今回は、ロケ撮影やシズル撮影などを得意とするムービーカメラマン、株式会社Terrasse(テラス)の水兼大作氏に話を伺った。

海外ロケの経験も豊富な同氏は、数々の現場で「スピード」を武器に成果を上げて来たという。そんな水兼氏が現場で愛用する3つのSide Gearを紹介してくれた。

最大の武器は「スピード」

水兼氏:

私はもともと映像や撮影を勉強して業界に入った訳ではなく、いわゆる「現場叩き上げ」のカメラマンです。今はドキュメンタリーや紀行番組を中心に、企業映像、食品関係など幅広く手掛けています。
どの現場にも共通して大切なのは「スピード」です。例えば「世界遺産」の撮影ではふと目に留まった情景をすぐに撮影したい状況が多々あります。そんな時に機材セッティングに時間をかけてしまうと、光の加減や雲の位置が変わってしまい、二度と同じ風景は撮影できません。
他のロケや食品撮影も同様です。出演者の表情、湯気の立ち方、食品の瑞々しさは一瞬で変わってしまいます。だからこそ、段取りよくスピーディに撮影することが、クライアントや協力してくださるお店への配慮につながるのです。

水兼氏愛用の「Side Gears」3選

01:ガッファーグラス

まず紹介したいのは、ロケの時に必ず持参する「ガッファーグラス」。

簡単に言えば太陽を見るためのサングラスで、照明の仕事をされている方にはお馴染みのSide Gearです。

世界遺産の撮影では風景や景色の撮影も多いため、天候、特に日差しは重要な要素です。このガッファーグラスを通して空を見ると、雲の動きが手に取るようにわかります。雲が山にかかる瞬間を狙ったり、光が差し込む瞬間を狙う、といった撮影では必須です。

自然相手の撮影はタイミングが全てといっても過言ではありません。「ここだ!」というタイミングを逃さないために、野生動物が狩りをする時のように常に神経を研ぎ澄ませています。そのために駄菓子の「ラムネ」も常備して、血糖値をあげて集中力を保つ工夫もしています(笑)。

02:SmallRig HawkLock クイックリリースシリーズ

二つ目はSmallRigのクイックリリースアダプターです。

これもかなり昔から愛用しています。今ではいろいろなメーカーから同じような機能の製品が発売されていますが、私が導入した当時はかなり画期的な製品でした。さらに言えば、当時は量販店などでも実物が確認できた数少ないメーカーだったこともあり、この製品を導入するにいたりました。

私の場合はモニターの底面にこのアダプターの「コマ」を常時装着しておき、それに嵌合する「座」をいろいろなところに取り付けてあります。そうすることで手持ち撮影、三脚撮影、ジンバル撮影とカメラの構え方を変えた時にもすぐにモニターを付け替えられるようにしています。

撮影用のショルダーバッグにも常に「座」を取り付けてある(赤いストラップでぶら下げているものが「座」)

過去に機材の準備に手間取り、イメージした瞬間にRecが間に合わないという悔しい思いを多くしてきました。このシステムにしてから、カメラが以前に比べてだいぶコンパクトになったことも相まって、三脚撮影からジンバル撮影に移行する際も2、3分ほどでセッティングを完了できるようになりました。

なお、水兼氏はワイヤレスレシーバー/トランスミッター内蔵のモニターを使用し、ケーブルの抜き差しも最小限に抑える工夫をしている。そうした機能を持つモニターの最新モデルとしてAccsoon CineView M7 Proがある。

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Accsoon
CineView M7 Pro

CineView M7 Proは、キャリブレーション済みの高精度なカラー再現、先進的なLUT機能、インテリジェントOSによる機能性、そしてシームレスなワイヤレス統合を実現しています。将来を見据えたオペレーティングシステムを基盤として設計されており、映像制作において進化を続けるユーザーニーズに柔軟に対応します。

各ユニットは出荷時に工場でキャリブレーションされており、Rec.709 D65基準でほぼ完璧な色精度(Delta E < 2)を達成。これにより、クリエイティブな意図を忠実に再現し、重要なカラー判断を正確に行うことが可能です。

