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新型コロナの流行をきっかけに、ライブ配信や動画マーケティングが増加しています。それに伴い、外部の映像のプロに委託していたような案件も、内製化する企業が増えてきました。

今回は、「モンスターストライク」などのスマホゲームや公営競技・スポーツ関連ビジネス、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)など多岐にわたる事業を展開している株式会社MIXI。同社では企業としてかなり早くからインハウス動画制作に取り組んでおり、2020年にはオフィスを移転し、より本格的なスタジオを構築しました。

同スタジオは通常の配信に加え、Unreal Engineを使った配信もできるスタジオです。メインの第1スタジオと第2スタジオが隣接しており、どちらも全面グリーンバックになっており、同じコントロール室からスイッチングや合成ができるようになっています。今回、同社デザイン本部、動画クリエイティブ室 室長の越智純平氏、動画クリエイティブ室 クリエイティブディレクターの谷賢史氏、動画クリエイティブ室 エディターチーム リーダーの野上祐平氏にお話を伺いました。

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左から、越智氏、谷氏、野上氏

インハウス動画制作を始めたきっかけ

越智氏:

僕がMIXIに入る半年以上前に内製化が始まっていたんですが、2014年に動画クリエイティブ室の前身の部署でプロモーション関連の制作を行う部署が立ち上がりました。当時はちょうどYouTubeの人気に火がつき始めた頃だったんですが、その時に弊社でも社内で映像コンテンツを制作しようということでスタートしたと聞いています。
インハウスでの配信に関しては、僕が入社してからスタートしました。当時生配信はそれほど流行っていませんでしたが、(会社として)生配信もできた方がいいよね、ということで、分からないなりに試行錯誤しながら始めました。最初は、社員の休憩スペースで撮影していたんですが、周りの人の声が入ってしまうなどといった問題がありました。そこでちゃんとしたスタジオが欲しいとリクエストしたら、たまたまほとんど使っていなかった部屋があったので、そこを壊してスタジオにしようということでスタジオができました(笑)。

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社内スタジオについて

越智氏:

初めのスタジオではBlackmagic DesignのコンバーターやDeckLinkなどのキャプチャーカードなどを導入していました。ただ、当時はあまり生配信の機材は充実していませんでした。その頃、弊社のデジタルエンターテインメント事業のブランドだった「X F L A G」(後にMIXIに統合)の実店舗を作ることになって、そこから生配信ができるような設えにしたので、社内のスタジオはだんだん使わなくなっていきました。実店舗の方では、Smart Videohub20x20やTeranex Mini SDI Distribution 12Gを使っていました。
弊社が2020年に現在のオフィスへ移転したことをきっかけに、本格的なスタジオを構築することになりました。移転してから2年後、Unreal Engineを使ったバーチャルプロダクションもできるスタジオにしようということになって、まだ完成ではありませんが、現在の形になりました。

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野上氏:

第1スタジオはATEM Mini Pro ISOとBlackmagic Pocket Cinema Camera、第2スタジオはATEM Television Studio Pro 4KとBlackmagic Studio Camera 4K Proの組み合わせで運用しています。通常の配信はグリーンバック合成などもスイッチャーで行いますが、Unreal Engineを使う配信の場合は合成もUnreal Engine側で行っています。
映像関係は全てビデオルーターのSmart Videohub 40×40に集約させて、そこから割り振られたものをPCに搭載したDeckLinkにアサインしています。第1スタジオは手軽な内容の配信や第2スタジオが空いてない場合に使ったり、動画制作の際の物撮りの際に使ったりしています。

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動画クリエイティブ室について

越智氏:

現在、動画クリエイティブ室は30数名。編集をするスタッフがその中の7名ほどで、そのうちの3名が生配信を兼務しています。ディレクターも7~8名在籍しています。弊社のディレクターは、テレビ出身のディレクターや、CMや番組の制作会社で働いていた経験のある方が多いです。ポストプロダクション出身者は僕だけで、谷はゲーム業界出身です。

