txt:渡邊聡(Multicamlaboratory) 構成:編集部
4Kスポーツ番組の収録にGH5とGH5Sを使う
筆者はGH5とGH5Sの両機種を用いて実験的な4K番組制作を重ねて経験してきた。「GH5とGH5Sのどちらかを選ぶ?」というテーマに答えるならば、MoVIなどのスタビライザーが使えない厳しい撮影環境では、手ブレ補正機能が働き、手持ちでも安定した映像が撮れる「GH5」、それ以外の場合は「GH5S」を使いたい。GH5では暗い場所での撮影に苦労していたが、GH5Sでは画素数を減らして処理回路とソフトウェアが改善され、低照度特性が向上されており、適切な映像が得ることが可能だ。
マルチカメラ収録の現場でも、GH5Sが適している。台数を揃えなければならないスポーツやイベントの番組収録では、1台のGH5Sをセットアップして、カメラのISO感度、シャッタースピード、ホワイトバランスなどを含めたセッティング情報をSDカードにコピーして、複数台のGH5Sにコピーできる機能が搭載されており、デジタル一眼クラスのカメラでは諦めていたタイムコードのリンクも手早くできて最小限のセットアップ時間で済む。
また、電源とSDカードの容量(512GBを2枚使って9時間4K60pをノンストップで収録した実績がある)さえあれば、長時間のイベントにも対応できて、B4マウントズームレンズも活用できるので大変重宝する。
日本フットサルリーグの撮影に使用した6台のGH5Sと2台のGH5
長野県ホワイトリングで催された日本フットサルリーグ(Fリーグ)の「DUARIG Fチャレンジリーグ」広島エフ・ドゥvsボアルース長野の4Kスポーツ番組の収録に、GH5Sを6台とGH5を2台投入した(本当は8台全てをGH5Sで統一したかったのだが、6台しか手配できなかったためGH5を混在させた。残念ながら、GH5とGH5Sではカメラセッティングデータの互換性はない)。この番組は、全国のCATV向け4K専門チャンネル「ケーブル4K」で2月23日から放映されている。
動き回る選手を追うメインの3台は、GH5シリーズをENG&STUDIOカメラにする「GH5 ENG&STUDIOキット」でB4マウント放送用ズームレンズをGH5Sに装着して運用した
タイムコードのやり取りには、動画では使用しないフラッシュシンクロターミナルを利用する
簡単な操作でタイムコードをリンクさせられるので複数台でもスピーディーにセットできる
ライブスイッチンクをしながら収録を行った。今後、生放送を予定しており、ライブスイッチングのテストも行った
空撮にGH5Sを使う
空撮でもGH5Sを選びたい。ジンバルに搭載するのでボディ内手ぶれ補正が非搭載でもまったく問題はない。朝焼けから夕暮れまで幅広い撮影環境で適切な映像をキャプチャーすることが可能だ。
空撮に使用しているのはドローンはDJI MATRICE 600PRO
ジンバルはMATRICE 600PROとリンクするDJI RONIN-MXを組み合わせている
夜間の撮影にGH5Sを使う
GH5SにKOWA PROMINAR 500mm F5.6を組み合わせて夜の羽田空港で飛び降りてくる旅客機をテスト撮影した。KOWA PROMINARは、マニュアルフォーカスでのピント合わせが確実に行えるデュアルフォーカス方式が採用され、マウントアダプターを変えることで、350mm、500mm、850mmの3種類に焦点距離を変化させられる優れものである。
目視では厳しい状況であったが、満足できる4K60p動画を手に入れられた(4K動画より切り出し)
特殊な撮影にGH5Sを使う
GH5Sをロボット化して、動物の生態などの記録に利用できる。また、大判カメラを活用して接近して撮影するのにも低照度特性の向上したGH5Sは有効である。モンスターマシンへ進化したGH5Sがこれから驚くようなコンテンツを生み出して行くのは間違いないだろう。ロボット化するためのラジオコントロール機構や大判カメラを活用するアダプターは、 mukカメラサービス横浜関内で相談して製作をお願いしている。
パン&チルトはもとよりフォーカス&アイリス制御までをラジオコントロールしてロボット化したもの
テクニカルカメラ用アダプターとGH5Sを組み合わせて近接撮影やアオリを効かせた収録も可能となる
txt:渡邊聡(Multicamlaboratory) 構成:編集部