VARICAMを継承しながらコストパフォーマンスに優れたシネマカメラ「AU-EVA1」

毎年大晦日の恒例、いよいよPRONEWS AWARDの発表だ。再度受賞下プロダクトやノミネートされたプロダクトを再考する。2016年までの100万円以下のデジタルシネマカメラ市場にはソニーの「PXW-FS5」や「PXW-FS7」シリーズ、キヤノンの「EOS C100」などが存在していた。2017年はこの市場にブラックマジックデザインの「URSA Mini Pro」やキヤノンの「EOS C200」シリーズ、パナソニックから「AU-EVA1」が加わった。この混沌とした100万円以下のシネマカメラ市場の中から、AU-EVA1が2018年に活躍すると期待する。

さて、すべてのジャンルからPRONEWS AWARD大賞を選びたいと思う。PRONEWS独自の視点から、このAU-EVA1をPRONEWS AWARDの大賞とした。

大賞
シネマカメラ「AU-EVA1」

パナソニック

AU-EVA1の最大の特徴は、4Kで422LongGOP 150Mの4:2:2 10bitで記録可能なコーデックをサポートしているところだ。やはりカラーグレーディング、クロマキー、合成などの編集が容易になる4:2:2 10bitを内部記録できるのは大きなアドバンテージだ。外部レコーダーが不要なため、本体だけのコンパクトな​​撮影が可能。Adobe Premiere ProやFinal Cut X、Avid Media Composer、グラスバレーEDIUSなどの使い慣れた編集ソフトでそのまま読み込み、すぐに編集できるところも大きな魅力といえる。

さらに今後のアップグレードでALL-Intraにも対応。4096×2160(4K)の422 Intra(400M)、4:2:2、10bit、400Mbps(可変ビットレート)で、128GBに約40分記録できる。また、手軽に入手できるSDカードに記録ができるので、長時間の記録でもメディア代のランニングコストを抑えられるところもポイントだ。

AU-EVA1は強力なオートフォーカスを搭載したカメラとはいえないが、フォーカス合わせをサポートするフォーカスアシスト機能は充実している。ピーキング表示やフォーカススクエア表示によるフォーカスアシスト機能を搭載しており、フォーカス合わせをサポートしてくれる。フォーカスボックスアシストモードは、ピントを合わせたい被写体の領域に表示される四角の大きさが最も大きくなるようにフォーカスを調整すればよく、通常表示のほかに2倍、3倍、4倍の拡大表示にも対応。フォーカスアシスト機能は競合製品より使いやすいといえる。

ボディがコンパクトで軽量なところも見逃せないところだ。本体の重量は1.2Kgで、同じ時期に発売したCanon EOS C200の約1430gやEOS C200Bの約1335gよりも軽い。付属するハンドグリップも取り外しが可能で、ロケの機材をできるだけコンパクトにしたいというカメラマンにも注目だろう。

今年発売された100万円以下の3機種のシネマカメラを比較すると、RAWを内部記録したい場合はEOS C200やブラックマジックのURSA Mini Pro、オートフォーカスを中心とした撮影を行う場合はキヤノンのEOSシネマシリーズが候補となる。それでもAU-EVA1をPRONEWS AWARDに選出した理由は、4:2:2の10ビットをSDカードに内部記録できる品質と、すぐに編集できるコーデックの搭載、メディアのランニングコストなどのバランスが優れているところだ。AU-EVA1は、画質、速さ、ランニングコストのバランスで抜きん出ているカメラといっていいだろう。

2018年の展望

2017年の映像業界を振り返ってみてもっとも印象的だったのは、8K撮影と8Kノンリニア編集が現実的な領域に移行してきたことだ。これまで8Kの収録・編集といえばまだ試作段階で現実的ではないものとつい思い込んでいたところがあったが、シャープは8Kカムコーダー「8C-B60A」、ブラックマジックデザインは12G-SDIを搭載した「DeckLink 8K Pro」、Appleは8Kに対応した「Final Cut Pro X」をリリース。一部の発表会では実際に8K編集の様子を披露する機会もあり、2017年は「8K元年」と呼んでいいほど8Kの映像制作が本格的にスタートを切った節目の年であったのではないかと思う。

次に印象的だったのは、ドローンによる空中撮影の進化だ。特にDJIは、ハイスペックな業務用空撮ドローン「Inspire 2」対応のSuper35mm 6Kセンサーを搭載したシネマカメラ「Zenmuse X7」をリリース。映画やTV番組、映画やドラマの撮影に空撮が増えつつあるが、Zenmuse X7のリリースによってさらに撮影のあり方を変える存在となりそうだ。また、DJIからスタビライザーとして人気の「Ronin」シリーズもリリースしている。DJIは元々ドローンのメーカーだが、映画や放送業界でもなくてはならない主要なメーカーの地位を築きつつあるのも見逃せないところだ。

2018年は平昌オリンピックや、2018年12月1日に4K・8K実用放送の開始という大きな節目を迎えようとしている。特に4K/8K実用放送を控えて、放送局では新機材やそのシステム構成を決めてスタジオの新設に取り掛かろうという真っ最中だろう。現場では、8Kや4K、2Kの一体化制作やHDR/SDRのサイマルなど悩ましい問題も控えており、2018年は映像業界にとっても大きな転換を迎え始める時期となるのではないだろうか。

PRONEWS 編集部


Vol.04 [PRONEWS AWARD 2017] Vol.00