txt:林和哉 構成:編集部
やっちゃいましたね、という想い
GH5S。「スペシャル」とも「センシティビティ」とも読める「S」。そんな思いが込められていると聞いた。
筆者は、GH5Sが発表されたのを見たとき、「デュアルネイティブISO」の文字が目に飛び込んできて腰を抜かした。キラリと眩しく光る「デュアルネイティブISO」の文字。なぜそんなにも眩しく感じるのか。それは、筆者が技術コンダクターとして関わらせていただいている「仮面ライダーシリーズ」において、前作の「仮面ライダーエグゼイド」から「VARICAM 35」や「VARICAM LT」のデュアルネイティブISOの恩恵に、温泉に浸かっているかのようなリラックスに匹敵する勢いでつからせていただいているからだ。
タイトなスケジュールの中でものすごいカット数を撮るチームで、日が落ちかけてからデイシーンの本番、ということもある。そんな状況も救ってくれるし、室内の暗いトーンを狙う場合はISO5000ベースの設定から減感したり、ナイターは照明を焚きつつ高感度設定で撮ればよりクリアな画が撮れる。このデュアルネイティブISOはとてつもない威力を持っている機能だ。
このカメラの活用エリアを想像したときに、「同社のAU-EVA1と競合しそうですが、大丈夫ですか?パナソニックGHシリーズの商品企画担当さん、やっちゃいましたね」という想いで一杯になった。もれなく発売と同時に購入してしまった筆者であった。
画素数を下げるなんて……素晴らしい!
さらに今回、マイクロフォーサーズのセンサーサイズを維持しつつ、GH5よりも搭載画素数を減らした、という話も聞いた。これは、ダイサイズが変わらない中でも画素を減らすことで画素サイズを大きくし、受光量を増やすための妙案だ。
GH5比で1.96倍。ほぼ2倍になっているという驚きの超変化。立ち位置によって進化とも退化ともいえるので、あえて「超変化」と呼ぼう。セルサイズが大きくなることでS/Nの改善も図れるし、光量が多い方が発色が良いじゃないですか。きっと発色も良くなっているに違いない!
何せARRIのALEXAシリーズも、センサーに多くの画素を詰め込まないで、大きくてクオリティの高い画素で受光したのちに、ゆとりある絵作りを優先し、4K時代に突入してもかたくなまでに高画素化をしなかった。そういった意味で、期待は高まる
GH5S | GH5 | |
Pixels | 10.2MP | 20.3MP |
ISO | デュアルネイティブISO ISO160-51200・Ex.80-204800 |
シングルネイティブISO ISO200-12800/EX.100 |
なので、テストをしてみた
果たして、GH5Sがどのような画を撮ってくれるのか、スキントーンと実景で試してみた。ISO320からISO25600まで、1ステップずつ上げていき、見た目の変化を検証してみた。動画はYoutubeにアップしているのでご覧になって欲しい。今後の励みに、チャンネル登録、ぜひお願いします!
■GH5S ISOテスト【スキントーン編】
スキントーンは室内で照明なしの状態。モデルは「林拓茉」さん。
ISO320がこちら
※画像をクリックすると拡大します
感度の隣に「*」が付いている感度が、ほぼ見た目に近い状態
※画像をクリックすると拡大します
感度を上げていくと、ISO5000辺りが非常に綺麗に見える。適正露出ということなのだろう
※画像をクリックすると拡大します
人間の目よりも明るく見えている、という見た目を支えているのが、レンズではなく感度と言うことが好感度ISO25600で、フェイスがノーマルになるように絞った状態がこれ。絞りを入れたくて、感度を上げていくような状況もあるので、試しにやってみた
※画像をクリックすると拡大します
■GH5S ISOテスト【夕景編】
夕景は、日没時刻を過ぎたあとの空。同じく見た目に近い状態の感度の横に「*」をつけている。
ISO320がこちら。
※画像をクリックすると拡大します
感度の隣に「*」が付いている感度が、ほぼ見た目に近い状態です。ISO2000です。
※画像をクリックすると拡大します
画面下の方の車が通っている場所辺りは、感度を上げていってもほとんど破綻がない。
情報を表示したままISOを変更できるちょっとしたコツ
GH5Sは、ISOボタンを押すと他の情報表示がオフになりISO設定のメニューに集中してしまう。それだと、急いでいるときに結構不便になる。そこで、コントロールダイヤルにISOを設定してみよう。画面は変わらずに全ての情報を表示したままスルスルとISOを変更することができる。設定方法は、「MENU」ボタン→「カスタム」→「操作」→「ダイヤル設定」で、コントロールダイヤルに割り付ける機能を「ISO感度」にするだけだ。
今回公開できていないテスト映像も含め、GH5Sのいくつかのテスト撮影の中で、ライトメーターを使用せずに見た目と波形で調整する撮影方法で撮ることにチャレンジした。今回の、普通は照明を焚く状況にありながら感度調整で適性を見つけることができるのは、ちょっと快感。レンズが極端に明るくなくても、感度の調整で帳消しにできるので、レンズ選択の幅が大きく変わる。
評判良すぎの売れすぎで最近まで在庫がほとんどなかった「ライカ DG VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S.」は、これまでの動画撮影の方法論ではF2.8通しでないので使いづらく感じる向きもあったかと思う。しかし、デュアルネイティブISOの恩恵で「F4スタートのレンズとして使う」という考え方で行けば、浅くなりすぎないフォーカスのピント感で俄然使いやすい状態になる。
ALL-I 400Mbpsは、4Kを十分な画質で記録しながら、非常に小さいファイルサイズで残してくれる。マシンパワーを備えたDaVinci Resolveがあれば、中間コーデックに変換しないでも割と楽々編集できる。ストレージがあっという間に枯渇してしまう問題をクリアしてくれる、いいソリューションと思う。
ここ最近は、自分のために楽しんで映像を撮る趣味性の高い映像を撮っていなかった。そんな私がGH5Sを購入して、いろんなものを撮り続けている。気楽に撮りたいものが撮れるおかげで、ワクワクする自分を感じている。GH5Sを触って、そんなワクワクをぜひ感じてみてほしい。
txt:林和哉 構成:編集部