100万円以下の4K対応シネマカメラが各社から登場

2017年は、4K/10ビット4:2:2映像や、RAWの内部収録対応で100万円を切る4Kまたは4K以上のSuper35mmセンサーを搭載したシネマカメラが各社から続々と発表された。ブラックマジックデザインは3月に3段階のNDフィルターの搭載やEF、PL、B4などの交換式レンズマウントに対応した「URSA mini Pro 4.6K」を発表。側面のボタンやスイッチが変更され、制作用途だけでなく、ENGカメラとして使いやすくなっている。

キヤノンは5月に新ビデオフォーマット「Cinema RAW Light」や「MP4」での4K映像を本体内記録を可能にしたデジタルシネマカメラ「EOS C200」と「EOS C200B」を発表。これまでのRAW収録には外部レコーダーが必要だったが、Cinema RAW Lightでは約1/3~1/5とファイルサイズをコンパクトにすることでCFastカードに内部記録を実現している。

パナソニックは6月に開催された「Cine Gear Expo」で5.7Kスーパー35mmセンサーを搭載した4K/60p対応コンパクトシネマカメラ「AU-EVA1」を発表。5.7Kセンサーのネイティブ解像度からダウンサンプルすることにより、高い解像感を備えた4K/UHD/2K/720p映像が生成を実現している。また、4K解像度でも高画質の10ビット4:2:2収録や、EFマウント方式に対応しているのもポイントだ。

左からブラックマジックデザイン「URSA mini Pro 4.6K」、キヤノン「EOS C200」パナソニック「AU-EVA1」

ハリウッドの現場をターゲットとしたシネマカメラの新製品が登場

ARRIはNABでワイヤレスワークフローを実現するカメラ「ALEXA SXT W」を発表。名称の「W」はワイヤレスを表し、アミモンのワイヤレスビデオ技術を使用している。

ソニーは、IBC 2017でCineAltaシリーズのフラグシップモデル「VENICE」を発表。36×24mmフルフレームCMOSイメージセンサーを搭載し、アナモフィック撮影やSuper35mmの切り取りサイズで各種フォーマットに対応する。

左からARRI「ALEXA SXT W」、ソニー「VENICE」

8K対応カメラのリリースが各社からスタート

これまで8K対応のカメラはまだ試作レベルというイメージが強かったが、2017年は各社から発売が相次いだ。

RED Digital Cinemaはシネマ用フルフレームセンサー搭載の「MONSTRO 8K VV」を発表。40.96mmx21.60mmサイズの大型な8K解像度のMONSTROセンサーを搭載し、35.4メガピクセルの動画と静止画を低ノイズで記録できる。DSMC2カメラと同様に、EDCODE RAWやアップルのProRes、アビッドのDNxHD/HRでの同時記録が行えるのも特徴だ。

シャープも業務用8Kカムコーダー「8C-B60A」を発表。特徴は、アストロデザインの技術協力を得て開発したもので、「撮影」「収録」「再生」「ライン出力」をカメラ/記録部一体型を実現している。撮像素子は、3,300万画素のSuper35mm相当の大型CMOSイメージセンサを搭載し、圧縮方式にはCPU負荷の低いGrass Valley HQX Codecを採用している。

ソニーは、新開発8Kイメージセンサーを搭載した8K 3板式カメラシステム「UHC-8300」を発表。UHC-8300は4K映像やHD映像の制作用途にも幅広く使えるように8K/4K/HD信号の同時出力に対応し、4K/HD制作機器と連携したシステム構築も可能。8K映像から任意の4K映像を切り出して運用できる4Kカットアウト機能も搭載している。

左から、RED Digital Cinema「MONSTRO 8K VV」、シャープ「8C-B60A」、ソニー「UHC-8300」

4K/60p記録対応のデジタルカメラやジンバルカメラが登場

パナソニックは2017年のCES 2017のプレスカンファレンスでマイクロフォーサーズ規格のミラーレスデジタルカメラ「GH5」を発表。20万円台の価格のデジタルカメラでありながら4K/60p動画記録や、4:2:2 10ビットの4K/30p動画記録時間無制限を実現したことで大変な反響を呼んだ。