谷氏:

サウンドデザイナーとしてゲーム制作に長く携わっていました。そこでUnreal Engineを使っていたので、MIXIでの映像配信にも活かせないかと思って現在のスタジオにもUnreal Engineを使ったバーチャルプロダクションの機能を持たせました。元々音響機材は詳しい方だったのですが、今回の件で映像機材も調べていくうちに、おもしろさの沼にハマっていきました(笑)。
弊社では音響スタジオもあるので、そちらにもVideohubやUltraStudio 4Kを使っています。そこでは映像のMAや音楽、ゲームや制作やスポーツのボイス収録、さらに最近ではPodcast番組の収録など、様々なコンテンツを制作しています。

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Unreal Engineや4K配信も可能な、日々進化し続けるスタジオ説明画像
通常の配信番組
Unreal Engineや4K配信も可能な、日々進化し続けるスタジオ説明画像
バーチャルプロダクションの配信番組
映画『プロメア』 ©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

MIXIでのインハウス制作

野上氏:

配信業務は、基本的には「モンスターストライク」や「コトダマン」などゲーム関連の配信がメインで、月に平均3~4回の配信を行っています。あとは、社内向けイベントのような、社内に向けて発信するような配信もあります。
また、弊社ではスポーツ関連事業を行っていますが、弊社傘下のプロバスケットボールチームの千葉ジェッツやJリーグのFC東京の動画を制作することもあります。内容はその時によって様々ですが、バラエティ系のものやPVのようなものもあります。最近は千葉ジェッツのCMを撮影することもありますね。社内向けの配信で、そういった動画を流すこともあります。動画編集は週に15本くらいやっていますね。

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越智氏:

Blackmagic Pocket Cinema Cameraは配信でも動画制作での撮影にも使っています。BMPCCはカラコレがしやすいので、カメラに関してはずっとBMPCCが欲しいと思っていたんです。社内にもBMPCCが好きなディレクターがいて、DaVinci Resolveと一緒に使っていますね。このカメラを使うと、映像が印象的に仕上がると感じます。

とめどなく溢れるアイデアを実現するのに必要なBlackmagic Design製品

越智氏:

Blackmagic Designの製品はスタジオを今のオフィスに構築する際に多数導入しました。ワンストップに近い形で、カメラがあったりルーターがあったり、やりたいことをほぼ1つのメーカーで揃えられるという点でBlackmagic Designを選定しました。

導入機材一覧

  • Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K
  • Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K Pro
  • ATEM Television Studio Pro 4K
  • ATEM Mini Pro ISO
  • Blackmagic Studio Camera 4K Pro x2
  • Blackmagic Studio Converter
  • Blackmagic Focus Demand x2
  • Blackmagic Zoom Demand x2
  • Multiview 16
  • Teranex Mini SDI Distribution 12G
  • Teranex Mini Rack Shelf x4
  • Mini Converter Sync Generator
  • Smart Videohub 12G 40×40
  • Smart Videohub 12G 20×20
  • Teranex Mini SDI toHDMI 12G
  • DeckLink 8K Pro x6
  • UltraStudio HD Mini
  • SmartView Duo
  • SmartView 4K
  • Video Assist 3G x3
  • Ultimatte SmartRemote 4
  • Teranex Mini Audio to SDI 12G
  • Blackmagic Web Presenter 4K
  • DaVinci Resolve Studio

谷氏:

作りながら、ああしたい、こうしたい、とアイデアが出てくるので、スタジオはずっと構築中のような感じです。そのアイデアを具現化するために、こういう機材が欲しいとなった時にまとまったシステムを考える時はBlackmagic Design以外にはあまりないんです。
あと、ユーザーが多いので、海外でも日本でも検索すれば情報が出てくる点も導入してよかったなと思います。Unreal Engineに積んでいるDeckLink 8K Proも海外のバーチャルプロダクションの事例を調べていてDeckLinkを使っている方が多かったので導入しました。

