txt:田部文厚 構成:編集部
GH5シリーズで夕暮れの街を舞台にしたショートストーリーを撮影
筆者はGH2からの歴代GHユーザーだが、先日発売を開始したGH5Sの感想を執筆してほしいと依頼を頂いた。しかし、GH2からGH5まで使用してきたウェディングの現場での比較は行うことができず、従来機種や他社製品との比較記事はすでに詳しく出つくしている。いろいろと悩んだあげく、GH5とGH5Sの2台で撮影をしたショートムービーを制作することにした。
ご存知のように動画に特化したGH5Sはスペック的に盛りだくさんの夢のようなカメラだ。その驚きのスペックはパナソニックのWebページで公開されている。特にHLG(Hybrid Log Gamma)や4K 3840×2160、29.97p記録、400Mbps(4:2:2、10bit ALL-I)が気になっていた。しかし、編集環境の制限もあり、今回は以下の設定と交換レンズで撮影をした。
メインカメラ GH5S V-Log L
- MP4:「4K」3840×2160、23.98p記録、150Mbps(4:2:2、10bit Long GOP)、LPCMでの撮影
- シーンによっては「FHD」1920×1080、59.94p記録、100Mbps(4:2:2、10bit Long GOP)、LPCMでのバリアブルフレームレート(VFR)で240fps
サブカメラ GH5 V-Log L
- MP4:「4K」3840×2160、23.98p記録、150Mbps(4:2:2、10bit Long GOP)、LPCM
- シーンによっては「FHD」1920×1080、59.94p記録、100Mbps(4:2:2、10bit Long GOP)、LPCMでのバリアブルフレームレート(VFR)で180fps
交換レンズ
- LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 ASP
- LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
- LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
GH5Sと交換レンズは手前からSUMMILUX 25mm/F1.4 ASP、VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0、NOCTICRON 42.5mm/F1.2
■V-Log Lを使った撮影では、再生時にもLUTアシスト表示に対応
GH5ではLog撮影機能の「V-Log L」は別売だったが、GH5Sではプリインストールされている。筆者の所有しているGH5はアップグレードソフトウェアキーを購入してアクティベート済みなので、GH5SとGH5の両機でV-Log Lでの撮影を行った。GH4の時からV-Log Lは使うことができたが、GH5/GH5SではLUTアシスト表示ができ、撮影時からイメージに合わせた撮影ができる。また、GH5Sでは再生時もLUTアシスト表示ができるため、確認時にも役に立った。
GH5Sでは撮影時に加えて再生時にもLUT変換後の映像を確認することができるようになった
■ISO12800でも多少ノイズは気になるが、シーンによっては問題なさそう
GH5Sは手ぶれ補正機能を搭載していないので、可能な限り三脚や一脚を使って撮影をした。暗いシーンの撮影では、2つの標準感度を持つ「デュアルネイティブISOテクノロジー」は大変優れていると感じた。撮影環境によって自動的に低ISO感度用と高ISO感度用が切り替わり、高ISO感度でのノイズを気にすることなく、撮影編集することができた。
GH4やGH5では感覚的に撮影を諦めていたISO6400、F4、SS1/100の撮影したカットは、GH5Sではノイズリダクションかけることなく視聴できると感じた。また、ISO12800だと多少ノイズは気になるものの、シーンによっては問題なさそうだ。
制作した映像の中には、線路沿い電車と併走するカットが街灯と住宅玄関の灯りだけのシーンがあった。このカットはISO12800で撮影した。
GH5SのISO6400で撮影をしたカットからの切り出し
一脚を装着して撮影
GH5SのISO12800で撮影をしたカットからの切り出し
■暗闇でのバリアブルフレームレート撮影での比較
GH5Sのバリアブルフレームレート(VFR)で240fpsはFHD 1920×1080だが、4K 3840×2160クリップと同じ4K 3840×2160タイムラインでの編集でも画質劣化は気にならなかった。
制作した映像では240fpsで撮影したものの、スローとして編集しなかったのでどの部分がFHDだったのか探してみるのも面白いかもしれない。バリアブルフレームレート撮影時はシャッタースピードが上がるので、暗い環境での撮影は向いていない。
今回は、バリアブルフレームレートを街灯のみの歩道でチャレンジしてみた。GH5Sは、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mmを装着し、F4・SS1/250で撮影。一方、GH5は、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mmを装着し、F4・SS1/200で撮影。共にISO12800でチャレンジしたが、編集に耐えうる結果は出なかった。切り出し画像を見てもらえばわかる様に、GH5に比べてGH5SのデュアルネイティブISOテクノロジーの恩恵は素晴らしいものだった。より明るいレンズを使用すると、使えないこともないだろう。
GH5 ISO12800 F4 SS1/200 180fps
GH5S ISO12800 F4 SS1/250 240fps
GH5S ISO12800 NOCTICRON 42.5mm F2 SS1/250 240fps
■レンズ内手振れ補正は効いて、顔・瞳認識AFも効果的
ボディ内手ブレ補正を搭載しないGH5Sだが、レンズ内手振れ補正は効く。手持ち撮影では丁寧なハンドリングをすればブレは気にならないと感じた。また、今回使用したレンズのLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mmがとても便利で、35mm換算で24-120mm相当をカバーし、1本でもほぼほぼ撮影できてしまいそうだった。
マイクロフォーサーズなのでボケ味が少ないけれど、フォーカス合致には安心して使用できた。また、印象的にするため25mmや42.5mmの単焦点で被写界深度を浅くして撮影を行うこともできた。最短焦点距離が短いので一般的なレンズよりも近くまで寄ることが可能なうえ、新しく追加された人体検出機能の顔・瞳認識AFはとても効果的だった。
オートフォーカスモードから「顔・瞳認識」を選択
寄ってるカットの切り出し
筆者はGHシリーズをコンパクトなGH2から使ってきたが、GH5のボディは大きいと感じた。しかし、次々と進化をしている筐体の変化は撮影の安心感につながっていると思う。マイクロフォーサーズならではのコンパクトなレンズ群や、マウントアダプター使用での様々なレンズチョイス、HDMI Type A端子を標準搭載など、GH5Sでは予算が限られてる中でカメラの操作、運用に気を遣うことなく、撮影に集中でき安心してクオリティの高い映像制作ができる。4:2:2 10bitでの内部収録により、編集時も色破綻の少ないイメージ通りのカラーグレーディングも可能だ。
写真撮影に関しては1028万画素なので大きいプリントではなく、Web媒体や2L版プリント想定に限られる。しかし、GH5までなら厳しかったISO6400ノンストロボでその場の雰囲気を撮影できる。動画メインの店舗取材等には大活躍しそうだ。もちろんちょっとした照明を組めばノイズ気にすることなく撮影可能なので、映像制作者にはロケハンから本番撮影までとても助かるカメラだと思った。
また、今回の撮影でGH5Sの盛りだくさんな機能は使い切れないので、機会を作ってアナモフィック(4:3)モードでの映像制作できたら良いなと思う。GH5とGH5Sどちらかを選ぶとしたら、映像優先でGH5Sにするだろう。
結びに今回制作した、たべちゃん劇場コーヒーのある風景「DRIP DROP」をご高覧いただき、GH5S導入の参考にしていただければ幸いである。
txt:田部文厚 構成:編集部