正式リリース!動画コラボレーションツール「Dropbox Replay」とは

2023年5月に正式リリースされた動画コラボレーションツール「Dropbox Replay」。それ以前にベータ版が公開されていたので体験した人も多いだろう。

今回は、Dropbox AustraliaのWayne Dakin/ウェイン・ダキン氏にDropbox Replayの開発や機能の概要を、株式会社Tooの村杉卓也氏にDropbox Replayが正式リリース後に搭載した新機能の紹介と、Dropbox Replayを導入している企業に評判の良い機能などについてお話を伺った。

Dropbox AustraliaのWayne Dakin氏(左) 株式会社Too 村杉卓也氏(右)

Wayne Dakin/ウェイン・ダキン氏

Dropbox Australia テクニカル・ソリューション・スペシャリスト

村杉卓也氏

株式会社Too クリエイティブアカウント部セールスサポートチーム
DaVinci Resolve 認定トレーナー

――Dropbox Replayの開発・リリースの背景を教えてください

Dakin氏:

私は以前放送局やポストプロダクション業界で20年以上働いており、4年程Dropbox Replayをユーザーとして試用する機会がありました。そして現在Dropboxに在籍しています。なので、さまざまな質問にユーザーの目線でお答えできるかと考えています。
Dropbox Replayは、様々なビデオプロジェクトにおけるレビューやコラボレーションに関わる問題に対する解決策としてデザインされ、Dropbox社内で開発を行いました。それまでは、電子メールに巨大な容量のビデオファイルを添付して、その動画に関する長文のコメントと共にやりとりしていたわけですが、そのファイルの容量にも悩まされていましたし、メールでの文章でのやりとりでは伝えたいことが十分に伝わらない、誤解を招いてしまうといったことも多くありました。
これは、小規模な個人での映像制作から大規模な企業でのビデオプロジェクトまで同じようにかかえている問題で、他の一般的なファイルと異なり、巨大な容量のビデオファイルをネットを介してやりとりするのはどうしてもある程度限界があります。
そこで、Dropbox Replayでは、Dropbox Replayにアップロードされた動画ファイルを、プロジェクトでコラボレーションしているメンバー各々が好きな場所で、ダウンロードすることなくビデオコンテンツを閲覧し、自由にコメントを追加できるようにしました。
フィードバックのための長文のメールにビデオファイルを添付したり、何らかのメッセージサービスにビデオファイルを投稿し、さらにフィードバックに必要なコメントを掲載するのではなく、ビデオファイルに直接コメントを追加できるようにする、というのが我々が重要視しているDropbox Replayの核となるコンセプトになります。

――Dropbox Replayの概要を紹介してください

Dakin氏:

Dropbox Replayは、ビデオ、オーディオ、画像ファイルをメインとするコラボレーションツールです。Dropbox Replayを使うには、Dropboxアカウントが必要ですが、それはコンテンツのファイルをDropbox Replayにアップロードする場合で、例えばクリエイティブチーム以外の関係するメンバーがコンテンツについてのフィードバックを行う場合には、アカウントは必要ありません。
Dropbox Replayのメインの機能は、コンテンツに対してコメントを追加ができることです。しかも、目的のフレームに対して正確に直接追加することができます。上述したように、私は20年以上映像業界にいたわけですが、これはビデオやオーディオコンテンツについてフィードバックをやりとりする際にとても重要なことです。
また、1つのコンテンツをブラッシュアップしていく過程で複数のバージョンが作られますが、それらを並べて見比べたり、一度以前のバージョンに戻したりといったことができます。そして、ライブレビューセッションという機能で、関係者がそれぞれの場所で同時にコンテンツを視聴しながらフィードバックを行うという機能もあります。他には、コンテンツにフィードバックをするユーザーに対して、有効期限やコメントの可否、ファイルのダウンロードの可否といった権限のコントロールも可能です。
最後に、Dropbox ReplayはAdobe Premiere Pro、After Effects、DaVinci Resolve、Final Cut Proといったプロフェッショナル編集ソフトとのインテグレーションが可能です。コンテンツに対して関係者が行ったフィードバックのコメントを、そのコンテンツのクリエイターが上記のソフト内で直接確認することができます。

