時代に合わせ変化する展示会から学ぶ事

風が強いせいかあまり暑さを感じないが、日差しは相変わらず強く気温はやはり30°を超えている。展示会は明日で終わりになるが、最終日は撤収を始めるブースもあり、事実上今日が最終日といえるだろう。何か見逃しはないか、お目当て以外にも何か面白いものがないか、最後もう少し詳しく説明を受けたいなど理由は人それぞれだろうが相変わらずどこも混雑している。

グラスバレー4K対応カメラ2/3インチ3板式カメラLDK-86N。4KネイティブおよびHD 3倍速/6倍速にも対応

今年は撮影機材であるカメラにあまり大きな動きがなかったが、レンズをはじめとして周辺機器の充実がかなり進んだ年といえよう。実際今年初めてREDがブースを出していなかったり、ソニーもVRやドローン搭載用の小さなカメラが新製品として出ていただけで、パナソニックはアクリルケースにベールをかぶせ何やら思わせぶりのカメラを披露していたといった現状だ。

パナソニックの謎カメラ。シルエットやコンセプトからAG-AF105の後継機的なモデルと予想される。来月のCineGearで

池上通信機や日立国際、Grass Valley、JVCケンウッド、ブラックマジックデザイン、GoProなどもほぼ同様な動きで、既存のカメラのアップデートはあるもののメインとなるようなカメラは披露されていない。すでに4K放送は日本や韓国、アメリカなどが先行して初めており、本格的な4K放送は目前といえる。

ソニースーパースローモーションカメラHDC-4800。4Kで最大8倍速、フルHDで最大16倍速スローモーション撮影が可能

フルプログレッシブスキャンHDTVスタジオ/EFPカメラ日立国際Z-HD5500

HDTVカメラシステム池上通信機HDK-65C

ブラックマジックデザインURSA Mini Pro。B4マウントモデルが用意され、箱型の高倍率ズームレンズやENG用のレンズなどが利用可能になった

ソニーUMC-S3C。多地点からの同時撮影やライブ制作用システムやVR撮影など複数のカメラを同期して運用することを目的としたカメラ。記録系は搭載しているが、映像を確認したりカメラの設定を行うためのディスプレイなどは装備されていない

すでに運用が開始されカメラもスタジオ仕様のものから取材などに適した小型ビデオカメラまで各社から出そろい、民生機やデジタル一眼の動画撮影機能も4K対応のものが各社から出そろいユーザーが必要とするであろうカメラはそろったということだろうか。もっとも4K放送を積極的に進めている国は限られており、日本国内でも主流は現状HDである。途上国などはSDというところもあり、メーカーとしても4Kだけに絞りきれないという事情もあるだろう。現状の4KカメラはHDにも対応しており、機材更新時は4K対応へ買い替えてもらいたいという思惑はあっても当面4Kを必要としないユーザーも多いようで、HDカメラの新製品も各メーカーから出ているのが現状だ。

4K動画撮影が可能なデジタル一眼カメラパナソニックGH5

時代の変遷に伴う周辺機器の変化も

放送というマスメディアはあらゆるジャンルの番組を制作して広く浅く万人に受け入れられることを目指してきた。CATVや衛星放送など専門チャンネルが有料でも一般に受け入れられ、ネットが普及した現在では、スマホで見たい番組を見たいときにいつでも見られるようになった。

すでにネット上ではフォロワーの数や再生回数に応じて製作者に広告料金などを還元するシステムが構築されており、それで生計を立てることも可能な状況になっている。いわゆるユーチューバー等のはその一例だ。スマホ1つで暮らすことも不可能ではないとはいえ、ある程度の収入を見込むならばそれなりの撮影機材は必要であろう。自撮り用のスマホアクセサリーを始めとしてデジタル一眼や小型ビデオカメラをワンマンオペレーションするためのアクセサリーなどもすでにかなりの種類が出現しており、NABでも年々その数が増えてきている。

マンフロットDIGITAL DIRECTOR。カメラの設定や照明のコントロールなどをiPodからワイヤレスで行うことが可能

撮影しながらスポーツ競技などで得点を画面に表示することができるJVCケンウッドGY-HM200SP

多くの人たちに情報や番組などを配信することは資本のある放送事業者だけだったものが、個人レベルでも可能になり、メディアの概念も大きくかわり、利用される機材も多種多様になということだろう。特に今年のNABはこうしたことも背景にあり制作機材の多様化が進んできたことやVRといった新たなメディアの台頭などが見て取れた。


Day02 [NAB2017デイリーレポート] Day00