背景:ラスベガスのショッピングモール「ファッションショーモール」の外観風景

背景:ラスベガスのショッピングモール「ファッションショーモール」の外観風景


2009 International CES(Consumer Electronics Show)に参加するため、2009年1月に米国ラスベガスを訪れた。ラスベガスは、砂漠の中に作られたカジノの街として知られ、不況とは無縁とも思われる派手で華やかな街並みは健在であった。CESの全体的なレポートについては、すでに1月末に掲載している(CES 2009レポート01CES 2009レポート02)ので、そちらを参考にして欲しい。今回は、CESに出展されたサイネージ関連製品とラスベガス市内のデジタルサイネージ事情についてレポートする。

最近のラスベガスでとても印象的なのは、旧来のネオンサインやきらびやかな照明は、「郷愁を誘う懐かしいもの」、言ってしまえば、「古くさいもの」として捉えられているということだ。そのため、全面フルカラーの高輝度LEDによる装飾や、壁面を覆う大画面の広告が、新しく力強いラスベガスのイメージとして定着しつつある。こういった大画面の広告に気を取られてばかりいることなく、街の中を見回して見れば、旧来の広告をデジタル技術・デジタル表示で置き換えた「デジタルサイネージ」と呼ぶことのできるものが数多く存在することに気付いたというわけだ。 それでは、ラスベガス市街とCES会場で見かけたデジタルサイネージ技術を紹介していくとしよう。

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書店におけるデジタルサイネージ。最新雑誌の紹介映像が切り替わって流れる。

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トレジャーアイランドホテル正面には、ホテルのロゴ形状をしたデジタルサイネージがある。変形型を考慮した映像が流れる。

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ホテルのコンシェルジェデスクの壁面に設置されたデジタルサイネージ。豪華な額縁にディスプレイが設置されており、映像の大きさを強調するとともに、空間に違和感無く溶け込んでいる。

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変形した形状を持った大型表示装置。どの方向から見ても、複数の情報(ロゴと商品など)を同時に見られるのが特徴。

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ファッションショーモール入り口に設置された湾曲した巨大な4面デジタルサイネージ。4面連結の映像の他に、左右対称の映像もあった。素材映像をうまく生かした見せ方をしていると思う。

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コカコーラのデジタルサイネージ自販機(試作品)。巨大な商品映像のデジタルサイネージを触ると、タッチパネルで商品(コカコーラ)を購入できるというものだ。

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横長のディスプレイ(試作品)。駅や空港など横長の情報表示に長けている。

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施設案内を行うサイネージ。上段画面は裸眼立体視できるディスプレイで、会場内を3D表示していた。

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鏡を利用して視野角を広げているデジタルサイネージ(試作品)。通りの壁などに設置した場合、少ない費用で多画面設置と同等の効果を得られる。

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連続画面を活用したデジタルサイネージ。映像素材はそれぞれの画面で同じものなのだが、数秒ずれて表示することによって、全体に動きが得られる。

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ここまでで紹介してきたラスベガスにおけるデジタルサイネージの傾向を再考してみよう。

 ●映像の物珍しさをきっかけに、展示商品へ興味を持ってもらうことを考えている。
 ●旧来のポスターなどによる広告と同等の大きさや明るさ・発色が求められている。
 ●高級ホテルなどでは、映像装置に合わせてオリジナルの広告映像素材を用意している。
 ●一方、街中には従来のテレビCMを焼き直しただけのものもある。クオリティの差は歴然で、企業のURL表示が読めなかったりする。
 ●表示装置は、安価で手に入る大型薄型16:9のディスプレイが主流になり、映像も16:9が一般化してきている。しかし、その解像度はフルハイビジョン映像とは限らない。

日本にいると、東京・渋谷駅前の大画面広告など、特殊なデジタルサイネージが浸透しているように思えるが、米国では旧来の普通の広告が違和感無くデジタルサイネージに置き換えられつつある。デジタルサイネージの利用者(広告出稿者)も、単に設置すれば売上が上がるという安易な考えではなく、よりデジタルサイネージの特性を生かした活用方法を心得ているのではないか、ということが実感できた。



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安藤幸央(エクサ)

WRITER PROFILE

安藤幸央

安藤幸央

無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPHをはじめ、 国内外の映像系イベントを独自の視点で紹介します。