txt:江口靖二 構成:編集部
CES 2020の主流が「8K」となった理由
CES 2020では完全に8Kが主流である。グローバルで市場を牽引する中国とアメリカでは、日本よりも画面サイズが大きく、70インチ以上の大画面市場が明確に存在するからだ。75インチ以上の超大画面では4Kでは解像度が足りないので、アップコンバートする前提で8Kパネル、というのが当然の方向性なのだ。
サムスンブース
LGブース
スカイワースブース
ハイセンスブース
TCLブース
ソニーブース
テレビ関連産業は、2Kまでコンテンツ、制作環境、伝送路、表示装置が連動して市場、エコシステムを形成してきた。しかし、4K以降はこれが完全に崩れ去った。4Kコンテンツがなくても、4K放送が行われなくても、前述の理由や技術の向上と生産施術によってディスプレイパネルは4Kが主流となった。同じ理由で、2020年以降は8Kが主流になる。8K放送が行われているのは世界で日本だけであるが、そこは全く関係ない。
8Kの標準化と啓蒙活動を行う「8Kアソシエーション」には22社が参加し、「8K ASSOCIATION CERTIFIED」の認証もはじまった。8Kアソシエーションは、テレビメーカーではサムスン、ハイセンス、TCL、パナソニックが参加している団体で、テレビメーカー以外にはアストロデザイン、台湾のパネルメーカーAUO、BOE、インテルなどが参画している。ソニーやシャープ、LGなどは現時点で参加していない。
好むと好まざるとにかかわらず、8Kに向かう理由は2つ。一つは超解像によるアップコンバート。もう一つは4Kがそうであったように、放送以外にネットを使うことが可能だからだ。後者はまだこれからであるが、アップコンバートはAI技術によって実際格段に進化している。
サムスンブースでは2Kソースを8Kディスプレイにアップコンバートして表示し、比較を行っていた。素人目には、ではなく誰が見てもアップコンでも十二分に綺麗に見えるし価値がある。
サムスンブースのAIによるアップコンバートのデモ
ソースの切替
AIを利用することで明らかに見た目でのレベルが上がった
古いビジネスに囚われてしまった日本
日本では4K=4K放送、8K=8K放送という、かつてのコンテンツ、制作環境、伝送路、表示装置の連動したビジネスに未だに囚われすぎている。「放送もやってないのに何を見るのだ」という考え方が深く根付いてしまっている。
一方、日本の視聴者側はCS放送以降、技術や制度の細かいことは全然良くわかっていないが、大きいこと、綺麗なことには当然好意的に反応する。価格さえ伴えば、である。「ハイビジョンテレビを買えばテレビとDVDがハイビジョン」で見られるという、良くも悪くもそのレベルでしかない。
同じことが、8Kテレビを買えばきれいな8Kで見られるという考えになる。流石にDVD=ハイビジョンまで酷くはないが、実際に量販店の売り場に行くと、「オリンピックが8Kで見られます、テレビ(地上波)やDVD、ブルーレイも今よりきれいに見られます」というセールストークを聞くことができる。そしてそれは前述の通り、紛れもない事実である。
すでに50インチの4Kテレビは3万円台で購入することができる。80インチの8Kテレビも3年後にはきっとそうなる。こうしたことは、デジタル化以降に十分予測できたことだ。何度も繰り返すが、いまはコンテンツ、制作環境、伝送路、表示装置はそれぞれ独立している。独立して進化をしている。そのことを放送、映像関係者はしっかりと認識するべきである。
制作は可能な限りその時点で最高の技術を用いて制作されるべきであり、それはコンテンツにも深く影響を及ぼす。伝送路は電波でなければならない必要はまったくない。CESではディスプレイ(だけ)が完全に8Kになったが、どうせ売れないとかいう見方はとんでもない間違いである。
txt:江口靖二 構成:編集部