越智氏:

谷が担当しているUnreal Engineを使った配信と、野上が担当する通常の配信を同じスタジオで行うと、かなり配線の組み替えが必要でした。それを組み替えなくて済むようにVideohub40x40を導入しました。Videohubは冗長性を持たせるためにこの40×40モデルにしたのですが、入力がだいぶ余るかと思っていたら使っているうちにどんどん埋まりつつあります。

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谷氏:

Blackmagic製品は、価格が安くて自分が求めている性能が得られるので、フットワーク軽く運用を試せることも嬉しい点です。Unreal Engineに映像を取り込む時に、できれば高解像度のものを入力しておきたいなと思いました。4Kはデータや処理の重さの懸念もあるのですが、Unreal Engine側で映像サイズを拡大する時はもちろん、Unreal Engineで使わない場合でも今後は4Kの活用が進むことが予想されたので。
そこでいろいろ調べて、弊社のスタジオのサイズ感と価格帯のベストレンジがBlackmagic Studio Camera 4K Proでした。このカメラがすごくいいのは、イーサネットケーブル1本ですべて接続が完了することです。

野上氏:

配信前は、演者さんのアテンドをしたり素材の差し替えが入ったら、すぐに対応したりと、かなりバタつきます。その中で、以前まではスタジオ側に行っていろいろカメラの設定を変えたり、ズームやピントを合わせたりしていましたが、今はBlackmagic製品で統一していることで、コントロール室にいながら一括で終わらせることができるので、その点が使っていて一番助かっていますね。

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インハウス制作のメリット

越智氏:

昔と違って、今は動画制作や動画配信がプロでなくてもできてしまう。YouTuberの方のように、映像のプロでない層が面白いものを作って、それが受け入れられています。機材やソフトウェアの使い方も検索すればたくさん情報が見つかるので、インハウスで動画制作しやすい時代です。
Blackmagic Designのように、いいものでも安く手に入れることができる機材もあるので、インハウスでやるメリットは高いと思います。動画の編集だけでも、外注すると内容にもよりますが10万円以上はかかってきて、場合によってはさらにかかります。それを継続していくとやはり社内でやる方がメリットが高い。
そして、社内にいるからこその事業理解やレスポンスの速さ、技術的に作るだけでなく、提案もできるという点もインハウス制作の良さだと思います。

これからインハウス動画制作をする人たちへ

谷氏:

これから自分たちでも社内で配信や動画制作をしたいという会社さんは、どういうことをやりたいかをベースに、まずはBlackmagic Designの製品でできないか探してみるっていうのが、1番手っ取り早いですね。
例えば、2つカメラがあって、演者さんが2人いて、カメラ2つとパソコンの画面を切り替えたいならATEM Mini Proでできてしまう。この製品を使ってるユーザーは多くて、安心感もあります。
リップサービスとかではなくて、業務用機器は、最初専門的すぎて情報が少なく、とっつきにくいイメージがあると思いますが、僕が音響から映像に入っていた時に、Blackmagic Design製品が1番とっつきやすかったです。ネットに利用者の情報も多くて、トラブルシューティングの記事も見つけやすいです。
とりあえずこの製品とこの製品を買って繋げれば、こういうことができるっていうところで、いろいろワクワクした製品を揃えているのがBlackmagic Designだったんですよね。例えば、HDMIからSDIに変換したい場合も、大きなコストをかけずに実現するコンバーターが揃ってます。小さなコストで試せるところは、安心感に繋がっていると思います。

野上氏:

メーカーによってやっぱり「癖」みたいなものがあるじゃないですか。弊社のようにBlackmagic Design製品で統一することによって、その「癖」が統一されると初めて動画配信や動画制作をやる人たちには、スムーズに入りやすくなると思います。