トムソン・カノープスは、ネットワーク型映像配信・表示システムMEDIAEDGEとして、デジタルサイネージソリューションを展開している。MEDIAEDGEは、2000年11月のInter BEEでカノープスが初めて参考出展し、2001年7月から販売してきている。現在バージョン3となるMEDIAEDGE3として提案している。トムソン・カノープスの神戸本社で、ソフトウェア、ハードウェアの開発チームが共同で継続的に開発を続けているシステムとなっている。MEDIAEDGEの開発経緯について、東日本営業部の遠藤肇部長は次のように振り返った。

「もともと衛星通信のボードで、ネットワークにMPEGを流すという技術を開発していました。これは、MPEGの中にIPを含めるという、現在とは逆の方向で技術開発をしていたんです。この技術を使って映像を配信できるのではないかというところから、MEDIAEDGEの開発に進んでいきました。2000年当時は、低価格のMPEGエンコーダーを実現した頃で、ショールームに毎日何社も訪れてくるという状況でした。その来訪者に、PCを2台並べて、一方から他方へMPEG映像を配信するデモをみてもらいました。その段階では、端末がPCでは使いにくいという評価でしたので、次に小型のハードウェアユニットを作って2000年のInter BEEで参考出展したわけです。そこでの評価は、ユニットが小型でいいというものと同時に、PCで実現できないかというものでした。運用するユーザーによって、ユニット方式であったりソフトウェアだったり、両方が求められているということで開発したのがMEDIAEDGEソリューションになります」

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MEDIAEDGEは、映像配信・表示に特化したシステムとして始まったわけだ。他社のような電子ポスターの延長線上にデジタルサイネージがあったというわけではないということがポイントだ。現在の基本システム構成は、コンテンツをサーバーPC上のMEADIAEDGE SVS3サーバソフトウェアで管理・配信するか、カメラのライブ映像をライブサーバーボックスMEDIAEDGE LSBによりネットワークライブ配信する形となる。表示側のクライアント端末は、HD対応セットトップボックスMEDIAEDGE-STB3またはPC端末用ソフトウェアMEDIAEDGE-SWT3を使用してPCのRGB出力で映像を表示させる。このセットトップボックスやPC端末ソフトウェア部分に、ビデオキャスティングシステムMEDIAEDGE3 DS(http://www.thomson-canopus.com/catalog/mediaedge3_ds/mediaedge3_ds_index.php)シリーズのMEDIAEDGE-STB3 DSやMEDIAEDGE-SWT3 DSを使用すると、デジタルサイネージ出力も可能になるという仕組みだ。

すでに、国内で1,000システム以上、端末数15,000以上が稼働しているという。納入案件も、病院、学校、自治体、大型ビジョンなど、さまざまな業種でさまざまな使い方に対応できる汎用性のあるシステムとして展開している。さまざまな分野での利用方法に技術対応していくったことに加え、ThomsonやGrass Valleyのシステムと組み合わせることも可能になり、「こんな利用方法ができないか」という問い合わせや要望に対しても、ほとんど実現できるようになったという。

米ウォルマートで2,700店舗27,000端末の大規模導入

Thomsonのサービス部門子会社のPremiere Retail Networks(PRN)は、米国3大ネットワーク局に迫る量の広告放送を行っているが、そのコンテンツ配信プラットフォームにMEDIAEDGE3を採用している。Acme Markets、Albertsons、Best Buy、Carrefour、Circuit City、Costco、Jewel-Osco、Pathmark、Sam’s Club、Shaw’s、ShopRite、Star Market、Walmart Storesなどの量販店顧客に対し、6,500店舗以上にサービスできる(MEDIAEDGE以外のSTBを使用しているケースも含まれる)という。

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このPRNがコンテンツ制作とシステム運用を担当している顧客のなかに入っている米国スーパーマーケットチェーンのWalmart Stores(ウォルマート)は、Thomson Grass Valleyを通じて行ったMEDIAEDGEの最多の納入先だという。

「ウォルマートは、導入に先立って、デジタルサイネージの効果を確かめるため、表示端末250台くらいでの検証を行いました。後になってから分かったことですが、広告効果の検証と言いながらも、複数のサイネージシステムの検証を同時に進めていたようです。最終的に1年間の検証期間を経て、導入することが決定し、初期導入段階で端末10,000台のオーダーがありました。PRNによる事例公開は2008年9月になりましたが、PRNのプレスリリースにもあるように、2010年初めまでに2,700店舗27,000台規模での導入が計画されています。最終的には、3年間をかけてカナダや中南米の店舗でも展開し、4,500店舗で端末35,000台規模になる予定です」(遠藤氏)

蓄積型のデジタルサイネージソリューションも提供

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こうした大規模な配信に効果を発揮するのが、内蔵のHDDから映像を再生することでデジタルサイネージを実現するネットワーク対応HDプレイヤーHDMA-4000シリーズだ。通常は、配信サーバーから1台1台にコンテンツを配信するが、これでは端末の接続台数に比例して、サーバーや回線に負荷がかかってしまう。HDMA-4000は、グリッド・ソリューションズのGridDeliveryを組み込むことで、コンテンツのP2P配信に対応している。大規模なコンテンツ配信には、HDMA-4000とグリッドデリバリーシステムを組み合わせることで、1万台の端末であっても1カ所に送る時間の10%増しの時間で、すべての端末にコンテンツ配信を完了することができるという。また、GenLock同期によって、マルチスクリーン表示や3D映像表示など、フレームレベルでの同期を必要とするアプリケーションにも活用できるHDMA-4000Syncも用意。マルチスクリーン表示や3D映像表示などに利用できる。