーを搭載した4K/HD両対応のマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300の上位機種HDC-4800と、対応ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4800のほか、マルチフォーマットスイッチャーXVS-7000、XVS-6000を発表した。これらは ネットワークメディアインターフェースに対応しており、4K映像のIP信号入出力を実現している。

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ネットワークメディアインターフェースは同社が提唱したIP伝送システムだが、賛同メーカーは49社となっており、年々数が増えている。ちなみに同様なIP伝送システムとしてAIMS(Alliance for IP Media Solutions)があるがこちらはグラスバレーやImagine Communicationsを中心としており、賛同するメーカーの殆どは重複している。強いて違いを見るならばAIMSにはパナソニックと池上通信機が参加していることだろうか。

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いずれにしてもSMPTE2022などの規格に準拠した形になっているので、それぞれが拡張した部分で差がでるだけで、最低限の伝送に関しては共通したものとなるのではないだろうか。今後こうした伝送システムが増えるのか、1つに統合されていくかは定かではないが、流れとしては増える方向にはないと思われる。

ソニーは、ほかにも4K対応機器としてXDCAMメモリーカムコーダーPXW-Z450や55型有機ELモニターPVM-X550のほか、オプティカルディスクのアーカイブシステムの第2世代モデルODS-D280U、ポータブルメモリーレコーダーAXS-R7などを新製品として発表した。なお、HD機器として最大350mの長距離伝送が可能なショルダータイプカメラHXC-FB450、17型フルHDマルチフォーマット液晶モニターLMD-B170なども新製品として発表している。

グラスバレー

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グラスバレーは「Complete IP Integration with Glass-to-Glass Solutions」をテーマにカメラやスポーツ中継などで使われるリプレイシステム、スイッチャー、プレイアウト、自動化プロダクションを含むIPフルラインナップを出展するとともに、4K 1-wireやHDRなどの最新テクノロジーについて発表が行われた。

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カメラは、昨年発表されたLDK-86シリーズで、4Kネイティブセンサーを搭載したモデルLDK-86Nが発表された。ソフトウェアライセンスにより、HDカメラからHDハイスピードカメラ、4Kカメラなどに対応できるシステムとなっているのは、従来のシリーズと同じスタイルのもの、スイッチャーはKayenneやKarreraより小型なモデルGV Koronaで、1または2M/E、HDや4K対応などソフトウェアライセンスで選択可能となっている。

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最後にSDIとIP(SMPTE2022-6)双方のブランキングスイッチに対応したGV Nodeが紹介されたが、この製品は同社が提唱しているブロードキャストデータセンターを実現する製品であり、同社ならではの特徴的なものとなっている。ビデオ業界ではすでにSDやHD、4Kと言った大きな分類が存在するが、更に細かく見るとレゾリューションやフレームレート、HDRのほか物理的な伝送方式など多岐にわたっており、ハイデータレート、広帯域、スケーラブルなシステムが求められている。

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地上波や衛星、CATVのほか、IPによるいわゆるインターネットTVなど、放送局はこの数年で大きく変わる時期にきているといえよう。同社はそうした放送局のためのソリューションにいち早く対応しており、ライブ配信のためのVODやネットにおけるセキュリティーなどに対応した製品の商品化も進めているようだ。

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昨年のNABでも4KやHDR、IPは話題になっていたが、今年はより現実的かつ幅広く対応するようになってきたようである。中継やスタジオなどで使われる4Kカメラは昨年も出品されていたが、ソニーのHDC-4800は4K(3840×2160)で最大8倍速、フルHD(1920×1080)で最大16倍速スローモーションに対応。ベースバンドプロセッサユニットBPU-4800には、大容量ストレージが搭載されており、4K映像を8倍速で最大4時間の連続記録が可能になっている。

一方グラスバレーはSDやHD、4Kなどの様々なフォーマットのコンテンツを放送やIPなどルーティングするシステムや10Gイーサネットによる4K 1ワイヤー伝送を実現するためのロスレス圧縮、低遅延コーデックのTICOを採用した4K 1-wireシステムなどを発表している。

ソニーが提唱するネットワークメディアインターフェースとグラスバレーが中心的に提唱しているAIMSをお互いに取り入れることが発表されたのは、両社競合する製品はあるものの、得意とする部分では補完関係になることから実現したともいえるが、今後どちらかにしか入っていないメーカーやブラックマジックデザインのようにどちらにも入っていないメーカーはどうするのか、興味が尽きないところだ。ちなみに明日はブラックマジックデザインとパナソニックのプレス発表があるので、新たな展開があるかもしれない。


[NAB2016デイリーレポート] Day01