RAID ブースレポート「POLARIS」

Live / Cinematic Super Multi-Camera System POLARIS

RED Digital Cinema(以下:RED)を扱うRAID社がPROTECH(日本ビデオシステム)と共同開発した「POLARIS RD-QX1」「POLARIS RD-QX100」をNAB2023の会場で初展示。POLARISは、RED Digital CinemaのDSMC3シリーズに対応しているカメラ用に光伝送機。ベースステーションで全てコントロール可能となっている。

RAIDはNABにブースを構えていたが、人の往来が絶えず、RED愛に溢れるユーザー達が集っていた。

POLARIS RD-QX1、POLARIS RD-QX100は、REDを使用した放送やライブイベント、スポーツイベントの作品制作がシステムカメラと同様に運用できる様になる。中でもAJA社製ColorBoxを通してライブカラーグレーディングが行えることは、現場の声を反映していると言えるだろう。すでに多くの引き合いがきているそうだ。同時期にREDからも「RED Connect」が発表されNAB2023の会場で紹介されていたのも印象深い。今回改めてRAID社CEOの板倉正幸氏に話を聞いてみた。

REDで使いたい。POLARISが生まれるまで

――RED専用のPOLARISの開発経緯を教えてくださいブロードキャスト用に組み上げられたRED V-RAPTORとPOLARISの組み合わせ

板倉氏:

Inter BEE 2022の当社ブースにて、RED Connectのベースとなる、8K映像のリアルタイム表示のデモンストレーションを行いました。その際に、REDカメラでのライブシステムのお問い合わせを何件も頂き、マーケットリサーチを行いましたところ、RED ConnectのIPベースのRED RAWデータ転送後のワークフローと共に、従来のSDI信号をベースにした、ほぼディレイゼロで通常のブロードキャスティングカメラの様に使用できないか?というニーズからこのプロジェクトは立ち上がりました。
国内では実績を一番お持ちのPROTECHさんに開発協力を頂き、コラボレーションし、 NAB2023のタイミングで発表そして出展させていただきました。

――かつてREDもブロードキャスト製品を出していた時代がありましたね

板倉氏:

よくご存知ですね。REDの歴史としてRED ONEリリース後に、その時にブロードキャストモジュールがありましたが撤退した歴史があります。POLARISはブロードキャスティングに寄り添う仕様にしました。

――テレビ業界の人には、REDカメラへの馴染みが少ないのではないでしょうか?

板倉氏:

これまではそうだったかもしれませんが、映画、Netflixそしてテレビなど業界を行き来している人が増えており、市場状況も変わり始めてます。
RED社にDSMC1時代のブロードキャストモジュールをDSMC2でのリリースを依頼しましたが、REDの基本はシネマカメラというスタンスから、製品化されなかった過去があります。
DSMC3になり、カメラの多様化の流れがREDにも訪れ、今回のファイバーオプティクスシステムであるPOLARISがその状況が更に劇的に変えると思います。今回のNAB2023に出展し、REDカメラをもっと幅広い分野で利用したいという要望が日本だけでなく、米国を始め、多くの国々からの問い合わせには正直驚いています。
POLARISは、海外ドラマ・スポーツなどの様々な映像制作の現場で、遠隔操作したいリクエストは多く、さらにSDIを送って、SDIで色を調整して、そのままライブで出力したいというリクエストを十分満たしており、ブロードキャスト的な使用はもちろんのこと、今までのREDの撮り方も可能、ジンバルに載せて光ファイバー伝送するなど、多様な使い方ができると考えております。

――なるほどですね。気になる価格帯はどうでしょうか?

板倉氏:

価格は現時点(2023年4月19日)では未定です。販売時期は2023年5月を予定しており、PROTECHさんは製造、RAIDは販売という役割ですね。
お客様それぞれの求める仕様が違っており、基本ベース構成からオプションで機能追加を行う特注システムになると考えてます。例えばRED V-RAPTOR SDIは12G、2系統出力ですが、1系統でも良いお客様もいらっしゃいます。他にも音はいらない、インカムもいらないなど要望が個々に異なるためです。
POLARISの基本構成はカメラアダプター、ベースステーション、光ファイバーになります。基本希望価格は合計200万円以下でご提供できないかなと考えています。これにオプションで、カメラ操作機能、アイリスリモートコントロール機能などがProtechさんの特有技術がふんだんに盛り込むことも可能です。

POLARISの注目すべきポイントは?

――RAID社初システム製品のPOLARISですが、特に注目のポイントはどこでしょうか?

