毎年恒例のプレスカンファレンスからスタート
桜の開花時期とはいえ朝夕は肌寒い日本から一気に真夏の太陽が肌をさすラスベガスに来たが、NAB2019の展示は明日からとなっている。米国現地時間の7日は本番前にマスコミ用の事前説明のためにブース内が開放されたパナソニックとソニーをレポートしよう。
パナソニック周辺のブースを見ても最後の調整や出展物の確認などで追い込みをかけている最中である。パナソニックも一部のポップなどが仮付の状態になっているところもあるが、それ以外はほぼ準備が整った状態となっている。以前はNABのような放送局向けの展示会は専門のマスコミの取材だけで、いつも同じ顔ぶれだったが、最近ではNABに出展しているメーカーも放送局だけでなくネット配信系にも力を入れているようで、取材する側の数も増えているようだ。
取材する側と一般ユーザーが同じ日に殺到することを避ける目的もあるようで、ソニーは以前からお得意様をNAB開催の前日に招待しており、マスコミ関係もその中に入れるようになり、パナソニックもそれに追従したかたちとなっている。ソニーもパナソニックも以前は、ブースではなく別会場で新製品の発表を行っていたが、今年は会場内のブースで行っていた。いずれもブースが会場入り口に直結した位置にあることから可能だったといえよう。
パナソニックブースツアー
Panasonicブースツアー
パナソニックは明日からの展示会を前にマスコミ各社にブースを公開
ハイライトとなる製品を解説するスタッフ
パナソニックのブースではツアー形式で出展製品の紹介を行ったが、その中でも特徴的だったのが8KマルチパーパスカメラAK-SHB800GJだ。この8Kカメラの映像から最大4つのHD映像を切り出し、それぞれに切り出したい位置やズーム操作ができるようになっており、1台のカメラで4台のHDカメラとして運用が可能なほか、AK-SHB800GJからの8K画像をHDとして使うことで、HDカメラ5台分の役割を果たすことができる。
BLACK TRAXリアルタイムトラッキングシステムと組み合わせたスタジオシステム
8KマルチパーパスカメラAK-SHB800GJ
ブースではBLACK TRAXリアルタイムトラッキングシステムと組み合わせたシステムが特徴的で、BLACK TRAXの小型赤外線送信を付けた人物に切り出しの枠が追従するようになっており、AK-SHB800GJが撮影している範囲で4つのHD画像を被写体の動きに追従させることができる。
BLACK TRAXによるセンサーの空間位置情報表示
AK-SHB800GJが撮影している範囲で4つのHD画像を被写体の動きに追従可能
また、BLACK TRAXとHDのPTZカメラおよびTECNOPOINT社のTUNING FLOOR DOLLYとの組み合わせシステムのデモも行っていた。AK-SHB800GJは周辺部の切り出しにおいても、広角歪み自動補正機能により自然な映像を実現しており、ライブイベント収録やスポーツ中継などにおいて撮影の効率化と省力化が図れ、設置・移設・輸送コストの削減につながり、また複数カメラの設置によってふさいでいた観客席を生かすことができるとしている。8K ROI(Region of Interest)カメラシステムとして2019年7月発売予定。
P2ワークフローソリューションP2 CastをAWS(Amazon Web Services)クラウド上で展開するサービス。このように一部のポップなどが仮付の状態になっているところもあった
もう一つは、P2ワークフローソリューションP2 CastをAWS(Amazon Web Services)クラウド上で展開するサービスで、すでにAWS上でEDIUS Cloud(Grass Valley社)と連携したテスト運用を始めており、2019年内のサービスの提供開始に向けて準備を進めているというもので、放送用P2シリーズにおける新ワークフローソリューションP2 Cast on AWS(P2 Cast/AWS連携)として2019年内に提供開始する。
現行のP2 CastはP2 Castクラウドサーバーにアクセスし、局サーバーにコンテンツをダウンロードして運用する方式だが、P2 Cast on AWSではさらに編集から配信までをクラウド上で一括して行なえるようになる。これにより、場所、機器の制約から解放され、ハイスペックな放送局の編集システムだけでなくネットワーク接続したPC端末ならどこからでも取材映像のプレビュー、編集、配信、ストリーミング、カメラの状態監視ができる「オフサイト・ニュース・オペレーション」が可能にとなり、ニュース制作スタッフの人的リソースを最大限に活用でき、即時性の向上、コストの削減に貢献するとしている。さらに今後、同社PTZカメラの接続や、映像加工、アーカイブなどのクラウド化によるさらなる拡充を計画している。将来的には、OTT、ビッグデータ、AIなどとのクラウド上での連携に可能性を拡げているという。
ソニープレスカンファレンス
Sonyプレスカンファレンス
ソニーは昨年に引き続き会場内のCrystal LEDディスプレイシステムの前でプレス発表をおこなった
