txt:石川幸宏 構成:編集部

ARRI祭の最終日、ARRI Japan株式会社 代表取締役であり、アジア太平洋地域のセールスマネージャーでもあるカルロス・チュー(朱 嘉浩/Carlos Chu)氏に、このARRI祭の目的や感想について、お話を伺った。

ARRI祭 3日間を終えた感想を教えてください

とてもラッキーでした。桜の花も満開のこの時期に京都で開催できて、しかも来場した多くのゲストに喜んでもらえることができました。そして素晴らしい撮影監督、カメラマンや照明技師の方々を迎えて、彼らと一緒にこのイベントが出来たことは本当にラッキーでした。

京都で今回のイベントを開催理由はなんでしょうか?

どこかでこうしたイベントを開催したいと思っていましたが、このコロナ禍では、タイミングとしても東京で開催することはとても難しい状況でした。関西でも同じようなイベントを開催したいと思っていたので、今回、スタッフと関西を訪れた時にこの東映京都撮影所にも初めて訪れました。

その時にイベント開催の話をしたところ、とても協力的でサポートしていただけるとのことでした。そして開催のタイミングを図っていた際に、東京に比べてまだ関西エリアでのコロナ禍の状況が少しは良好だったので、その状況も考踏まえた上で、多くの方のサポートとアイデアも得ることができたので、京都で最初に開催することになりました。

本当はもっと、大規模なイベントも考えていました。しかしながら、ご存知の通りコロナ禍で、僕もずっと自宅にいたので、出来る範囲に限界がありました。どうやるかを考えてスタッフと相談した際に、あまりに多くのことを盛り込みすぎると的確なことができなくなると考えました。コロナ対策を考えた時、今回の方法で人数を制限して開催することが限界だったと思います。

今回のゲストスピーカーである、河津太郎さんや山田康介さん、山田智和さんを人選した理由を教えてください

このARRI祭では、特にラージフォーマットの製品についてプロモーションしたかったのです。それがどういったプロジェクトで使用されたかなどを紹介したかったからです。そのため、「今際の国のアリス」でALEXA LF、ALEXA Mini LFで素晴らしい撮影経験をされている河津太郎さんや、「4K HEALING 41°-45°north latitude」で、ALEXA 65での撮影をされたばかりの山田康介さんにぜひ出演して頂き、その経験を通してどのようにしてラージフォーマットのカメラが、彼らのアーティスティックな創作活動に役立ったかを語って欲しいと思いました。

河津さんのプロジェクトでは、特にALEXA LFとALEXA Mini LF、そしてシグネチャープライムレンズを使って頂きました。今回はさらにSignature Zoomが日本での実機初披露となりました。このSignature Zoomが、Signature Primeのパフォーマンスに合わせて作られたことを、実機を通してより多くの撮影監督たちに知って頂きたかったのです。

山田智和さんは、若い世代の撮影監督としてとても才能のある方で、実はこのイベントの計画段階では、京都や大阪のフィルムスクールの生徒も参加する予定だったので、若い世代に人気のある彼の話を聞くことで、彼らの才能をさらに引き上げる手伝いができるのではないか?と考えたんです。若い世代の成功者の一人である山田智和さんとさらに若い世代がその経験を分かち合うのもいいチャンスだろうと考えました。

(結果的には学生の参加はコロナ対策のため見送られた)

山田智和氏トークセッションの様子

山田康介さんから、ALEXA 65の素晴らしいパフォーマンスとそのパースペクティブの正確さについてお聞きしました

あのプロジェクトでALEXA 65のシステムを国内で初めて採用して頂いたことはラッキーでした。自然ドキュメンタリー番組なので、本当は山田さんがALEXA 65を選ぶとは想像もつきませんでした。広い北海道の大地の美しい映像ですが、4K/HDRのTVモニターで確認するとさらに本当に素晴らしい映像だということが確認できます。

他のプロジェクトでもALEXA 65を採用・選択することが検討されていますが、今後もっとALEXA 65で撮るチャンスは増えると思います。昨日のセッションの質問でもありましたが、65mmでのプロジェクトが日本でどれだけ需要があるのか?ということが重要になるでしょう。いつ35mmを使うのか、いつスーパー35mmを使うのか?どのフォーマットがそのプロジェクトにとって何が必要かによりますね。

