カメラ本体とレンズのジレンマ
CP+は写真中心のイベントのため、とうぜん写真用のカメラやレンズ、アクセサリーの出展が圧倒的に多い。今年は各社ともカメラの新製品は控えめな印象だったが、レンズはカメラメーカーやレンズ専業メーカーなどから様々な出展があった。
カメラがフィルムから電子機器となることで、フィルムのサイズというある種厳格な規格のなかで作られていたものからセンサーという電子デバイスになり、さらにいうとフォルムからのプリント工程が一般のPCとプリンターに置き換わり、様々なサイズのセンサーを搭載したカメラが発売されている。デジタル一眼レフカメラはフィルムカメラからの規格をある程度踏襲しており、35mmフルサイズかその半分のサイズが一般的だ。その後ミラーレスというコンパクトデジカメとこうした一眼レフカメラとの中間的なカメラが開発され、センサーサイズも各社とも微妙に異なった製品を開発している。業界で統一していこうという動きも当然あり、マイクロフォーサーズなど規格化の動きもあるが、オートフォーカスや手振れ補正などの機能をレンズ側に持たせるかカメラ本体か、さらに将来的にカメラとレンズの連携にどのような機能を持たせるかなど業界で完全に統一していくのは難しいようだ。
イメージサイズの違いはレンズにとってどのエリアまでイメージサークルを確保して設計するかという基本的な事柄にかかわるほか、オートフォーカスや手振れ補正などの機能もあり、同じレンズ構成でも必然的にそれぞれのカメラに対応したレンズが必要になり、数多くの新製品が登場することになるようだ。
ニコンAF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED。開放F値1.4の実現とAFの搭載を両立した、大口径中望遠単焦点レンズで、単にピントが合っている部分の解像力やコントラストを引き上げるだけではなく、ピントが合っているところから、ぼけかけたところ、完全にぼけたところまでの連続性を重視した設計思想「三次元的ハイファイ(高再現性)」を高いレベルで実現したレンズ
キヤノンEF-S18-55mm F4-5.6 IS STM。リードスクリュータイプのステッピングモーターを採用した新設計のフォーカス機構により、動画撮影中の速くてなめらかなAFを実現。EOS 9000DおよびEOS Kiss X9iのダブルズームキットに含まれる標準ズームレンズ
キヤノン16-35mm f/2.8L III USM。大口径ガラスモールド両面非球面レンズ2枚、研削非球面レンズ1枚の効果的な配置で、歪曲収差や像面湾曲、非点収差を抑制。UDレンズ2枚の採用で色収差を大幅に低減。SWC、ASCによりフレアやゴーストを低減し画面中心から周辺の隅々までズーム全域で高画質化を実現
キヤノンEOS Mシステム用交換レンズEF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM。18mmの広角から150mmの望遠までを1本でカバーできるEF-Mレンズ初の高倍率ズームレンズ(35mm判換算では29~240mm)
APS-Cサイズ専用超広角ズームレンズタムロン10-24mm F/3.5-4.5 Di II VC HLD。手ブレ補正機構VCのほか、AF駆動の動力として、同社初となる「HLD(High/Low torque modulated Drive)」を開発・採用している
タムロンSP 70-200mm F/2.8 Di VC USD。5段の手ブレ補正効果達成し、撮影状況に応じた使い分けが可能。リング型超音波モーター「USD(Ultrasonic Silent Drive)」搭載しており、高速かつ精度の高いピント合わせができる
タムロンSP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD。手ブレ補正機能の向上やAFアルゴリズムの改善によりAFスピードや精度を向上したモデル
SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary。小型軽量なボディに加速度センサーを利用した手ブレ補正機構を搭載。最新のアルゴリズムで高速なオートフォーカスを実現した超音波モーターHSMやフォーカスリミッターなども搭載している。SIGMA USB DOCKも対応可能
SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art。高速なオートフォーカスを実現した超音波モーターHSMや補正効果の高い手ブレ補正OS機構を搭載。マウント部のゴムのシーリングによる簡易防塵防滴や剛性感の高い金属鏡筒などを採用することで、報道やネイチャーなど様々な分野の撮影に対応できる
フルサイズ対応大口径広角単焦点レンズトキナーFiRIN 20mm F2 FE MF。球面収差や歪曲収差、色収差などの各収差を極力補正し、高解像を実現。MFアシスト機能のほか、光学補正やボディ内手振れ補正機能対応している。ソニーEマウント用レンズ
メジャーなカメラメーカーやレンズ専業メーカーでは、画質の向上のほかオートフォーカスや手振れ補正の速度や精度、静粛性、高倍率ズームなど性能や機能を中心に新たなレンズを開発している。一方それ以外のレンズメーカーはこうしたメジャーなメーカーとは一線を画す商品展開をしており、ノスタルジックな描写であったり、独特なボケをもったレンズであったり、魚眼や超望遠などメーカーのレンズラインナップにはないようなものが多い。