さらに、CineView M7 Proは世界初のスマートモニターです。高性能プロセッサとカスタムAndroidベースのOSを搭載し、直感的でモダンなユーザー体験を提供。ソフトウェアアップデートを通じて、今後さらに高度なインテリジェント機能を拡張していくことができます。Wi-Fi機能により、超高速なネットワーク接続、インターネットへの直接アクセス、さらには人気プラットフォームへの即時ファイルアップロードが可能。PCを介さずリアルタイムでのコラボレーションが実現します。

CineView M7 Proは長距離ワイヤレス映像受信機能も内蔵しており、Accsoon CineView送信機とシームレスに接続可能です。Accsoon独自のデュアルバンド伝送技術を活用することで、最大350m(1200ft)の範囲で超低遅延のワイヤレスモニタリングを実現します。

03:マグネット式フィルターマウント

最後に紹介するのは、マグネット式フィルターマウント。

これも私がかなり昔から取り入れているSide Gearです。様々なレンズの前部分と、装着するフィルターの間にあらかじめ取り付けておいて、その名の通りマグネットで着脱ができるようにするマウント機構です。

今では割と使っている方も多いかもしれませんが、私の場合、これがなかったら仕事にならないと言っても過言ではありません。というのも、かなり頻繁にレンズ交換を必要とする場面があるので、当然キャップの着脱もかなりの頻度になります。しかもそのキャップのサイズがレンズによってバラバラなので、いちいちサイズの合うキャップを選んでツマミを持ちながらレンズにはめるなど現実的ではありません。せっかく素早くカメラをセッティングしても意味がなくなってしまいます。

このアダプターを介すことで、キャップのサイズが全て統一できるだけでなく、マグネットが引き合うことで自動的に「カチッ」とはまってくれるので大幅に手間を減らせるというわけです。

そして、このマグネットのアダプターは所有する各種フィルターやクローズアップレンズほぼ全てに同じく取り付けてあります。ステップアップも兼ねているので、持ち歩くフィルターの数も最小限に抑えられます。ND、CPL、プロミストなど、サイズ違いを何枚も持ち歩く必要がないので迷うこともなく交換もワンタッチです。

これは、食品撮影や物撮りでもとても効率的な撮影を可能にします。特にクローズアップレンズの場合は、普通なら急いでも1、2分かかる交換や重ね付けも、このシステムのおかげで、ポーチから取り出して装着するまで、ほんの5秒程度です。フードコーディネーターがセットアップを終えた瞬間に撮影を始めて、雫や湯気が消えないうちにフィルターやクローズアップレンズを付け替えて数カット撮り終える、ということが可能です。このスピード感は毎度現場でも驚かれますし、スタッフからも好評です。

ただ残念なのは、私が愛用しているアダプターはすでに販売終了で、手持ちの分を修理しながら使っている点です。早く互換性のあるものを見つけなければと思っています。

プロとしての矜持

水兼氏:

今はカメラも高性能になっているので、使い方を知っていて、時間をかけてセッティングすれば誰でもそこそこ良いカットは取れます。しかし、私は「プロ」として撮影する以上は「驚くぐらい短い時間で、想像以上のものを提供する」ということを常に意識しています。そのための準備や工夫の手段の一つが「Side Gear」なのです。

現場で磨かれた水兼氏の「スピード」哲学と、それを裏で支える実用的なGear等を紹介した。撮影にいたるまでの入念な準備と現場での一瞬の判断力の重要性を理解できる内容となった。

水兼 大作(みずかね だいさく)氏 プロフィール

株式会社Terrasse 代表取締役社長

「世界遺産」「王様のブランチ」などをはじめとしたTV番組、企業VPなどを多く手がけるムービーカメラマン。

フランス在住中に撮影技術会社でアルバイトをしたことがきっかけで映像業界に携わり、日本帰国後、本格的に撮影技術の経験を積み現在にいたる。
カメラマン歴は約25年。