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はじめに
待望のグローバルシャッター方式フルサイズイメージセンサーが搭載されたカメラ「α9 III」がソニーから2024年1月26日に発売される。
筆者は写真と動画をよく使用するのでそれぞれの観点からα9 IIIというカメラが非常に気になっていた。発表時に最も気になったのが高感度画質、全速フラッシュ同調、フリッカーの変化、120fpsの高速連続撮影、精度の高いAF、プリ撮影、動画撮影時のダイナミックアクティブモードだ。
今回、星景、ポートレート、スポーツで使用する機会があったのでレビューをご紹介していきたいと思う。
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外観・操作性
新しくカスタムボタンC5と、ドライブモードダイヤルにメニューやカスタムボタンから切り替えられるモードを追加され、自由度がさらに広がった。特にC5は操作性という意味では個人的にありがたく、連写の切り替えなどのシーンで非常に役に立った。
静止画、動画、S&Qがそれぞれダイヤル切り替えとなったので、写真と動画を瞬時に切り替えることができ写真も動画も主流となっている現在では非常に使い勝手がいい。
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操作性はα7R V同様、ソニー独自の4軸機構の液晶モニターが採用されている。チルト式および横開きバリアングル式両モニターの利便性を兼ね備えているので使い勝手はα1で不満だった縦撮影でもストレスなくハイアングル、ローアングルができる。
液晶は約210万ドット、3.2型の高精細大型液晶パネル(アスペクト比3:2)、タッチ操作対応の広色域(DCI-P3相当)を採用。実際に屋外撮影時でも非常に見やすかった。
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過酷な環境下でも安心して撮影できる防塵・防滴に配慮されているので雪山での撮影でも安心して撮影できた。他にセンサー遮光幕があるのでレンズ交換時にゴミが入りにくく安心してレンズ交換ができるのもストレスフリーだった。
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可視光+IRセンサーによるAWBの安定
最新の画像処理エンジンBIONZ XRと画像処理アルゴリズムにより高い質感表現を実現。可視光+IRセンサーとAIプロセッシングユニットを活用し、日陰のシーンでも正確なホワイトバランスが得られるようオートホワイトバランスが適切に調整される。
また、人物の肌や植物の緑など個々に最適な色再現性や質感表現、光源に左右されない色の安定化や諧調再現性も高めている。実際にミックス光の多い環境でも肉眼に近いホワイトバランスを得ることができた。
つまりホワイトバランスが不安定な環境で役に立つこと間違いなしだと感じた。
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星景による高感度比較
高感度テストするには星景写真が打ってつけだと思っている。レンズの収差や高感度、長秒によるノイズの傾向などを調べやすい。さらに現像時に増感することでさらにその特徴が顕著にわかりやすくなるので拡張感度ISO125~25600を絞り優先(Av)増感+2.20で現像したデータを元に並べてみた。
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ISO125
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ISO250
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ISO400
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ISO800
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ISO1600
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ISO3200
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ISO6400
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ISO12800
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ISO25600
個人的な感覚だとISO1600まではシャープネスと解像度のバランスの許容範囲。ベース感度ISO250以下の拡張ISOで撮影するとハイライトの諧調がなくなるので日中でもISO250以上で撮影した方が良い。
ISO3200以上となると日中など光源がある中での使用であれば問題なく使用できる(下写真ISO6400、1/3200sec、F1.4)。
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ノイズ低減の実力
コンポジットRAW撮影では、一度にRAW画像を複数枚連写撮影(4~32枚)し、PC上でImaging Edge Desktop(TM)を使って画像をコンポジット合成し、中高感度でも解像を維持しつつ低ノイズな、JPEG、TIFF、そしてRAW形式(AXR)で出力できる。RAW形式はAXRとなっているのでLightroom Classic CCなどの現像ソフトでは使用不可能で注意が必要だ。
フリッカーの出る環境下で撮影してみた。
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フリッカーなどチラつきがあるような環境でノイズ低減(手持ちで撮影)して処理を行うと、ノイズが低減されると同時に色乗りが良くなる。しかし純正ソフトを使用しない人にとってDNG形式や元のARWで保存できるようになれば汎用性が高くなるのでぜひ改善して欲しい点である。