AJA ColorBoxを通し、Colorfrontエンジン使用でカラーグレーディングも行える

板倉氏

実は、カメラのアクセサリーなど細かなオリジナル製品はあるのですが、これだけのシステムのものは初めてとなります。
POLARISのキャッチフレーズとして「Live / Cinematic Super Multi-CameraSystem」と言い方しています。REDのカメラがあり、そこに光ファイバーシステムがあって、映像転送します。さらにレンズコントロール、フォーカスズーム、アイリスコントロールなど拡張性の高いものなのです。
中でもカラーグレーディングに関してキーポイントになります。良いタイミングでAJAさんからColorBoxがリリースされ、Colorfrontエンジンが使用できるのです。
この中にライブモードとブロードキャスティングモードがあり、ブロードキャスティングモードでやることで面白い使い方ができると思います。このスタイルは、放送系のイメージですが、グレーディングのセットに繋がっているのは、注目していただける点かと思います。

――RED CONNECTとの棲み分けはどうでしょうか?

板倉氏

RED CONNECTはRED CONNECTでの使い方があります。RED CONNECTを我々も販売しますが、SDIのワークフローを目指すのならばPOLARISをご紹介するという形ですね。
やはりR3DをRAWで撮って処理するという中で、やはり一つの今年のキーワードはクラウドという観点から見ると、RED CONNECTで撮ったものをクラウドにアップする方法も考えられます。ただ、POLARISにおいてクラウドは全く考えていないです。

POLARIS(北極星)に込めるMade in Japanへの想い

――POLARIS(北極星)とした名前の由来を教えて下さい

板倉氏

紆余曲折ありまして、星の名前にしようとなり、どこでも見ることができる存在で中心の存在になろう。多分次に出てくるものは同じ星の名前で行くと思います。RAIDのオリジナルプロダクトとか、そういった感じですね。
POLARISは、もう一つ込められた意味があります。Made in Japanを海外へ向けて、打ち出していきたいと思っています。
今までは、REDだけではなくTeradekであったり、SmallHDであったり、弊社で扱う製品は輸入品で占められており、余裕がなかったのは正直なところあります。
ただ今回はこのニーズがあり、ここが正念場かつチャンスだと思います。あえてInter BEEではなく、NABに出展したというところですね。市場的にMade in Japanを広げたければ、海外でプレゼンを発揮するのみです。そこでNAB出展がスタートかなと考えました。

――メーカーになるということですか?

板倉氏

メーカーと言いますかファブレスですよね。アメリカ以外の国々からも引き合いが来ている状況です。今回分かったことは、REDをこよなく愛している方多いということでした。
REDで仕事をしたいと熱く語って下さる方がたくさんいらっしゃいます。それは世界各国共通かなと思いますが、RED愛があるのでしょうね。仲間意識があり、十分コミュニティができるなと感じています。

――POLARISの今後を教えてください

板倉氏

皆さんご存じの通り、REDは現在、KOMODO、V-RAPTOR(VV)、V-RAPTOR(S35)、V-Raptor XL(VV)、V-Raptor XL(S35)がライナップされてます。REDのUnder Developmentマインドは失われておらず、カメラはまだまだ進化し、ニーズに応じて次世代のものがリリースされます。この進化に合わせ、我々のPOLARISもお客さんのニーズ合わせる形で進化していく予定です。本当に必要な機能は何か?リクエストを頂ければ、多くの知見や特許も実績も力強いパートーナー企業とそれに答えていきます。
これがスタートの製品となりますが、長くお付き合いできるシステムになるのかなと思っています。ご愛顧いただければと思います。

Live / Cinematic Super Multi-Camera System POLARIS

「POLARIS」は、 RED V-RAPTOR 8K S35 、RED V-RAPTOR 8K VV + 6K S35対応の光伝送機。「RD-QX1(カメラアダプター)」と「RD-QX100(ベースステーション)」で一つのカメラシステムとなっている。USB-TypeCをそれぞれに搭載し、リモート制御信号や電源を伝送する。これによりRED CONTROLが可能で、SDIは2系統送信(12G-SDI対応)、AES/EBUはRD-QX100(ベースステーション)から RD-QX1(カメラアダプター)へ2系統送信が可能。

「POLARIS RD-QX1」カメラアダプター

カメラアダプター「RD-QX1」。REDのカメラコントロールが可能で、RCPのプロトコルの入力を持ち、SDI×2系統、タリーの返し、インターカムの入力ができる。全て集約して1本の光伝送のケーブルでベースステーションへ伝送し、電源はベースステーションから。

POLARIS RD-QX100ベースステーション

ベースステーション「RD-QX100」にはカメラからデータ伝送される。SDI OUTはAJAのColorBoxを通してカラーグレーディング、ライブグレードも可能。カラーコントロールも全て行え、遠隔操作も行える。デマンドも付属しており、ズームのコントロール、フォーカスのコントロールも全て行える。アイリスのコントロールの方もベースステーションで全てコントロール可能。

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