DJIはsuper35mmのジンバルカメラ「ZENMUSE X7」を発表。4本のDL Mountプライムレンズが用意されているだけでなく、ポストプロダクション用の新システムDJIシネマカラーシステムを搭載しているのも特徴だ。

左からミラーレスデジタルカメラ「GH5」とドローン「DJI INSPIRE 2」に搭載した状態の「Zenmuse X7」

PRONEWS AWARD 2017 カメラ部門ノミネート製品

以下がカメラ部門のノミネート製品となる。

  • パナソニック ミラーレスデジタルカメラ「GH5」
  • ブラックマジック デジタルフィルムカメラ「URSA mini Pro 4.6K」
  • キヤノン デジタルシネマカメラ「EOS C200」/「EOS C200B」
  • パナソニック コンパクトシネマカメラ「AU-EVA1」
  • ARRI 「ALEXA SXT W」
  • ソニー CineAltaカメラ「VENICE」
  • RED 「MONSTRO 8K VV」
  • シャープ 業務用8Kカムコーダー「8C-B60A」
  • ソニー 8K 3板式カメラシステム「UHC-8300」
  • パナソニック ミラーレスデジタルカメラ「GH5」
  • DJI コンパクトSuper35mmカメラ「Zenmuse X7」

何が受賞するのか…?発表!

PRONEWS AWARD 2017 カメラ部門受賞製品発表

カメラ部門
ゴールド賞
CineAlta「VENICE」

ソニー

VENICEはシネマカメラ業界の流行を先取りしたフルフレームセンサーを採用したシネマカメラだ。フルフレーム自体はソニーのαシリーズやキヤノンのEOSシリーズなどの一眼動画でお馴染みのフォーマットだが、シネマカメラ搭載でほぼすべてのアスペクト比をフルフレーム内での収録や、シネマスコープ作品の制作やアナモフィックレンズ独特のレンズ効果を活用したコンテンツ制作を実現している。今、カメラマンがもっとも使いたいと思わせるカメラを実現したことからゴールド賞とした。

また、PLレンズマウントを採用でSuper35mm用のPLレンズからアナモフィックレンズ、フルフレーム対応PLレンズなどに対応している。さらにPLレンズマウント部を取り外せば、内部にあらかじめ用意されているEマウントにも対応。すべてのメジャーな映画用のレンズからスチル用のレンズまで幅広くカバーしている。VENICEはハリウッドなどのメジャーなコンテンツ制作向けのシネマカメラだが、Eマウントのレンズとドローンやジンバルと組み合わせることにより、身近な制作も対応できるカバーの幅広さも受賞理由とした。

カメラ部門
シルバー賞
コンパクトSuper35mmカメラ「Zenmuse X7」

DJI

シルバー賞は、航空撮影用に作られたSuper35mmカメラ「ZenMuse X7」。ドローンによる空撮自体は珍しいことではないが、これまでは品質を求められる映像制作にはあまり適さないと言わざるおえなかった。X7はSuper35mmセンサーを搭載し、6K CinemaDNG Rawや5.2K Apple ProResフッテージを最大30p、または3.9K CinemaDNGで、2.7K ProResを最大59.94pでの撮影に対応しており、新たにポストプロダクションでのカラーグレーディングに適している「DJI Cinema Color System」(DCCS)を採用。独自のマウントシステムを装備して、新規に設計したカーボンファイバー製の軽量な4つのプライムレンズも用意しているのも大きなポイントだ。

X7はドローンによる空撮を再定義しただけでなく、DJIがシネマカメラを扱うメーカーであることを示したイノベーション的な製品ともいえるだろう。


Vol.00[PRONEWS AWARD 2017] Vol.02