――Dropbox Replayの価格プランはどのようになっているのでしょうか

Dakin氏:

Dropbox Replayは、Dropboxのアカウントにアドオンとして追加する形になります。価格は年間14,400円/ID(税別)となります。Dropboxの価格は使用できるストレージ容量などで複数のプランが用意されていますので、仕事の規模に合うものを選んで頂ければと思います。
また、機能制限はありますが、Dropboxのアカウントがあれば無料で体験できるバージョンもありますので、ぜひこの機会に一度お試しください。

――Dropbox Replayのアピールポイントを教えてください

Dakin氏:

DropboxとDropbox Replayを使うための費用が比較的リーズナブルな点が挙げられます。また、関係者がコンテンツの閲覧やフィードバックをするだけであれば、Dropboxアカウントは必要ないので手間なく参加することができます。そして、Dropbox Replayではプロフェッショナルユースのコーデックを含め非常に多くのビデオフォーマットに対応しているので、フィードバックをする関係者の視聴環境に関係なく、様々なコーデックのビデオファイルを閲覧することができます。
既にDropboxは世界中で多くの方々に使って頂いており、既存のサービスにプラスする形で使えるのも利点だと考えています。

――Premiere ProとDropbox Replayの連携について教えてください

Dakin氏:

Premiere ProにDropbox Replayのエクステンションをインストールすると、Premiere ProからDropbox Replayに接続し、Premiere Pro内に画面を呼び出すことができます。
Premiere Proで作られたコンテンツをDropbox Replayで閲覧している場合、Dropbox Replay側の再生ヘッドを移動させると、Premiere Pro側の再生ヘッドも同期して動きますし、Dropbox Replayで追加されたコメントもPremiere Proのタイムラインにマーカーとして表示させることができます。
そして、現在プログラムモニターに表示されているシーケンスを、Premiere Proから直接Dropbox Replayに書き出すことができます。このような連携も含め、エディターを含めた関係者でのフィードバックにも非常に有効なソリューションだと考えています。

    テキスト
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――海外での事例を教えてください

Dakin氏:

NRL(National Rugby League)は私が以前所属していた会社で、当時私もDropbox Replayを使用していました。スポーツ関連の組織で、現在でも社内でのやりとりや、社外ともマーケティングや広告関連でDropbox Replayを日々活用しています。

Dakin氏:

もう1つはサンダンス映画祭です。この映画祭に出品されている長編映画の多くにDropbox、Dropbox Replayが活用されています。特にコロナ禍ではリモートでの作品制作を余儀なくされ、作品に関わっているクリエイター同士のフィードバックに貢献できたと考えています。

Dropbox Replayの便利な機能とは

――Dropbox Replayについてはどのような評価が多いでしょうか

村杉氏:

様々なお客様とお話をしていると、「Dropboxに容量無制限のプランがある」「最終的な成果物の確認を関係者で同時に行うことができる」、この2つについての評判がすごく良いですね。
今までですと、Dropboxをはじめとするストレージサービスを使ってファイルのやりとりをして、それに対してのフィードバックはメールを使う、というのが一般的だったものが、Dropbox Replayを使うことで、アップロードした成果物に対して関係者にリンクのURLを送るだけで内容の確認ができて、コメントも打てて、ダウンロードも可能です。そして更新されたバージョンが複数あればそれらを比較することもできます。
他には、コンテンツの編集作業中に関係者でフィードバックを出し合うサービスは他にもありますが、その先の配給元やテレビ局などのクライアントにファイルを渡す部分も同じサービス内で完結できるというところが魅力的だという意見が多いです。
また、DropboxのAdvancedプランは最低3ライセンスから導入が可能で、そこにReplayアドオンを追加することが可能です。3人以上のエディターがいれば、十分にメリットがあるので小規模で展開しているお客様にも導入しやすいというのも好評の理由かと思います。

――お客様から特に評価の高い機能を教えてください

フレームをサムネイルとして保存

村杉氏:

テレビ番組など、ファイルの先頭がカラーバーなど内容が分かりづらい画であることが多いので、任意のフレームをサムネイルにできます。これはDropbox Replayのアカウントを持っていない関係者が、送られてきたURLを使ってアクセスした場合にも表示されるので、より分かりやすいのではないかと思います。

サムネイルにしたい箇所を指定
一覧を確認すると、指定した箇所(シーン)でサムネイルが表示されている

閲覧時に画質を選択可能

村杉氏:

Dropbox Replayにアップロードすると、エンコードされて軽いファイルも生成されているようで、表示する画質が選べるようになっています。たとえば携帯電話でテザリングしているような場合は画質を落として見るといったことも可能なので環境に合わせて適切な画質が選択できます。

Dropboxアカウントを持っていない人ともコンテンツの共有が簡単にできる

村杉氏:

携わっている作品の確認をするだけのために、新たなアカウントを作成しなければならないということを面倒だと感じる人もいます。その手間が原因でフィードバック作業のスピード感がなくなる場合も実際にあります。Dropbox Replayでは、リンクのURLを発行することで、Dropboxアカウントのない関係者にも成果物を確認、フィードバックをもらうことができます。精神的な面も含めてハードルが下がります。

ライブプレビューセッション(ライブレビュー機能)

村杉氏:

ライブレビュー機能ではコンテンツを見ている関係者全員が、同じタイミングで動画を再生しながら内容の確認が行なえます。再生を止めると全員が同じフレームをみていることになるので、その画面に直接線などを描いて「この部分が」というようなやりとりができます。非常に直感的だと思います。

ライブプレビューセッションの様子。同時に複数名で試写が可能だ

1フレーム毎にキーボードショートカットで移動可能

村杉氏:

フレーム精度でコメントが追加できるので、移動がフレーム単位でキーボードショートカットを使って送る、戻るができるとコメント追加がより効率的に行えます。

――正式リリースで搭載された評判の良い新機能を教えてください

バージョン比較

村杉氏:

修正などで複数のバージョンが作られた場合、それらを並べて表示して、変更点などの確認ができます。両方の映像が同時に再生されるので視覚的に分かりやすいです。

    テキスト
バージョン違いを比較でき、修正反映などが視覚的に確認しやすい※画像をクリックして拡大

Dropbox ReplayからDropboxにアーカイブ

村杉氏:

ベータ版ではDropboxからDropbox Replayにコピーすることはできたのですが、正式バージョンでは逆も可能になりました。これにより、複数の動画バージョンやコメントを一括でDropboxに保存、共有するなど、作業効率が一段と上がりました。

Google Driveからファイルをコピー可能に

村杉氏:

Google Driveを既に使っている方がDropbox Replayを使いたい場合もあるかと思います。全てのサービスをDropboxに移行するというのが難しい場合もあるので、クラウド同士の連携はユーザーにとって柔軟なワークフローが可能になります。

複数フレームを範囲指定してマーカーを設定可能に

村杉氏:

特定のフレームではなく、複数カットに跨るような範囲で修正の指定をする場合もあります。正確に範囲を指定してマーカーが設定できるようになったので、フィードバックの確認がとても楽になりました。

修正などを依頼したいフレームを範囲指定可能に

村杉氏:

他にも「文字起こし」「ロスレスオーディオ」「タイムコード表示」などの機能が追加されました。

――今後のDropbox Replayに機能リクエストはあるでしょうか

村杉氏:

今後はより多くのクラウドサービスとの連携が可能になると良いと思います。より多くのユーザーが導入しやすくなるのではと思います。
また、コンテンツを表示する際にウォーターマークを追加できる機能があると良いと思います。まだ発表前の作品を関係者で確認する場合が多いので、セキュリティという意味でも必要ではないかと思います。
また、細かいことかもしれませんが、多くの編集ソフトでJKLキーを使った再生が一般的になっているので、それに準じたキーボードショートカットが使えると安心するユーザーも多いのではと思います。
範囲指定のマーカーや文字起こし機能のように、お客様からのフィードバックを受けて、引き続き機能を強化しながら進化していくことを期待しています。