NAB Show 2017のスタートは、プレスカンファレンスから
今年の開催は例年より遅いせいもあり、気温も心なしか高いようで、会場に到着するまでに一汗かいてしまう状況だ。展示会開催の前日23日にはパナソニックとソニーのプレスカンファレンスが開催された。昨年パナソニックは展示会開催初日にプレスカンファレンスを開催していたが、今年はもとに戻ったようだ。
パナソニック
パナソニックは、例年通りコンベンションセンター内の会議室でプレスカンファレンスが開催され、スポーツイベントやテーマパークなどで大きな成果を上げたことを発表し、放送や業務用機器などにとらわれない方向性で展開していくようだ。この中には制作用の機材だけでなく、同社が得意とするところのセキュリティシステムなども含まれている。
顧客密着型事業体制の構築を狙いとして、AVCネットワークスを母体とした組織再編を行い、2017年4月1日付で新しい社内分社「コネクティッドソリューションズ社」を設立。重点事業領域を「流通・物流」「エンターテインメント」「パブリック」「アビオニクス」「製造」に定め、従来の商品軸の事業部体制から重点事業領域に沿った業界軸の事業部体制へと変革。
これは、2017年4月1日に発足したコネクティッドソリューション社が製品中心から流通、物流、航空、エンターテイメント、パブリックといった6つの業界に向けて、同社のもつ技術や製品を効果的に組み合わせてシステムとして提供するというもので、従来のAVCネットワークスが社名変更し、営業体制を市場に最適化したものといえるだろう。なお、北米もそれに連動してパナソニックメディアエンターテインメントカンパニーが発足され、スタジアムなどの大型映像システムなどを中心とした事業展開をしていく。
パナソニックメディアエンターテインメントカンパニーでは、成長が見込まれるIR/MICE、テーマパーク、スタジアム、メディアの4つの分野に注力していく
こうした事業再編が行われたなかで、Thunderbolt 3インターフェースにより、デイジーチェーンで6台まで接続可能なexpressP2メモリーカードドライブ「AU-XPD3」や、IP65規格に対応した全天候型フルHDリモートコントロールカメラ「AW-HR140」、1MEのスイッチャーにパン/ティルト、ズームカメラコントロールを搭載して、ワンマンオペレーションによるライブストリーミングが可能な簡単操作を実現。スポーツやライブイベントのほか、お天気カメラなどに対応可能なライブプロダクションセンター「AV-HCL100」、UHD/FHDの映像をSDメモリーカードに収録可能なほか、IPストリーミングやIPコントロールに対応したレコーダー「AG-UMR20」およびカメラ「AG-UCK20」、360°4Kカメラなどの新製品が発表された。
1MEのスイッチャーにパン/ティルト、ズームカメラコントロールを搭載することで、スポーツやライブイベントのほか、お天気カメラなどにワンマンオペレーション対応が可能なライブプロダクションセンターAV-HCL100
4K対応の360°撮影カメラ。複数のカメラで捉えた映像をリアルタイムで360°映像に変換することが可能
ソニー
ソニーは、コンベンションセンター周辺のホテルでプレスカンファレンスを開催するのがここ数年来恒例だったが、今年はブース内で発表が行われた。同社は、スポーツやライブ中継などの映像制作おける4K HDRを高効率に制作するソリューションとして、SR Live for HDRに対応した製品や4Kでインフラを構築する際のコストやスペースのほか、機材のリソースシェアや遠隔地からの操作および映像モニタリングを可能とするIP Live Production Systemなどに対応した機器やシステムを提案。
4K HDRとIP Live Production Systemによる高品質な映像と物理的なシステム要件への新たなソリューションのほか、ネットを利用した制作配信システムなど、新時代の4Kシステム運用における新製品や製品アップデート、システムなどを発表した。発表の後、開催に先駆けブース内が開放され、実際にシステムや機材を見れた。
撮影機材、HDR、IP、メディアを中心としたソニーの映像ソリューションは4K時代の新たな環境を提供する
IP Live Production SystemはEnd to Endでシステム構成が可能で、効率的かつ高品質な制作が行える
素材管理からアーカイブまで必要なソリューションを提供
プロダクションデータセンター。昔風にいうと機材室ということになるだろうが、伝送路がIP化され、スイッチャーの本体やレコーダー、ルーターなどがコンパクトに収まっている
IP Live Production System。全ての機器がIP接続されることで、伝送路から接続されている個々の機材までの状態や、各種ステータスの管理などの一元管理が可能。イギリスBBC Studioworksの制作スタジオに導入が決まったという
取材カムコーダーと連携をするクラウドサービスXDCAM Airやゴールライン判定やマルチカメラ映像を収録し、コーチングなどで使用可能なHawk-Eyeなど実際の運用性を高めるシステム
パナソニックは放送機器、業務用機器、セキュリティ機器など垣根をあまり区別することなくシステムとしてまとめていく。一方ソニーは、放送機器はあくまでも放送用の機器で対応し、システムとしてまとめていく方向で、両社の映像機器の力関係やルーツが鮮明になったきたようだ。これは両社の営業部隊との関係もあり、パナソニックはBtoBの部隊がすべてを、ソニーはSI社との住みわけのなかで成り立っていることも起因しているだろう。
すでにネットと放送(電波を使う)はボーダーレス化が進んできているが、両社ともにそうした現状をもとに、機器開発や各種サービスを始めている。絶大な力を誇っていた放送局は電波の届く範囲ということを考えると、地球規模では地方局で、ネットのように国境のないメディアが、ある意味本当のマスメディアといえるのかもしれない。明日から始まる展示会では、ソニーやパナソニックの製品だけでなく、様々なメーカーの製品やシステムからそうした動向を含めて取材していこうと思う。