スナック永子*から参りました、永子ママだよ! 子供たち、おっはよー! と、いう訳で、いきなり始まりました「勝手にMonthly Video Awards!」。私、永子ママこと林永子(はやしながこ)は、MVやCM等、ショート映像コンテンツを紹介しまくるライター & 日本の映像作家を世界に紹介するサイト『Tokyo Video Magazine VIS』の編集長でございます。夜には、様々なジャンルで活躍するクリエイターが作品発表、ライブ、トークセッション等を行うサロンイベント「スナック永子」を主宰。ペンを片手にドレス武装する最強スタイルで日本のクリエイティブシーンを勝手に盛り上げておりますの。お見知りおきのほどよろしくね。
このコラムでは、毎月150本以上の映像作品を眺めて暮らす私が傑作を厳選、「Best Video Of This Month」の栄誉を勝手に授与しちゃいます。それでは早速、今月のお気に入り作品を紹介して参りましょう。
スナック永子*は、映像制作関係者が集う映像イベント、不定期に東京西麻布SuperDelaxにて開催されている。すでに30回以上開催され、有名無名にとらわれず映像関係者であれば一度は足を運んだことのあるイベントである(編集部)
ミュージックビデオの憂鬱
ミュージックビデオ(以下MV)の予算が減額した現在、育ちの悪い作家は「予算がない分、MVの広告性も公共性も無視して好き勝手に、無茶苦茶な映像を作って遊ぼう」と企てる。結果、公共の電波に乗せる価値のない低レベルのMVが量産され、MV全体のレベルが低下し、低レベルを標準値と真に受けた若手がますます下品なMVを作り、レベルも予算もモラルも総崩れ、デフレスパイラルは止まらない。
今、映像の作り手は「品格」を問われている。表現の基礎の教育をきちんと受け、良い制作環境で正しく育ち、映像や広告の公共性、自分の作品の社会意義について思考する能力のある、育ちも頭も良い「プロ」が、現在のMVには必要なのだ。田中裕介氏はその筆頭株。比類なき表現力と「品位」にMVの未来を託すべく、第1回「Best Video Of This Month」の受賞作品はAPOGEE「1,2,3」MVに大決定!!!
MV APOGEE「1,2,3」Victor Entertainment
パンツ一丁にハイヒールという出で立ちの下半身がダンスをする。破壊力のあるキー・ビジュアルはシュールだが可愛らしく、しかし甘過ぎず、緊張感がある。間抜けなはずの「パンツ一丁」が高貴な、品位を感じさせるアイテムへと変貌を遂げている。秀逸なデザインセンスといい、絶妙なバランス采配といい、高級感といい、文句のつけようがない。見事な名人芸を披露してくれたのは田中裕介監督(CAVIAR)。彼の作品には一貫して「品位」がある。それも偏に田中氏の持つ「監督の品格」の成せる業。
CM ニッポンハム「シャウエッセン」
「音とビジュアルが同期する瞬間の気持ち良さが好き」という児玉裕一監督(CAVIAR)は、MVのみならず、音楽と演技、ダンスが同期するミュージカルの大ファンとしても知られている。「いつかミュージカル映画を作りたい」と語るミュージカルへの愛が「シャウエッセン」CMにて炸裂。総勢約30名の個性的なキャストが入れ替わり立ち替わり、歌って踊ってシャウエッセンを齧る様子は古き良きミュージカルさながら。見ると顔がほころぶ、無条件に楽しい作品。
MV くるり「愉快なピーナッツ」Victor Entertainment
主演は裸ん坊の赤ちゃん。アニメーションと実写を交錯させた夢のような世界を、赤ちゃんは冒険する。最後には中央を木枝で覆った巨大な女性器がお出迎え! 赤ちゃんはよちよち歩きでその中に入り、姿を消す。
ラストカットが放送倫理上問題視されることは先刻、承知。ただの賑やかしで衝撃的なシーンを盛り込んだのではなく、表現の自由の再考をメディアに問い、公共映像の限界を超えようと画策した作者、ELECROTNIKのガチンコ勝負ぶりを評価したい。社会への影響や意義を強く意識して制作に向かう人材はそういない。 。
とういことでまた来月も心にビッシビッシ響き渡りまくるミュージックビデオを紹介するからお楽しみに!