また、昔ながらの外装(実用的な樹脂製ではなく真鍮などの金属を採用)や、あえてマニュアルにこだわった作りのレンズなど趣味の世界は奥が深い。最も現代のレンズはある意味「うつりすぎる」傾向にあるのも事実で、収差の取り切れていないレンズの描写は後処理で再現できないものが多いことから、特殊効果や画像処理の延長としてみることもできるだろう。プラグインやシミュレーターの替わりに実機を使うという贅沢も写真ならではということだろうか。
KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8。マイクロフォーサーズ専用マウント単焦点レンズで、非球面レンズや低分散ガラスを採用し低ディストーションを達成
KOWA PROMINAR 90mmF2.5 Macro。マイクロフォーサーズ用レンズで参考出品となっている。35mm判換算180mm相当となるマクロレンズ
KOWA PROMINAR 8.5mmT3。デジタルシネマ用に絞りやフォーカスリングを0.8のギアリングにしたレンズ
LAOWA 12mmF2.8 ZERO-D。画角122度超広角レンズでありながら歪みを補正するディストーションフリーの光学設計を採用。マウントはニコン、キヤノンEF、ソニーA/FE、ペンタックスKマウントがある(サイトロンジャパン)
HandeVisionフルサイズ対応 Eマウント、Xマウント、Mマウント用レンズIBERITシリーズ。24mmF2.4/35mmF2.4/75mmF2.4/90mmF2.4(サイトロンジャパン)
中一光学ZHONG YI OPTICS SPEEDMASTER 85mm F1.2。6群9枚のレンズ構成のうち、EDレンズ2枚、高屈折低分散ガラスレンズを4枚を使用し、諸収差を良好に補正。開放F1.2から高解像度、高いコントラストを実現している(焦点工房)
大口径中望遠レンズ中一光学ZHONGYI OPTICAL Mitakon Speedmaster135mm F1.4。開放F値F1.4のレンズで豊かなボケ味を表現できる。マウントはニコン、キヤノン、ソニーがある(焦点工房)
ZHONGYI OPTICAL Mitakon Speedmaster 35mm F0.95II。マウントはソニーEマウント、フジXマウント、キヤノンEOS-Mマウントが用意されている(焦点工房)
SAMYANGのフィッシュアイレンズ。キヤノンやソニー、フジXマウントなど各社のカメラに対応可能(ケンコー・トキナー)
Meyer Optik Trioplan 100f2.8。独特のボケ味で古くから知られているMEYERのTrioplan。古き良き時代のオールドレンズの味を残しながら現代的にリファインされ、ニコンやキヤノン、ソニーなど各社のデジタル一眼に対応した(ケンコー・トキナー)
ニコン創立100周年記念限定レンズセットで、AF-S NIKKOR 14-24mm f2.8G ED、AF-S NIKKOR 24-70mm f2.8E ED、AF-S NIKKOR 70-200mm f2.8E DLED VRの3本がジュラケースに収められている。外装がガンメタリックになっているほか、100周年記念ロゴも鏡胴やキャップ、ケースに施されている。価格や発売時期、数量などは未定
ニコン100周年記念限定NIKKOR 70-200Eズームレンズスケルトンのオブジェ。このほかにもD5やD500の100周年記念モデル。100周年ロゴつきのストラップやレンズキャップなどが用意される模様だが、価格や発売時期、数量限定かなどは未定となっている
お気に入りのレンズはその人の(クリエイター)作風にもかかわる大問題なわけだが、カメラのメーカーが異なったり、フィルム時代のレンズは、マウントが異なるので装着することはできない。ミラーレス一眼はフランジバックが短いので、今までの一眼レフカメラのレンズのようにフランジバックの長いレンズならばアダプターによって装着できるようになった。すでに様々なアダプターが市販されており、基本的にはレンズはマニュアル操作が基本となるが、電気的な変換が組み込まれているものやマニュアルレンズをオートで使うことができるようなアダプターも登場してきた。また、センサー(フィルムサイズ)サイズが異なっても元のレンズの画角が保てるように変倍光学系が組み込まれているアダプターもある。
ケンコーマウントアダプター。ニコンFマウントのレンズをキヤノンMやマイクロフォーサーズ、ソニーα、フジXマウントに変換するアダプターが参考出品された
KIPONマウントアダプター。おそらくこのメーカーほど各社のレンズとカメラの組み合わせを数多くそろえているところはないのではないだろうか。35mm用レンズだけでなく中判やビデオカメラ用レンズなどに対応したアダプターも用意されている
マウントアダプターTECHART LM-EA7。ライカMマウントレンズをソニーα「Eマウント」のカメラに装着するためのアダプターで、AFモーターを搭載しており、ライカのマニュアルレンズをオートフォーカスで使用できる(焦点工房)
スマホ用レンズアダプター&カメラリグシステムBEASTGRIP用のDOFアダプター。これにより各社の写真用レンズをスマホで使用できる。製品は参考出品で、トキナーのAF-X PRO SD17-35mm F4(IF)FXが装着した状態でデモしていた(ケンコー/トキナー)