強力な手ぶれ補正
ダイナミックアクティブモードが搭載されたことにより動画撮影時、「アクティブモード」より手ぶれ補正の効果を30%以上向上。画角は狭くなるが、いざという手持ち撮影時に従来以上に安定して撮影できる。
全速フラッシュ同調
グローバルシャッターの大きな特徴であり、魅力の全速フラッシュ同調はストロボを使用するカメラマンにとってかなりゲームチェンジャーだと感じた。
従来、ストロボの性能をフル発揮するには1/250以下(α1は1/320)でないとハイスピードシンクロになり、ストロボにも負荷がかかり光量も落ちてしまう。
今までは日中でストロボを使用する際は大型のストロボ(Godox AD600ProやProfoto B10X Plus)でハイスピードシンクロを使用するか、NDフィルターを使用してシャッタースピードを制限する必要があった。全速フラッシュ同調機能を使用することで、シャッタースピード1/80000秒(連続撮影時は1/16000秒)まで同調撮影できるようになったのはひとつの革命だと感じた。
※F値が1.8より明るい場合で撮影すると、シャッタースピードが上限1/16000秒になる。高分解シャッター機能使用時、レンズ未装着時シャッタースピードは1/80000秒にならない。
ソニー純正ストロボ「HVL-F60RM2」、「HVL-F46RM」など対応するソニー製フラッシュを使ってシャッタースピード全速でマニュアル調光/TTL調光を使用した同調撮影が行えるが、それ以外のサードパーティー性のものを使用する際は発光タイミングを手動調整することで使用することができる。
シャッタースピードを変更した際など毎回タイミングを調整する必要があるので、面倒だと感じる人は純正ストロボ一択だろう。
今回のレビューではファームウェアの関係で純正ストロボHVL-F60RM2を手動で発光して使用してみたが大型の500Ws以上のモノブロックでハイスピードシンクロするよりも、クリップオンの純正で全速同調して撮影した方が光量が強かった。
シャッタースピード1/10000秒でHVL-F60RM2の光量1/2でこのような写真が撮れたのは非常に驚いた。機材も小型化できるうえに新しい表現ができるのでグローバルシャッター搭載の恩恵はかなり大きい。これだけでも買いだと思う。
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フリッカーについて
ローリングシャッター方式のイメージセンサーでは人工光により上下に不自然な明暗差が生じるフラッシュバンドが発生することがある。グローバルシャッター方式のイメージセンサー搭載のα9 IIIでは全画素を同時に露光して読み出しするのでフラッシュバンドが発生しないのが特徴。
下記は2連続撮影してみた結果。
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RAW撮影であればどちらも調整すれば使い物になるので安心してシャッターが切れるので大事な場面でも失敗になることはほぼないだろう。
動画撮影でのフリッカーの違いが面白かったので動画にしてみた。シャッタースピードを徐々に早くした結果である。
ローリングシャッター方式のα1と、グローバルシャッター方式のα9 IIIのフリッカーの違いとして、ローリングシャッターは横縞の早い点滅へと変化していくが、グローバルシャッター方式ではろうそくの火のような点滅の仕方へと変化する。
どちらにせよフリッカーは出てしまうのでフリッカーが出にくい1/50、1/60、1/100、1/120で撮影するのが良さそうだ。
高精度AFと120コマ連続撮影
AFに関しては動画を見てもらえればその凄さは一目でわかる。
奥から正面に被写体が移動してくるという、トラッキングでは一番難易度が高いシチュエーションでテストしてみた。AF-Cでゾーントラッキングで撮影してみたが、かなり遠いところから人物認識をしており、これには正直驚いた。さらにピントの精度が非常に高いので動き物でシャッターチャンスを逃せられないようなシーンでは現在のカメラではNo1のAF精度だと思った。
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スノーボードのような雪を被るシーンでも高確率でピントが合うので撮り逃しやピンとズレによる失敗を防ぐことができた。さらに最大120コマは微妙な動きでもベストなカットを後から探せるので美しい決定的瞬間を逃すことはまずない。さらにプリ撮影では最大1秒までシャッターを押してからさかのぼれるので鳥などのシーンでは強力な機能のひとつだと言えよう。スノーボードのターンの瞬間では秒間60コマか120コマで撮影する方が不規則な瞬間を狙えるのでプリ撮影はおすすめしない(笑)。
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作例
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まとめ
今回実際にフィールドで使用してテストしてみてわかったことは、ストロボの全速同調を必要とする人、シャッターチャンスを確実に捉えたい人、フリッカーに悩まされている人は絶対購入した方がいい。こんなにゲームチェンジャーなカメラは他にあるだろうか?それくらい使っていて感動を覚えた。
逆に長秒露光を必要とする撮影や超高感度、低感度による高画質を求める人には不向きなカメラなので正直おすすめはできない。棲み分けでローリングシャッター方式と使い分けるのがベストだと思う。
いずれにせよフルサイズのグローバルシャッターを世に出してくれたソニーは素晴らしい。画質に関する課題はまだまだあるだろうが、未来のカメラといって間違いない。
関一也(日本写真家協会会員)
写真家 礒村浩一氏に師事。2013年より写真、動画、ジャンルを問わず活動。ストロボ、写真、動画の講師、カメラ雑誌の執筆、寄稿、TVの動画撮影などを行う。著書「フォトグラファーのためのポートレートポージング入門」
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