ソニーは昨年同様会場内のCrystal LEDディスプレイシステムの前でプレス発表を行い、今回出展する新製品や導入事例の紹介などを行った後、各自ブース内を取材するスタイルだった。ブースに設置されたCrystal LEDディスプレイシステムは横8K(32フィート)☓縦4K(18フィート)の大きさで、ここに説明用の解説フリップや事例の動画などをディスプレーするというもので、今まで別会場で行っていたプロジェクターによるものに比べ、格段の画質であり、事例の動画なども存分の楽しむことができた。
今回ソニーの新製品は、マルチフォーマットポータブルカメラHDC-5500と旋回型4KリモートカメラBRC-X400のほか、デジタルワイヤレスマイクロホン3機種やSxS PRO X「SBP-240F、SBP-120F」およびリーダーライターSBAC-T40などで、放送設備の効率活用をサポートするソリューションとしてLive Element OrchestratorやCineAltaカメラVENICEのハイフレームレート対応、PXW-FS7のショルダースタイル運用を実現する専用アタッチメントキットCBK-FS7BKやB4マウントアダプターLA-EB1なども発表された。
Live Element Orchestratorは複数機器の統合的な管理および監視を実現するソリューションでカメラと カメラリモコンの割り当てをはじめ、ビデオサーバーの入出力や4K/HDのシステム変更、HDR/SDRの設定、IP/SDIマトリクスルーターのクロスポイント一括設定など、従来個別に手動設定が必要だった作業や監視を一元的に行う事が可能
CineAltaカメラVENICEのハイフレームレート対応が発表され6K 3:2 60fps、4K 2.39:1 120fps、4K 17:9 110fps、4K 4:3 75fpsなどハイフレームレート撮影が可能になった
PXW-FS7のショルダースタイル運用を実現する専用アタッチメントキットCBK-FS7BKやB4マウントアダプターLA-EB1なども発表された
マルチフォーマットポータブルカメラHDC-5500
カメラ番号などを表示できるホワイトペーパーによる表示。200×200でロゴなどの表示も可能。HDC-3500およびHDC-5500に搭載されているもので、USBメモリーに保存したロゴデータをカメラのUSB端子に接続してロードする
HDC-5500はカメラ本体に搭載された12G-SDIから4K信号出力が可能となっており、カメラコントロールユニットHDCU-5500と組み合わせることで、2系統の4K信号を双方向で同時に送受信できるUHB伝送を実現している。2/3型グローバルシャッター搭載4K CMOSイメージセンサーを搭載することで、ローリングシャッター歪みやフラッシュバンドのない映像表現が可能となっているほか、広いダイナミックレンジとF10の高感度および62dB以上の高S/N比を達成している。オプションにHFRソフトウェアHZC-HFR50とHDC-5500が用意されており、インストールすることで、4K 2倍速、HD 8倍速のハイフレームレート撮影に対応可能。
また、4K HDR/HD SDRの同時出力が可能となっており、4K HDRライブ制作のワークフローであるSR Live for HDRに対応しており、HD制作と同様のワークフローで4K HDR/HD SDR映像の同時制作ができる。カメラコントロールユニットHDCU-5500と接続にはHDC-5500に別のカメラを12G-SDIで接続し2台のカメラ映像を同時に送ることができるUHB伝送に対応したほか、12G-SDIで入力した4K信号のスピーチ原稿などをHDC-5500で取り出すUHD PROMPTER機能にも対応している。
AI-Based Video Analyticsコーナーでは日本国内では未発売のREA-C1000による小規模スタジオ向けの撮影システムを出展。REA-C1000には4K対応の2つのHDMI入力があり、2つの映像を合成することができるもので、ブースではPCからの画像とBRC-X1000というPTZ対応の4Kカメラで撮影した人物の合成を披露していた。また、BRC-X1000のオートトラッキング機能により、人物の移動に追従したカメラワークにも対応しており、ワンマンオペレーションを可能としている。
国内では未発売のREA-C1000による小規模スタジオ向けの撮影システムを出展
PCからの画像とBRC-X1000というPTZ対応の4Kカメラで撮影した人物の合成
REA-C1000には4K対応の2系統のMHMIが装備されている
スタジオ正面上部に設置されたPTZ対応の4KカメラBRC-X1000
REA-C1000とBRC-X1000によるスタジオシステムの概略
こうしたスタジオ系のシステムは日本ではあまり馴染みが無いかもしれないが、ここ数年でカメラメーカーだけでなく三脚メーカーやPTZカメラのメーカーなどが参入しており、カメラマンが不要になりつつある。もちろんキー局などでは中継などでカメラマンは必要な人材となっているが、WEBなどをベースに配信する小規模なスタジオなどが増えてきたことが背景にありそうだ。昨年までは、リモートコントロールが主流だったが今年はAIなどを導入した自動化が進みそうだ。明日から始まる展示会でもこうしたシステムが各社のブースで見られることになるだろう。