アジアでは今現在、まだご紹介できていない、ALEXA 65で撮影されているプロジェクトがかなりたくさんあります。ぜひ日本でももっとALEXA 65で撮影された作品が見たいですね。

2日目のライティングに焦点を当てたワークショップは、最新のARRI機材と京都の伝統的な照明機材をマッチさせた、とても興味深い内容でしたね

あれはとても面白かったです。最初の打ち合わせで、照明技師の杉本崇さんとワークショップをどうするか話をしました。京都のまさにこの場所(インタビューしているこの席!)で打ち合わせをしましたが、その時は彼が日本アカデミー賞の最優秀照明賞を獲るとは思ってもいませんでした。

ワークショップでは新しいSignature ZoomとSignature Primeを、2台のALEXA Mini LFを使って同時に撮影してお互いを比較検証して見せたいと思っていました。それぞれの特徴を見せられるシナリオとセットを作ってテストできれば素晴らしいと思いました。もちろんそこにSkypanelやOrbiterを使った状態も見せたかったのですが、杉本さんと相談した時に、同時に照明も雷のシーンの表現には(京都の)伝統的なライティングシステムも、同時に使って比較してみるのはどうか?というアイデアを頂き、それはいい!と思いました。

実際に杉本さん自ら照明の仕込みもして頂いて、私も(アークライト)を使っているシーンを見たのはビデオでしか見たことがなかったので本物を見たのは初めてだったのですが、光のスパークと匂いとかも凄かったです!今後Orbiterにもサウンドエフェクトも仕込めるようになると面白いかもしれませんね。でも我々の録音作業が大変そうだけど(笑)、とても面白い比較でした。杉本さんはOrbiterが新しいLEDシステムなので、光の分析をしてより現場に適応させるなど、とても興味深いフィードバックをしてくれました。

日本の伝統が息づく京都で、ARRI祭を開催したことはどう感じていますか?また今後の開催についてはどのように考えていますか?

ARRI祭をまずこの京都撮影所で開催することが可能になったというだけで嬉しいことでしたが、その後、多くのサポートを受けられたことやタイミングがちょうど良かったこともあって、ここが最初の開催地として今回成功できたことは嬉しく思います。

いまは厳しい状況下ですが、最初に困難なところから初めることは価値があったと思っています。東京で先に開催できれば良かったのですが、コロナ禍におけるタイミングもあって、今年は京都での開催になりました。おそらく(場所によって)それぞれ開催の形式が違うと思いますが。来年も開催できるかどうかはもちろんコロナ禍の様子次第ですが、今年のマーケティング予算もどう決めるのかがとても難しかったし、今後の開催についても参加するゲストに対して、充分責任を持って開催できる条件、つまりスタジオ内における喚起システムやソーシャルディスタンスが充分保たれるか、参加人数を制限してしてもその内容が満たされるかことを確認しなければなりません。

またイベント開催後も皆さんが健康でいられることが重要ですし、我々もそう願っています。条件さえ揃えばできれば東京でも開催したいですし、そのタイミングを見ているのですが、とても難しいことです。

最後に日本のARRIユーザーに向けてメッセージをお願いします

昨年2020年は自分も含めて、誰しもが大変な生活を強いられたと思います。私自身は昨年(2020年)の3月以降日本から海外に出ていません。これは私が日本に滞在した最も長い期間になりました。でもそのおかげで日本のマーケットについてより深く理解する時間を得ました。

私の立場上、通常であれば多くの他の国々へ行かなければならないので、これまでは多くのことに集中できませんでした。しかし昨年は日本で起こった様々な状況を理解する時間ができました。これからもっとよく理解できるような時間を過ごせたらと思います。

昨年の初めに、舟山美千代さんが我々のマーケティングチームに参加しました。これからは彼女の以前の経験値を加えて、これからはARRIに求めているものは何なのか?といった、よりユーザーからのダイレクトなフィードバックを得やすくなるので、さらに我々のサービスが拡大できると確信しています。

またその拠点となるARRI Japan株式会社の事務所についても、昨年末から探していてすでに幾つかの物件に絞り込んでいます。そこでは国内でのサービスセンターなどの設置も考えており、いま全力で取り組んでいる最中です。

今回はこの素晴らしいイベントを多くのARRIユーザーの方に応援して頂いてありがとうございました。ぜひ今後のARRI Japanの活動にも注目して頂きたいと思います。

txt:石川幸宏 構成:編集部


◀︎Vol.04 [ARRI my love] Vol.06▶︎