現地時間2026年1月5日、ラスベガスのマンダレイ・ベイ。CES 2026のメディアデイにおいて、最も注目を集めたのは、玩具の枠を超えたイノベーションを発表したLEGOグループだった。主要企業の出展見送りが目立つ今年のCESにおいて、LEGOの初となるプレスカンファレンスは開始1時間前から長蛇の列ができた。
登壇したのは、チーフ・プロダクト&マーケティング・オフィサー(CPMO)のジュリア・ゴールディン氏と、Creative Play Labを率いるトム・ドナルドソン氏。彼らが提示したのは、70年以上かけて築いてきた「LEGO System-in-Play(遊びのシステム)」を、スクリーン依存なしにアップデートする新プラットフォーム――「LEGO SMART Play」だった。
CES全体ではAIがあらゆる領域に浸透する一方、モビリティ領域では自動運転やAI実装に重心が移るなど、出展のテーマそのものが再編されつつある。そんな中でLEGOが初出展でテクノロジー中心の展示会で伝えたメッセージは「身体性を奪わずに、反応性だけを高める」という、ある意味で逆張りのテクノロジー活用の未来だった。
20以上の特許技術を凝縮した「目に見えないテクノロジー」
今回の発表で来場者観客を沸かせたのは、プラットフォームの中核を担う「LEGO SMART Brick」のデモンストレーションだった。外見は1955年から続く象徴的な2×4ブリックそのものでありながら、その内部には20以上の世界初となる特許技術が詰め込まれている。
壇上でトム・ドナルドソン氏が行ったデモは、大人も魅了させるワクワクに溢れていた。 彼が「SMART Brick」パーツを車に乗せると、即座にブリック自体から力強いエンジン音が響き渡る。パーツを飛行機に乗せ替えれば、音は一瞬でジェットエンジンの轟音へと切り替わり、さらにアヒルに乗せると、今度は愛らしい「クワッ」という鳴き声に変わる。
そして、トム氏がその飛行機を、急降下させるようにひっくり返すと、内蔵された加速度センサーがその重力変化を精緻に捉え、空から落下していくようなヒュゥゥゥ……という風切り音へとリアルタイムに変化したのである。同じパーツをつけていても子供が遊ぶように空中でブンブン回すだけでその状態によって効果音が変わるのだ。
このインテリジェンスを支えるのが、LEGOのスタッドよりも小さな特注チップが可能にする近接通信と、加速度・ジャイロセンサーだ。遊び手の動きを検知し、その"次に何をしようとしているか"の気配まで捉える。外部ディスプレイに頼らず、手元のブリック自身が「いま自分がどんな状態にあり、どう動いているか」を把握し、音とふるまいで応答する。スクリーンも外部スピーカーも要らない。これまでのLEGOが育んできた物語性を損なわずに、テクノロジーで遊びを深く拡張する——そこに、LEGOがたどり着いたこれからのクリエイティビティへの提案が見えてくる。
トム・ドナルドソン氏は、「高度なテクノロジーを今までみんなが慣れているLEGOの形状にすることで、スクリーンを介さない自由な物理遊びを、これまでになくダイナミックに反応するものへ変える」と、その狙いを強調した。
スター・ウォーズの世界が「遊びに応える」
この新技術のデビューを飾るのは、ディズニーおよびルーカスフィルムとの強固なパートナーシップによる「LEGO Star Wars」シリーズだ。
ステージには、ウォルト・ディズニー・カンパニーのブランド責任者アサド・アヤズ(Asad Ayaz)氏と、ルーカスフィルムのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるデイジー・フィローニ(Dave Filoni)氏も登壇。チューバッカやR2D2やC3POも一緒に登場し、発表された3つの「オールインワン」セットでは、以下のようなインタラクティブな体験が可能になる。
- ライトセーバーのハミング音:ルークやダース・ベイダーのSMARTミニフィギュアを動かすと、リアルタイムで反応
- エンジンの咆哮:XウィングやTIEファイターの動きに合わせて音が変化
- 象徴的な楽曲:皇帝パルパティーンを玉座に座らせると「インペリアル・マーチ」が流れる仕掛けも
販売は2026年春だ。大人も子供も待ちきれないプロダクトとなりそうだ。
日本企業への示唆:IPを「プラットフォーム」と捉え直す
プレスカンファレンスを出た直後、同行していた仲間たちと立ち話をしながら、生まれた問いがある。LEGOがやったのは、玩具のアップデートではなく、創造性のインフラの再設計ではないか、と。これを日本のIPでも当てはめることができるのではないか、と。
日本には、世界で戦えるキャラクターIPがある。ポケモン、サンリオ、ジブリなど。けれど現実の多くは、IPを「鑑賞されるコンテンツ」か「ライセンスされる商品群」として扱うところで止まりやすい。一方、LEGOがスター・ウォーズと示したのは、IPを"観るもの"から、"手で考えるための道具"へ引き上げる発想だった。
ここで言う「IPをプラットフォームとして捉え直す」とは、アプリを作ることでも、ARを足すことでもない。IPの世界観を壊さずに、ユーザーを"消費者"から"共作者"へ変える設計にすることだ。LEGO SMART Playの核心は、テクノロジーを前に出さず、遊びの文法(=手触り・組み立て・身体の動き)を守ったまま、反応性だけを一段上げた点にある。
例えば、ポケモンのフィギュアにしゃべらせる、だけではなく、動かした時のポケモンらしい気配を考える、遊び手の身体に委ねるような仕組み、IPの世界観のを"読むもの"として配るだけでなく、誰かが新しい遊びを作れる「型」として配るなどの仕組みなどを作れたらLEGOのようなワクワクが提供できるのかもしれない。
会場では世界中の老若男女がワクワクしていた。今年のメディアデイで一番よかったと発言している人もいる。私もそう思った。このワクワクは、単にガジェットに対する興奮ではなかった。手を動かす体験にこそこれからのAI時代に必要だと誰もが感じていた時の答えがここにあったと感じたからだ。
2026年以降の企業が向き合うべき問いは「AIで何ができるか」だけではなく、「人間の創造性を、どんな触感で解放するか」も含まれることになるだろう。
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