民生3D対応TV熱が沸騰!新映像市場を席巻する

今年1月の米ラスベガスのCESまでの半年間、各展示会に共通の話題といえば、やはり3Dステレオスコピックの世界的潮流だ。そして今までと違う大きな変化は、民生用TVの世界に3Dが入ってきたこと。これはすでに映像クリエイターにとってもこの新たな市場機会として、無視出来ないものになりつつある。今回はその3Dステレオスコピック関連レポートの第一弾として、今夏に北米から順次発売開始となるソニーの3D対応民生用テレビの試作機を見学する機会を得たので、その概要と3D環境にまつわる現況をお届けしたい。

ホーム3Dの時代がやってくる!

dvjsony3dtv.jpg

ソニーがCES2010で発表した北米向け3D対応「ブラビア」は、ソニー独自の4倍速動画表示機能を応用し、フレームシーケンシャル方式とアクティブシャッターグラスの組合せを採用している。右目、左目、それぞれ用の映像をフルHDで映し出し、画面とメガネを同期させて切り替えることで、常にフルHD の映像を見ることが可能だ。これは昨年12月の、米RealD社とのパートナーシップに基づいた、同社の技術も一部採用されている。

現状の映画館での3D上映方式は、デジタルシネマプロジェクターにRealD社の3Dフィルターを装着した3Dプロジェクションレンズユニットを取り付ける。この3D上映の方式が円偏向フィルター方式で、一般に『RealD方式』とよばれているもの。現在ワーナーマイカルやユナイテッドシネマなどのシネコンに導入、採用されている。現在の映画館での3D上映方式はその他、液晶シャッターを用いた『XpanD』方式がTOHOシネマズ系などで採用、波長分割フィルターを採用した『Dolby 3D』方式がTジョイなどで採用されている。

ソニーの3D対応「ブラビア」は、このうち『XpanD』方式に近いものでフレームシーケンシャルとメガネ側のアクティブシャッターを組み合わせたものだ。これは液晶デバイスを使用してTVからアクティブシャッターを制御するというもの。その他、家庭用の3Dディスプレイの技術方式としては、この他、ラインバイライン方式とパッシブグラスを組み合わせたもの、そして、メガネを使用しない方式の3種がある。

2010年夏より北米で発売される、3D対応「ブラビア」は全部で3シリーズ9機種。LX900シリーズ (60V、52V、46V、40V型/専用メガネ2個付属、エミッター内蔵モデル)と、HX900シリーズ (52V、46V型)、HX800シリーズ (55V、46V、40V型)で˙、HX900とHX800は専用メガネとエミッターが別売となる。

またTVだけあっても、肝心の3Dコンテンツがなければどうにもならないが、昨年末にBDA(ブルーレイ・ディスク・アソシエーション)で、ようやく3Dの記録規格が策定され、今後は3D対応のBDが多く登場してくる模様だ。同社では3D対応のBDプレーヤー製品として、北米向け: BDプレーヤー BDP-S770/ ホームシアターBDV-HZ970W、欧州向け: ホームシアター BDV-IZ1000Wを今夏より、米国を皮切りにワールドワイドで発売する予定。

 ここまで来ると3DTVが発売されて一番気になるのは国内の3D視聴可能なコンテンツだろう。まずはゲームからというのが大筋の見方だが、ソニーでは「プレイステーション3」用のゲーム用と3D映画用(BD対応用)のファームウェアアップデートを無償で行っていくという。ただしファームウェアアップは、3D立体視ゲーム用と3D映画用は別々に行う必要がある。

またTVでもすでに、BS11デジタルをはじめ、スカパー!とJ-COMが3D専用チャンネル開始を宣言。各制作プロダクションも3Dコンテンツへの取り組みも進んでいるが、要は3Dで見る価値のあるコンテンツが作れるかどうか、そこが大きなカギになる。3Dには専門の制作テクニックが必要とされるからだ。

制作現場への支援と、先駆けて3DTVを発表したパナソニック

こうした制作支援の現場はどうだろうか?ソニーは、ハリウッドのソニーピクチャーズの中に、3Dテクノロジーセンターを開設、2月から稼働する。ここでは3Dの専門家向けにトレーニングを行い、専門家のコミュニティを醸成していくことを目指す。受講者は、同社関係者に限らず、監督、カメラマン、編集者、プロデューサーや機材の主要な操作者など、エンターテインメント業界の幅広い人々を想定しており、受講者の背景や関心に従ってカリキュラムをカスタマイズするという。

一方、パナソニックの米国の映像制作拠点である『ハリウッド研究所』でも3D作品の編集・加工サービスの支援業務を行うことを明らかにしている。これら日本勢の3Dコンテンツ制作への動きは、3Dの世界で一歩リードを許している韓国勢をソフト面で一歩抜き出たいという意向も見え隠れする。

そんな中、2月9日にパナソニックが各社に先駆けて、世界初の3D対応デジタルハイビジョンプラズマテレビ「3D VIERA」VT2シリーズ2機種を正式に発表した。初回ラインナップは54v型と50v型で4月23日に日米欧で発売予定。オープンプライスだが、市場見込み価格は54v型53万円前後、50v型が43万円前後の予想だ。3D映像表示には、ソニーと同じくフレームシーケンシャル方式を採用。また映像を1/120秒で交互に表示する必要があり、ディスプレイ側にも「高速表示レスポンス」が求められるため、液晶より応答が速い特性を持つプラズマディスプレイを採用した。

映画『アバター』のヒットも背景にして、いよいよ3Dプロダクション元年が幕を開け、3D製品戦争も始まったようだ。秋にはパナソニックが3D撮影用の単体カメラを発売する。コンテンツクリエイター側の準備はこれからだが、1950年代、1980年代とは全く違う技術革新によって、今回はブームではない、本物の3D映像の時代が到来しているようだ。


 

DVJ BUZZ TVイベントの次回開催は、3月9日(火)アップルストア銀座で開催予定。

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。