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SXSWは様々なジャンル・カテゴリーの映像作品が幅広く上映される映画祭として知られています。ヘッドライナーと呼ばれる著名な俳優が出演するメジャーな作品から、インディーズのフィルムメイカーによるドキュメンタリー、VR映像作家による新しい映像表現への挑戦など、実に様々です。SXSW2024では、Feature Flim / Short Film / TV / XR Experienceの4つのジャンル、合計22のカテゴリーでラインナップが出揃いました。カテゴリーと上映作品の一覧について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

映画祭のメイン会場となるParamount Theaterでは、今年も入口にレッドカーペットが敷かれ、多くの上映作品の監督やキャストが実際に登場しています。上映だけではなく作品に関するカンファレンスセッションも多数開かれるので、監督や制作陣の話を直接聞くことができるのもSXSWの大きな魅力です。そんなSXSW映画祭の中から今年話題の作品をピックアップしてご紹介します。

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今年のParamount Theaterの様子

オープニングを飾ったのはNetflixによる「三体」のTVシリーズ「3 Body Problem」

中国発の人気SF小説「三体」のNetflixによる実写映像化作品「3 Body Problem」が、3月21日からの配信開始を前に、SXSW2024初日の夜のオープニングナイトフィルムとしてプレミア上映されました。原作の人気もありますが、映像化においてはゲームオブスローンズシリーズの制作陣が手がけるということで話題になっています。

作品が上映されたParamount Theaterの近くの駐車場には、特設の巨大なLEDモニターが設置され、夜になると大量のスモークと共に3D映像が上映されるという、Netflixによるプロモーションも大々的に行われました。イベントの様子はこちらでご覧いただけます。

作品の中ではヘッドセットを装着してバーチャル世界に入る表現が登場しますが、実際に今年のSXSWではXR関連のカンファレンスセッションと共に、Meta QuestやApple Vision Proを使った体験展示がいくつも開催されています。ここでもバーチャル世界の未来を描いたSF作品とSXSWとの親和性の高さを感じる事ができます。

3 Body Problem|Final Trailer|Netflix

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Netflixによる巨大LEDモニターでのプロモーションイベント会場(昼間の様子)

ライアン・ゴズリング主演の新作アクション・コメディ映画「The Fall Guy」

昨年のアメリカでのナンバーワンヒットと言われる映画「Barbie」のKen役として話題になったライアン・ゴズリング。彼が主演する新作映画「The Fall Guy」が、今年のヘッドライナー作品の中での一番人気と言えるでしょう。俳優陣による舞台挨拶のあるParamount Theaterでのプレミア上映には3時間前から長蛇の列ができ、私も中に入ることは叶いませんでした。

本作で彼は、元恋人の映画監督の作品に出演するスタントマンを演じており、予告を見る限りハリウッドらしいド派手なアクション・コメディとなっています。日本での劇場公開日は8月16日に決まっているので、公開を楽しみに待ちたいと思います。

The Fall Guy | Official Trailer

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3時間待ちで入場した方からシェアしてもらった舞台挨拶の写真(左から4番目が主演のライアン・ゴズリング)

今年もホラーが大人気!Midnigterカテゴリーに注目

昨年に続いて今年のSXSWでも、ホラー作品が実に数多くラインナップされています。中でもカテゴリーの一つである「Midnighter」はその名の通り、深夜に上映されるホラー作品のラインナップが世界各国から出揃い、今年も異なるタイプの恐怖映像が集まっています。

カルト教団を描いた「Immaculate」や「Azrael」、人里離れた山小屋での事件「Hunting Daze(Canada)」、盲目の霊媒師と人形の物語「Oddity(Ireland)」といった作品に注目です。

このようなラインナップを見ていると、ホラーの表現にも世界各国でそれぞれの文化的な違いが反映されてくることがよくわかります。もしかすると、SXSWはJホラーと呼ばれる日本ならではの魅力を発信するには最適な場所と言えるかもしれません。来年は日本の作品がこのMidnighterカテゴリーに入り込んでくる事に期待したいと思います。

IMMACULATE|Official Redband Trailer

日本からは伊藤詩織さんのドキュメンタリー「Black Box Diaries」がラインナップ

日本からは、ジャーナリスト伊藤詩織さんの性加害告発をめぐるドキュメンタリー作品「Black Box Diaries」がラインナップされています。これまでご紹介したエンタメ系の作品だけでなく、ジェンダーや人種による差別などの我々の社会が抱える様々な問題へ光を当てるドキュメンタリー作品の充実が、SXSWの映画祭としての特長の一つと言えます。

カンファレンスのテーマとしてもClimate ChangeやCivic Engagementが挙げられるように、社会課題の解決に向けて議論する人々が集まるSXSWだからこそ、人々の意識を変えうる映像作品によるストーリーテリングの力を重視しているのだと思います。

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伊藤詩織さんご本人も舞台挨拶に登場

SXSWには日本からも多くの方が参加していますが、映画部門での日本の作品上映は決して多くありません。来年こそは幅広いジャンルで、より多くの日本のクリエイターの作品がSXSWにて上映されることに期待したいと思います。